第5話 ファーナの宴
「それにしても、ファーナはなんで一人旅何てしていんだ?普通なら護衛の神殿騎士や神官や侍女が付くものじゃないのか?」
ふふーんと言いたげにファーナは胸を張る。
アルベルトは必死に素数と呼ばれる心を抑える呪文と言うかお呪いを心の中で唱えている。
邪念が漏れません様にと。
「他の神官がいる前で攻撃魔法を自由に使えないし、護衛の騎士や神官がいると複数人を同時に守るのに力が割かれるのよね。その点、1人だと早足の魔法で逃げられるし、圧倒的な火力で攻撃魔法を連発できるから、私1人の方が楽な旅になると思ってね。それにこれよ」
そう言って、エールのジョッキを左手で掲げる。
「長旅の後のエールは最高でしょう」
「えらくお気楽だな」
「アルってもしかして根暗で臆病なタイプ?」
アルベルトは苦虫をかみ殺した様な表情を浮かべている。
「もしかして図星?」
そう言いながらもファーナは先の戦闘で戦っていた姿やフレイムバレットを防がれた事からかなり力のある騎士だなと思っている。完全に冗談だった。
グリムはあわてて取り繕う様に言う。クネヒトに取って、主人が貶される事は自分の尊厳を馬鹿にされているのと同じなのだ。
「旦那様は誰よりも勇敢な方ですだ。この村だって旦那様の活躍によって領地として賜ったものですだ」
ファーナはさらに冗談を重ねる。
「そうなんだ。全くそんな風には見えないけどね」
アルベルトは冗談だと感じたのか気楽に言った。
「戦列騎士は地味で残酷な仕事なんだよ」
チェーンメイルを纏い、大きな盾を持って、ウォーハンマーで武装した戦列騎士として戦場の最前線に立ち、戦列を組んで陣形を維持するのが戦列騎士の仕事だった。戦列を維持する忍耐心と団結力、敵の戦闘力を奪う能力が求められる。そして何より、密集して突撃してくる重装騎兵が持つランスを盾とシールドの剣技で防ぎとめて乱戦に持ちこむ事も求められる。
「アルは戦争に行った事はあるの?」
「ここ数年の大きな戦争に従軍したのはオーク戦争に行ったくらいで、後は領主間のもめごとに動員されただけで、今年で4~5回と言う所か?」
そんな話には興味をなさそうにジャーキーを食べるファーナ。
こんな戦争の話は子供に聞かせるものじゃないと思いアルベルトは話題を変える。
「そんなに飲めば悪酔いするぞ」
「大地母神様の子供である酒の神様の加護もあるから二日酔い何て平気、平気」
「さすがは大地の巫女様ですだ」
本心からの尊敬の念を込めてグリムは言う。本来クネヒトは陽気で酒好きで歌う事を喜びとする。アルベルトの横で慎重論を唱えて、控えているのがおかしいのだ。
「一曲歌いますだ」
「クネヒト達の歌効くのが好き、宴会と言う感じよね」
拍手するファーナ。
こうして宴会は遅くまで進むのだった。
続く
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