第11話 ファストストーリーザデイ2
「「はあぁぁぁぁぁぁ」」
ガチャガチャガチャ
「ため息すれば幸せが逃げるって言うわよぉ〜」
ギュゥイイィィィ ピガンッ! ズガズガズガズガ!!
「俺はな、」「私はね、」
「「ミトンの日用品買いに行くって聞いてたんだけど……??」」
「やった勝ったああっ!! んっ? ああ 気づいたんだけど、服は制服あるし そもそも寮なら最低限大丈夫だしいる物もだいたいオロチ亭(シリカの家)から送ってもらうし…… あっ! また勝ったわよ!! それにしてもこの
M3だっけ? イイわよねぇ〜これ あ〜んな見え見えの勝負、 よく賭け事で成立してわよねえ〜 」
ミトンがコロシアムのような所でマシン同士の決闘の勝敗予想を的中させながら返事をする
「うぅん… まぁ、そう言うなら別にイイんだけど、、、 いや、それはそれとしてM3でそんなバンバン当てるのは貴女ぐらいよ」
「まぁ俺も女子趣味な買い物について回るより良いが…」
それを聞き、コロシアムで露店のような感じで売られるジャンクパーツ(合法、非合法問わない)を漁りながらフレクが言う
「さすがミトン様ですね M3と言えばあまりに人気で儲かるので廃止されないだけで、毎年いくらでも負債で人が死んでるんですよ? 私達コンポウザーならまだしも、 騎士様の感覚的なものでしょうか?」
ミトンが返す
「ええ〜 だってあの乗り手とマシンの魔力伝達、 あそこまであからさまだと 強いですよ 弱いですよ言ってるようなもんだって…… というかあのマシン、魔力制御なのね? そんなに適性ある人いるんだ?」
ギョッとした風にカーリーが言う
「…… 貴女、種族って人間で合ってたっけ?」
「な、 なによヤブからスティックに… 」
それにフレクが答える
「えぇっと、ミトン様 M3用マシンには、 と言うより現在使われるほとんどのロボーターの制御にはブラックボックスが用いられていて適性がなくともそれなりに動かせます もちろん適性がある人とは差が生まれます そして、解析には専用の解析機か、非常に希少な、 プロジェクト能力者(プロジェクター)が必要なんです…… す、すごいですね! その能力は私達コンポウザーやミトン様達騎士よりももっと珍しいんですよ! それも、騎士とプロジェクター両方なんて、 流石シリカ様や王様に認められる人っていうのはこういうことなんですね〜」
「へえ〜 そりゃぁ凄いのね んっ?…騎士って…… ……あっ! 次の試合の賭け、そろそろじゃないの!? ねえっ! 次はみんなでやらない?」
と、何ともないように流すがカーリーやフレク以外、そして近くにいた通行人からも注目を浴びている
しかしミトンは券(M3の賭けの)を買いに行こうとルンルンで気にしておらず、カーリー達も一応それについて行った
「アハハ… 休憩時間なんてあったのね」
「ミトン、 あなた 本当に何も知らないのね?」
「カーリー 田舎いびりはやめてよね〜(そりゃぁ異世界出身じゃなあ……)」
「田舎、 ねぇ…… で? どうするの? 今から」
「うぅん? まぁだからこんなに下まで来た訳でぇ… あっ、 あったあった このパンフレット、どうなってんのよ…わかりにくい」
「ですが ここまで年季の入ったコロシアムでパンフレット一つで辿り着くのはまだ良い方ですよ
それにしてもご長寿店ですね〜」
「店名も「武器屋」 としか(パンフレットに)書いてないし、 まっ、とりあえず入ってみよ?」
ガッギギッチャッ カランカランッ!
