第14話  朝焼けとファーナ

第14話 朝焼けとファーナ

アルベルトは決められたとおりに、夜の見張りを指揮している。四時間交代だが、正直真ん中を引かなくて良かったと思っている。睡眠時間が途中で途切れるからだ。慣例的に一番目上である男爵が、深夜0時まで指揮をする。これは普通の寝る時間より少し遅い程度なのでそれほど疲れない、深夜0時から4時までは歴戦の軍曹が指揮を執る。アルベルトの活動時間は増えるが4時から8時までの指揮を受け持つのだった。実際は兵士数が少ないから2人の兵士が先頭と最後尾を見張っているだけだった。アルベルトは大きな松明の側で鎧子を着こんで立っている。

アルベルトは野営で油断して、鎧を脱いでくつろいでいた所を襲撃されたら、あほらしいよなと思っている。宿直を開始してから2時間くらいたったのだろうか?太陽が昇り始める。アルベルトは人影を感じる。

「アル、少し話して良い?」

どこか元気が無さそうに話しかけて来るファーナだった。

「別にかまわないぞ」

周りに兵士がいないのとアルと呼びかけられたので、フランクに接して欲しいと言うファーナの意思表示だとアルベルトは感じたので砕けた感じで返答を返す。

「アルはイメルダの事が好き?」

「うーん、どうだろう?美人だとは思うけどね」

「私も髪の毛をイメルダみたいにしようかな?」

「急にどうしたんだ?」

「何でもないわよ。どーせ、イメルダの大きい胸を見て鼻の下伸ばしているだけでしょ」

「くっ。否定はできない」

「否定しないさいよ!」

「まぁまぁ。ファーナ。それで何か用事か?」

「アルベルトは結婚を考えたり、好きな人がいたりするの?」

「うーん。どうだろうな?戦場で生き延びる事を考えてばかりいたから、そんな事考えた事が無かったな。家督を弟に譲って、どこかの貴族に婿入りとかはありそうだな」

「そんな事で良いの?恋愛はしたくないの?」

「好きな人が現れたら考える」

「急に話を変えるけど、アル、ヘルメットとチェーンメイルのフードを取って、胸元までチェーンメイルと開けてくれる?」

「任務中の規定で外せないんだ!」

「見ているのは私だけよ。私とイメルダとエルザを助けたお礼をしてあげるから」

「それならば」

そう言ってアルベルトはヘルメットを脱いで、地面に置くと、チェーンメイルのフードをずらし、着る時に便利な様に胸元に切れ目を繋ぐ人をほどいて、大きく肌をはだける。

アルベルトにしたらかなり恥ずかしい。そして片膝を地面に着き、ファーナを見る。

「これで良いか?」

ファーナは初めて見る男性の胸板に胸がきゅんと高鳴る。

ファーナは首元からかけている2つのペンダントの内、一つを取り、何やらつぶやく。

アルベルトを見ていたらにやけて、集中が途切れそうになる。必死に感情をこらえてファーナは呪文の詠唱を終える。

そして、アルベルトの水晶のペンダントをかけるのだった。

「ふふーん、罠にはまったわね、アルは一生恋愛できない呪いのペンダントを付けたわよ」

「恋愛ができない?止めてくれ。恋愛は良くわかないけど」

「ファーナ様、ここにいらっしゃいましたか」

「探しましたよ、ファーナ様」

イメルダとエルザがやってきた。

「一人で行動はおやめくださいと何度申し上げれば」

イメルダが諭す。

「一番強い人の側にいるのが安全と言うものではありませんか?」

「それでも心配いたします」

「そうです。所でアルは何をしているのですか?」

「それは、なんでもないわよ」

イメルダがアルベルトの胸元を見る。

「ファーナ様もお気が早いですね。でも悪い選択ではありませんね」

茶化すようにイメルダが言う。

「どう言う事ですか?イメルダさん」

「それは」

「自由恋愛ができない呪いのペンダントよ。それ以上でもそれ以下でも無いわよ」

「その言い言う事にしておきます」

膝をついた状態からイメルダの方を見る。

大きな胸が邪魔をして顔をみれない。これはこれで貴重な体験化もしれないなと考えていると胸に痛みが走る。

「いた」

アルベルトは悲鳴を上げる。

「ふふーん、今イメルダの胸を見て、鼻の下を伸ばしたでしょう?女性を邪な目で見なくなる効果もペンダントには突いているのですよ」

「取れないのですか?」

「取れないわ。絶対に」

アルベルトはあきらめる。

「兵もそろそろ起きて来るでしょう。装備を整えますね」

そう言って立ち上がるとチェーンメイルをきちんと着て、フードとヘルメットをかぶる。

「そのアルベルト殿、よろしくね」

朝焼けをバックに腰を軽く曲げて微笑みながらアルベルト見るファーナの視線も心地良いものに感じるアルベルトだった。

                                   続く

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