第12話 ファストストーリーザデイ3 前編




キィィィィィィィィフィンッ!フィンッ! ズズズズズズ ツキキキキキキキキ………





城でのオーバーホールを終えたミトン達のY_ROIを乗せたフローターが学園内に入りエンジンの出力を落とす

ちなみにフレクはフローターがないのでミトンと同乗である

ウキウキついでに運転をかって出たのであった






「今度は間違えてないわよね?」






「もう! 茶化さないでくださいよミトン様  それに今回は入り口一個しかないんですから間違えようなんてないですよ」






「ハハハ それもそうね  あっ、そこに付けるみたいね」






「はい」






ガガガガガ ガションッ  フィフィフィフィフィ………

シュゥゥゥゥゥ……







「ロック完了、 エンジン停止確認    ミトン様、登録手続きをお願いします  終わったら騎体ごとフローター停めてくるので先に寮に向かっててください  では、行ってらっしゃいませ」






「ん、 行ってくるわね」






タラップを降り、親切にも赤線やアドバイス、検査の抜け穴などが書かれた校内マニュアルを見ながらセルフの登録用機械を触る






パチッパチッ チン キンッ! カチャカチャカチャ…………






「この親切マニュアル、なんやらなんやら書き込みすぎて逆ぁくにわかりにくいってぇありゃしないわよ」






ビー  ピピンッ 「げっ!  まぁたエラー」






「……もう一回ね…」  






と、機械へもう一度手を伸ばす






ガシッ!   





横から伸びた手に止められる 「はっ…!」





チャリ…  バッ!  ガシッ… カチンッ!






「えっ!?」





ミトンがスパッドを抜くが難なく止められたうえにボタンを押されスイッチをOFFにされてしまった





男である 長い金髪を腰まで伸ばした前髪パッツンの男

とんでもなく、超が付くイケメン

その容姿もさることながら、

一気に冷や汗が出る  ミトンの勘、と言うよりは同化した過去の"記憶"のようなものである





「コイツはレベルが違う」 そうわかるのである






「レーダーよ  騎士が剣を抜くというのは、そう軽いものではないぞ?」






「あっ、 えっ… はいっ!  す、すみません

急に出てくるものですから……」






「まぁ、俺の接近に今のお前が気づけないのは仕方がない  それに、お前がスパッドを抜くのも、 あるいわ仕方がないとも言えるな…」






パッ  男がスパッドを離す






「フッ…  良かったぞ やはりお前の居合   俺でなければ今は斬られていた」








ドキイッ!!   物陰から覗いていた女子生徒(単眼鏡で覗く普通のストーカー)がいつぶりかのバカクソイケメン笑顔を見てもうフラフラである

ついでにポット出のくせに笑いかけてもらったミトンに物凄い視線を向け、最後にもう一回覗いてから何処かへ走って行った







「所で、 えぇ〜と 先輩、 ですか?

誰です?」






「5階生 ん、5年生だったか まぁ言い方はいい

レーダー お前の最強の友 ジャック=モレー だ」







「……ジャック モレーさん、 覚えたわ

なんとなくなんだけど、この間の戦闘 最後に助けてくれた人です?」

(レーダーって… 私の苗字、れいだ なんだけど……まぁいっか)





普段ならこんなイケメン前にして黙っていないミトンであるが今回ばかりはヘラヘラできない

もう怖くはないがまだなんとも気は抜けないのだ

それでいて感じ取る

あの時の助っ人か? と

友人うんぬんについては気づいていない






「そうだ そして今回も助けに来た  ここはやりにくいだろう?

たまたま通りかかったのでな… んっ、ジャックでもモレーでも構わんぞ

なぁに 騎士の学園には飛び級もある

階級はそのうち大して変わらなくなる」






「あの時は本当に助かりました!  えぇっとぉ、じゃあ、ジャック先輩で」 

「む、 気にはしないのだが…  ほれほれ言ってみろ」






「私が気にするんですっ!!   それで! 助けてくれるんならやってもらって良いですか!?」






「むぅ…」  カチャカチャ… パシッ!パシッ!チキンッ ピピピピ


ビー! ビー!





流石最高学年 手早いものである  それでもエラーが出るのはもはやご愛嬌である

実はミトンの騎体が色々と細工が激しすぎるためなのは内緒である なまじ性能の良いスキャンではエラーを起こすのだ





「まあいい  あとで先生に言っておく  俺のカードを使え すべての施設機能が使える」






「え、 あ、はい」(良いのかな? …まぁいっか)






とりあえず受け取るが、あることに気づく





「あっ! 良いんですか?」   「うん?」





「いや、 先輩はそのカードなしで大丈夫何ですか?」







「………ついでに持ち物登録の部署までの案内も引き受けよう」





「…あ、ありがとうございます  ……行きましょうか」






フレクにフローターを先に寮に回してもらい歩いていくことになった








一方何かの準備を終えたストーカーちゃん、

何と妙に明るいジャック様と例の新入生が並んで歩いている

我慢できるものではない






「ああぁあぁあ……  何で?  何で…です……?

