第7話 車列は続くよ

アルベルトとファーナは男爵に目通りして状況を報告すると、男爵は盗賊を討伐をするために自ら指揮を執り、兵士を動かす事にした。経済的事情により、城詰めの兵士を10名、二頭立ての荷馬車が5台だった。5台の内、一台は盗賊達を運ぶための馬車だった。その後にアルベルトの荷馬車が控えている。騎士はアルベルト以外にいなかった。これは経済的な理由で、領地を与えて、生活を保障のしたり、村の代官に任命して税の一部を生活費としている事もあり、大きな戦争でもないのに、騎士たちの食料や給料を維持する事が出来なかった。もちろん兵士もそうだった。先任軍曹と兵士長が一人ずつと兵士がパイク兵2人、室内戦を考慮した剣を扱う兵士が5人、クロスボウ兵が3人だった。馬は全てゴーレム馬と呼ばれる人造の馬だった。地域の魔力を吸って活動する。アレックスももちろんそうだった。騎士は生身の馬に乗る事を好む。地域にある魔力の密度により能力が左右されるゴーレム馬よりも、安定した能力を持つ生きた馬の方を信頼する事が多いのだ。

揺れる馬車に乗りながら、ファーナは少し元気が無さそうだとアルベルトは感じている。

アルベルトは完全装備をした状態で馬車に座っている。戦列を汲んだ時に力を発揮するヒーターシールド、ウォーハンマー、チェーンメイル、ヘルメット、汚れたマントを身にまとっている。

「アル?そんなに着こんで暑くない?」

アルは快活な声で返す。

「もちろん暑いぞ」

「なんで暑いのに鎧を着こんでいるのよ」

「戦場に赴くのに、待ち伏せや奇襲を受けた時に対応できないといけないからな。実際に戦争する方がもっと大変だからたいした事ないぞ。それよりどうしたんだ?顔色が悪そうだけど?」

「大地の巫女だから、土の上を歩かないと魔力が普通の大司祭並みに落ちてテンションが下がるのよ」

「じゃぁ。一緒に歩こうか?ファーナだけ歩かせて、俺が歩かないとマナー違反だからな」

「歩いてアルが疲れて、私が元気じゃ意味が無いと思わない。馬車の上で良いわよ」

「どうして、本物の馬を飼わないの?ゴーレム馬は疲れ知らずだけど、騎士が荷馬車って恥ずかしく無いの?」

「戦争をするためにだけに、体格の良い馬を複数用意するのは経済的に無理だから。それに戦場に行ったら徒歩と言うのもいつもの事だから」

「あの村、貧乏そうだよね」

「事実を突かれるのは痛い」

「ふふ。アルって変な騎士ね。騎士らしくない」

「何か失礼な事をしたかな?」

「ぜんぜん、騎士と言うのは武勲を大げさに語り、自分の弱い所はだんまりよ。自慢話で私に取り行って出世を望んでいる人ばかり。そんな騎士ばかり見て来たからね。良い意味で騎士らしくない」

「だんな様、それが騎士らしいのだ。出世するですだ」

「グリム、声が大きいよ。それに弟が戦争になれたら、家督を弟に譲って、家令にでもなろうかと思っているんだ」

兵士長が大休憩の旗を挙げている。

ヘンドリック男爵はこの辺りで休息を取り、夜に盗賊の村に近づく計画を立てている。それは全員が知っている。休憩と仮眠の時間だった。アルベルトは馬車を降りると3時間交代で休息する兵士達の指揮を執るべくヘンドリック男爵の元に向かうのだったヘンドリック男爵は勇猛な方で戦地では手抜かりを許さない。その事を知っているアルベルトはヘンドリック男爵の次に高い地位にある自分も義務と責任を果たす事を要求されていると思っている。ヘンドリック男爵には後で休んで頂こう。日が暗くなってきた頃が寝やすいと思う。物見の兵士の交代の段取りもある。これは軍曹と兵士長と話し合わないといけない。やる事はたくさんあると思うアルベルトだった。


                                  続く

 

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