中は意外に綺麗、しかし積むところには積まれしっかりと雑多な雰囲気である
加えて埃とタバコの匂いでムンムン、 つい先日まで城にいた面々では少しキツイものがある
「ほえ〜 意外に広い、 し… 店の人いない… 奥にも続いてるのかな?」
「それにしてもミトン、 武器こそオロチ亭から送ってもらえば良いじゃないか
それこそ、 トップレベルの武器だろうに?」
とエイトーが聞く
「うぅん…… 武器なんて直接的な物、せっかくだから自分で買わなくっちゃっ、 て言って断ってきたのよ〜
もうスパイドはフローターに置いてきたけど持ってるけど、 この年頃で武器嫌いな子なんていないわよ
自分で選びたいってね」
若干呆れたようなカーリー
「ふ〜ん… まぁ貴女じゃ名品の価値もわからないでしょうし、この際よ 私たちの目利き頼ってみる?」
「では私も協力しよう」
突然声がし、フレク以外はすぐさま飛び退きながらスパッド(もちろん店の商品じゃない)を抜こうとする
長い黒髪を後ろで束ね、戦闘ズボンとインナーを着た長身の猫耳男である
古めかしいスパッドを腰に下げている
「ちょい待ちお前ら、 俺は、怪しいもんじゃねぇ ええっと、ただそこの嬢ちゃんの意見に賛成なだけだ
人の生き死にの話だろう?」
「もちろん……!!」
ガシャッ! 奥に座っていた鎧が立ち上がる
呼吸音が響く
シュコォー「気に入ったぞっ アンタら 良い物を売らせてもらう!!」 コー… コー…
「「「「「「…………誰?」」」」」」
シュッ「店長だ」
「納得ね」「あぁ 店長ならそうか」「仕方ないな」
「そうね」
「いやっ! えっ? なんでこれで納得するの!?」
「それはそうと、 いい武器あるんです?」
カーリーの真っ当な疑問は無視してミトンが話す
「おうおう! これなんてどうじゃあ〜?」
ドン!
「お前ぇの体格ならこれだな スライダーブーメラン
どうしてもどっかに行きやすいスライダーをブーメランにしたものだ 経済的だろ?」
「ふぅん 良さそうねぇ」 とカーリー
だがミトンがあることに気づく
「あれ? でもそれ戻ってきた時 刃が出たままなら危なくない?」
店長が更に商品を出し、 「そこに気づくとはヤルな、 そこで別売りの遠隔ON OFFスイッチ!」
別売り スイッチ 85万
「いや高けえよっ!!」 「買うわっ!」
エイトーがツッコむがカーリーが即決する
「ハアアッ!? マジに言っているのかカーリー! 目利きに自信あるじゃなかったのか!?」
と言うがもう決めたようである
「ええ! 私の目利きを信じなさい!」
「まいど! ようやくこの武器の良さがわかるやつが来たか! 他のも出そう!」
ドン!
「どうせまた変なやつ……」
エイトーが訝しむが、
「二百回振るごとに重さが倍になっていく呪いの練習刀だ! 重さは好きにリセットできる!!」
「買いだあああ!!!」
十数分後……
「それも違うわね〜……」 とりあえず見て回っていたミトンが首を捻る
他は皆 よくわからない武器?を買い、残るミトンも選び始める
店長は訝しむ あのミトンという少女、一応スパイドを持ってはいると言っているがどう見ても不慣れな様子がある しかし、よく見ているとたまに動きの随所に熟達の気配がある
しかし、今は客である
接客するのだ
どうやら、今までの武器への反応から重量があり長いものが好みだと予測できた
(ならガンロッドが良いか?)
「これなんてどうだ?」
「へぇ〜」 ガチャッ ミトンが手に取る
「そこのトリガーを押してみな」
「ここ?」 チキッ
ギュッ……! 刀身が伸びる
「どうだい?」
ミトンは黙り込むがカーリーが話す
「良いじゃないの? これなら普段も持てなくはないし、 咄嗟の遠距離も対応できるわね」
しかしミトンは何か不満そうである
「ならこれだな!」 ドン!
そしてまた十数分……
「難儀だなぁ、これは……」
「うう〜ん……」
(そろそろ試合だったかな? ミトンは気づいていないようだが… まぁ武器の方が大切だろう)
と、エイトー
皆であーだこーだやっていると、
ガラガラガラ 「店長 まだかい? おっ?」
「珍しい客だな? 店長…… 大変そうだな?」
と、奥から急に現れた男がレジ横に積まれた様々なスパイドやガンロッドを見て話す
そこで店長が言う
「んっ、 すまんな ちょっと初めての武器選び中だ
奥の奴らにも言っておいてくれよ サービスぐらいはする…… ジャス?」
ジャスと呼ばれた男は店長が話し終わるより前に店のショーケースの中をガチャガチャしだす
思わず店長が「オイ」 と言うが気にせず、
「これだな 見てみてくれ」
ゴドッ…!