ん? 今登録してた…? なら、あの時の一年……

最後に助けてもらってたあの騎士…ね   

学園には、 決まりがあるんですわよ?」







その後、ほとんどジャックの顔パスでパパッと検査と登録も終わり

寮用の武器保管ロッカーを借りた


ジャックは急な用事でここでお別れである

別れ際にジャックが言う






「ん、 レーダー  シリカに聞いているだろうがこの学園、 出身はほとんどが貴族やら武家だ 

人付き合いには特に注意しろ 

魑魅魍魎蠢くってやつだ

お前は既に普通の生徒ではないのだからな… まぁ何かあればいつでも言ってくるといい」







何故シリカの事まで知っているか と聞こうとしたが気づけば視界にはいなかった

仕方なく教えてもらった寮に歩く






――――――――――――――――――――――――






「……… そういえば、こうやって一人になるのも久しぶりね   色んなことが、 起こったのね……」








『俺がいるけどな』






「シュガーは別よ  そういえばあなた、最近出番なかったわよね?  いつもみたいに騎体に居なくて良いの?」







『お前らみたいなやつらといたら出番も減るよ

騎体は後からでいい   登録終わってからならソフト面イジってもバレねぇだろうしな………   あっ、』





ついつい口を滑らせたシュガー





「………おかしいとは思ってたわよ  こないだの戦闘でも、システムに明らかなバックドアがあるのはわかってたし、端子も三つだけで私より親和性が高い、 おまけにいっつも騎体の中にいるって……  カーリーの連れてるナイフォーとかと同じなの?」






『くっ、  違わないこともない…  しかし完全にそのまんま"それ"というわけでもない  今はそこまでまだ』







「ふぅん…  まっ、そう言うならそうなのね   とにかく今まで支援してくれてたなら、今度からも今まで通りお願いね…?」






あっさりと流したミトンが言い シュガーが返す






『それはもちろん   おっ、そうそう』






「ん?」






『いや、 こっちでの暮らしも慣れたか?  と思ってな』








「それこそ今からよ  ほとんど病室暮らしよ?」







『それもそうか   にしてもどんなやつだろうなぁ?』






「何が?」  『何って、 寮は二人部屋だろ?』






「あっ、 確かに   まぁ、それこそ言っても仕方ないわよ  お楽しみよ お楽しみ」







そんなことを言い合っているうちに寮に到着する







「ここって(この世界って)、技術ある割にはこういう所でシックよねぇ」





と、周りを見渡す 




いかにも異世界学園モノって感じの寮(クソデカ)が並んでいる

いくつかの棟で固まって建っており団地のような配置である

しかしよく見ると電子ロックや室外機など色々と今っぽいものがある





思い返せば王城があった周辺も、城の周りはそれっぽいが少し離れれば高層ビルを基礎にしたメガストラクチャーが生え並ぶ街が広がっていた

いまだに貴族や騎士のいる世界ならでわの価値観である







ガッチャッ







寮のドアを開けて一言





「こりゃあ… 大したものだわ」





綺麗  である あからさまな豪華さも潔癖な清潔さもない

まとまった雰囲気

流石と言ったところである

ちなみに外観に引っ張られ "ただ"綺麗 でなく「大したもの」という感想を出すことができるのがミトンである





「にしてもシュガー」 『んん〜?』





「なーんかさっきから付けられてない?  いや、見られてる?   あっ、睨まれてる感じね!」





『ハハハ  今気づくのは、 まだまだだな… まぁお前も大概目立ったからな

ちょっかいかけてくる奴らもいるだろうな

おまけに貴族系の学校に来た平民新入生ときた こないだの王の件も、どう捉えられてるかわからんしなぁ…』






「本ぉん当、ややこしいわよねえ  学生は学生らしく適当で良いのに」






「違ぇねえなっと、 ん、なかなか(床の感じも)良いな」





シュガーが絨毯をフミフミする

すると、誰か 物音を立てつつ近寄り言う






ガタッ! チャプッガタッ!





「ああーーっ!!   貴女、寮内で接地型テイムは素足厳禁ですのよ!」






「えっ、 そうなんですか!?  もう!シュガー 無神経だよ!」





『ぬ、 すまん』







「そうよ!  掃除しなさい  やっぱり新いリ……」






バッ!




シュババババババ!!!   カチャッ、 チャポン…!







「終わりました!  お返ししますね  あっ! シュガー、手出しなさい  拭いたげる」




『おう』





「え、   ちょっと…」







フキフキフキ


  





「ありがとうございました!  以後気おつけますう〜〜!!」






スタスタスタスターーーーー








嫌味先輩?風生徒から掃除用具をひったくり騎士の速さで終わらせ返してあげる

その後シュガーの足を拭かせソソクさと退散する


先輩はあまりの事に唖然とし棒立ち

その後






「………クソッ ですわ…」









逃走後の廊下






『一応聞いとくが、 良かったのか?』





「……」





『おいっ!』






「あぁ あの子、どうせさっきから付けてた子でしょ?」






『おっ、 わかったか?』






「 適当よ 」  『…… そうか』







「女子寮、  それも異才の新入生  何も起きないはずはなくってやつよ」




『自分で言うか…』






「あの感じならまだ来るわよね  どうしよ?」







『知らんっ!』  







「あっ、 やっぱりぃ  実は私も、正直どうでもいいのよねえ〜」






『ハハハハハハ   …ところで、ここどこかわかってんのか?』






「ハハハハハハ …えっ?」



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