長く、重い 今までの中途半端なものとは違う
本当にミトンの体格を考えていない武器である
「引き抜いてみてくれ?」
そう言われ、何故か見た瞬間 もう買うことを決めてしまったミトンが返事をする
「え、 は、はいっ!」
ズッシ…… (重い……! でも、この重さ… 私のスパイドに似てて……)
ズズズゥゥ……
ミトンの引き抜く様子を見る全員(ジャスと店長以外)が一斉に言う
「「「「はあっ!?」」」」
出てきたのは以外も以外…!
鉈である!!
1メートル、20キロを超える、赤黒い刀身の鉈である!!!
「振ってみいっ…!」
「ハアアッ!!」
バンッッッッ!!!!!
ズバッ…!
ガラガラガラ グシャッ カランッ カランッ
試しに振るとあまりの重さと長さからくる速さで爆発音のような音が響く
その後、振った方を見ると斬撃と風圧で壁ごと陳列された武器を斬っていた
「………えぇっとぉ ……弁償とかってぇ…」
凍りつくミトンに代わりカーリーが切り出す
「プッ、 フブ」 「ククク グッ、 ハハハ」 「へへへへ……」
「「ハハハハハハハッッッッッ!!!!」」
店の二人が大笑い ミトンは驚きつつすぐに冷めた感じで「この作品この流れ好きだな?」 と考えていた
「良いわっ! それほどの剣技、見れたなら安い」
「実際欠陥品のガラクタばっかだしな」
「言わんでええわ…!」
「ハハハハ………(いや 気が気じゃねーー!!!)」
二人は大爆笑ながらミトンは乾いた笑いである
「それにしてもミトン さっきの斬撃、ありゃあ
ホローザッパー(真空切)だ まだ基礎の基礎の動きだがな……
まっ、 それはそうとお代だが…」
「買うわよ!」 とミトンが捲し立てるが、
「まぁ待てよ」と言って金額を言う
「60万D だ」
「……… マジですか?」
1Dは日本円にして50円である つまり60万Dとは、
日本円で3000万円……!!
「気に入ってる所すまないが、こいつは俺の店でも最上級の技物だ 「ハイパーキチン超合鉱」と「玉鋼 黒」の特上をこの厚みで使ってるうえ、切れ味が確保できるギリギリまでスーパーラミネート、防護術式を塗りたくっているからなぁ… これならスパッドと斬り合っても耐えるはず これでも安いさ」
「………マジにこんな感じなの?」
とミトンがカーリーに聞く 「そうね」 と返され、
エイトーも頷いている
「うぅん… 私、さっきのM3で当てたお金で買おうと思ったんだけど…… あっ! 次の試合! 次の試合始まるじゃないの!!??」
大事なことをようやく思い出しミトンが焦る
すると、後ろからせっかく登場したのに出番を店長とジャスに取られた猫耳男が言う
「もうそれなりに進んでいるはずだ だが、今の状況なら逆に良い
確か、飛び入り参加枠があったはずだ そこで当然高倍率であろう自分に賭けて勝てばいい
出番、取られてしまった……」
「あっ、 その手があったわね」
と、ミトンは完全に乗り気である
しかしカーリーが反論する
「ちょっとまって それじゃあ、私達騎士がお金欲しさに一般人と戦うってことよ!? それに、ミトンは病み上がりで何動こうとしてるの…!」
以外な律儀さを見せたカーリーに皆黙り込んでしまう
「なら俺が行こう というよりその枠は既に貰っている あと、倍率は175倍だ」
見かねたジャスが言う
「え、 で、でも……」 とミトンが言いかけるが
バッ!
何かをジャスが出し、それを見たミトンは言う
「あなたに賭けるわよ 全額でね! 勝てば70万、5万は今回の謝礼よ」
「えっ!? ミ、ミトン…!! 何を言ってるの!?」
「………そういうことか なら良いか…」
カーリーがもちろん反応するがエイトーが何かに気づきなだめる
「エイトー、あなたまで何を言って…!?」
「まぁまぁ 落ち着いてくれ あくまでミトンの判断だ それに、今日の初期投資なんて10Dだけだっただろ? 負けても大したダメージじゃねぇさ」
「それは、そうだけど……」
カーリーはようやく落ち着いたが、
「じゃあ行ってくるわねーー!!」 とミトンがすでに券売所にすっ飛んで行ったのを見てまた騒ぎ出し、なだめるエイトーを遠目に見たミトンは何か詫びの品でも買ってあげようと思ったのであった
――――――――――――――――――――――――
「はあぁ〜 今日はまたとんでもない買い物したわよねえ〜 いや、もちろんいい買い物だとは思うけど、 やっぱりこんな量のお金 なかなかクルものがあるわね」
結局その後、ミトン達以外の客ほぼ全員の予測を覆しジャスの圧勝
大番狂せでわあったが、コロシアムからしたら大問題である
と言っても、 ミトン達には知った話ではない
貰うものはきっちり貰って帰ってきたのであった
今は絶妙に治安の悪そうな道を歩いて帰っている
「いや〜 すごかったなぁ〜 ジャスさん 親和性は大したことないのにあんな大立ち回り」
「ですね〜 特にあの右ターン中にターンピック2本刺しで急静動からの左ターンは驚きました!」
と、無邪気にミトンとフレクは言うがカーリーとエイトーは違うようである
「……あのバカ二人はああでもあなたはわかるでしょ?」
「……並みじゃない、な まぁ あのパスポート見れば納得だが」
「
こんな所に何故…… まさかただ遊びに来てたなんてないわよね?」
「何にせよ、深い詮索は辞めておくか…
それにしても、ミトンの時はあんなに反対したのに何故あっさり行かせた? まぁわからんでもないが」
「それは、 怖いからに決まってるじゃない
まだ死にたくはないわ」
「ぬ……?」
「………ていうのは半分で、 もう枠に入ってたんでしょ? コロシアム側は多少知っててのことなら私の言うことじゃないわよ
求められているのなら騎士はそうすべきよ…… 私の騎士道よ」
「そうか フフフッ ……そんな騎士もいてくれなくてはな……
ミトンに言わせれば、それがカーリーの"カッコ付けた生き方" ってやつなんだろうな」
「フッ そういうことにしておくわ」
「ん、 あの二人、早いな 置いてかれるぞぉ?」
(……俺にも、 いや、 俺には無い…な だが、何かの縁で会った俺達 何かあれば… 良いのだがな…)
カーリーが小走りをしながら振り返り言う
「もう! 自分で言っといて遅れるわよ わっ!」
ドンッ!
よそ見していたせいで横から突っ込んできた当たり屋(騎士)にまんまとぶつかってしまう
「あっ…!」
通行人が思わず声を上げるが、
チャリンッ…!
スパッドを出したことで他の通行人もまとめて黙らせる
「よお 嬢ちゃんよぉ〜 痛ってぇなあ〜 さっさと出すもん出して…」
「今の俺にはこれくらいしか出来んな……」
シュッ… バゴオオオオンッッッッ!!!メシメシ…バキッ!
「グワアアアアアアア!!!!」
いつの間にか横に来ていたエイトーが当たり屋を蹴り飛ばす
大人の騎士相手と言っても、エイトーの体格からの蹴りである
相当な威力である
「……気をつけなくてはな?」
「あ、ありがと おかげで面倒事は避けれたわね」
チャリンッ…
「斬るつもりだったのか?」
「そうだけど? まぁ済んだから良いじゃない
今度ご飯でも奢るわよ……… あっ! あの二人どんだけはしゃいでんのよ!」
と、一瞬であったがなかなかな今までの騒ぎに気づかず遠くに見える屋台に走るミトンとフレクを追っていくカーリー
エイトーは何事かを少し考えた後、3人の元へ走るのであった
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