第5話 レディーアフターエントランス



前回のあらすじ


突然私は元の世界には戻れない上に、この国で最強の騎士 ナイトマスターにならなくちゃいけなくなっちゃった!!


この年で国家公務員かそれ以上になれちゃうの!?

でも私の本当の夢は主婦……とりあえず今は学校に通うわ!!


――――――――――――――――――――――――




医務室をあとにした二人と一匹が城内を歩いている





「シリカさん、  さっきのはすみませんでした  突然剣を使ってしまって………」




「……フフッ  そこで陛下に傷を負わせたことについては謝らないのは、 流石だね   ところで体は大丈夫かい?」




「まぁ、はい  問題はないです」 




「いやね、 せっかく城にいるのだからピーチコメットを見て行かないかと思ってね  搭乗用の武具とかサイズ合わせもあるしね」




途中、魑魅魍魎という言葉がぴったりすぎる雰囲気の貴族風の人達が次から次へと現れては、シリカが王から直接の命令を受けていると聞いてそそくさと散っていった




『流石なもんだ  ………にしても、あんな奴らでもいないと回らないのが、王国か、、、』




「そう言ってくれるな  言ってくれたように、あんなのだって、運営をやっているんだ」




「ふうぅん………?」




『ハハッ  ミトンにゃ、早い話か』




「………ああ」




こういった部分もそうだが、至る所でどうしても年相応な雰囲気を出すミトンにシリカは気づいており、その度に迷いが出る

しかし、結局のところ決断はミトンがしたのだ  シリカには何も言えない


だからこそ気になるというのに、、、




――――――――――――――――――――――――




「さぁ 着いたよ  ここが、我が国最大の、Y_ROI《ヨロイ》整備用ガレージさ」



大型リフトの横に設置された階段をおり、開けた場所に出る そこには、素人目に見ても尋常ではないことがわかるほどの大量のロボーターがケージに収められ、その左右のハンガーには多彩な武装とそれを支えるアームがぶら下がっている  

こういった工場的な場所は一見油っこく無機質な風だろうと思うがここは城のそのままの壁に、必要な分だけの基礎を組み、西洋風な城の面影を残しつつな風にまとめられ至る所まで清掃が行き届き非常に清潔感がある




「ほぇ〜〜  どのロボーターも騎士みたいですね  それに独特な匂いもします……頭がフワ〜となる?  何です?」




と言い、歩きながら話す




「あっ、そうだね 私達は慣れすぎてわかりにくいけど、それは後々だね  まずはここのロボーター、Y_ROIについて、  

Y_ROIとは、Your. riding.only.injecter

もともとこのロボーター達は高機動艦船に腕をつけたことからはじまり、同時期、革新的発展を遂げつつあったロボーターと交わったことで生まれたんだ。  それまで、大勢の人たちで操っていたものを一人で出来るように。

だから、 Your. riding.only.injecter 《あなただけのバランスの乗り物》 というわけさ」




「ふんふん、」 『………』




「こいつらは乗り込んだ者の動き、剣技を再現する  そして、何よりも 強い意思に反応する  君もやっただろう?  

そうか、チューニングもしないとなぁ……  

つまり乗り手の腕が全てを左右する  そのために通ってもらうのが、さっき言った学校さ」




「そういうこと、  ……そういえば私の騎体は?」




「"私の"だとぉ……いや、今は"君の"か   ダメだな なんだかんだと言いながらまだ未練がある……正直言って  すまない、な」




ミトンの言葉を聞いた途端、またも異様なまでに興奮を見せる




「いえ、 私も、無神経でした…… (あっぶねぇ  ぜってえ今度からP.K呼びで統一しよ) 」




『んっ、これか  やっぱし良いもんだなぁコレは』




プイッと横を向いてシュガーが言う


そこでは ケージの全面を全開にし、20人ほどの作業員がP.Kに張り付き一心不乱に作業をしている




「おぉいっ!!  到着したぞ!」 と、シリカが言うと


ドドドドドッッ!!

なにやら大声で何かを言いながら一斉に作業員が集まる




その中でも一際異様な勢いのある女性が話す




「シリカ様!  この子が!?」 「そうだ 名前を、れいだミトンという」 「少しお借りします!!」 「待て、 わたしでなく、ミトンに聞け」 「えっ?  私は良いですけど……」  



「なら決まりよ!!」  ガシッ!と掴みすぐさま連れて行こうとする


その引っ張られるミトンにシリカが言う




「そいつの紹介をしよう  そいつはそんな成りだが、個人でヒール=オンを使いこなす天才ワルツ・メイカー、エルルバトーロ ロセンド メンディサーバ   まぁ、任せておけば世界トップクラスの調整を受けられる  健闘を祈る!!」




(いやこのタイミングでええ!!!  ついでに健闘を祈るって、 どんな事されんですかこれーー!!!)




「イヤーー   なんか怖いんですけどおーー!!!」




――――――――――――――――――――――――



2時間後



丸裸にされた挙句、様々な検査、手術、問診、騎体との同調作業をほとんど休憩なしで受けたミトンが戻ってきた



「いや、 なんか知らん間に手術受けたんだけど……  えっ?  マジに怖い   その割には変に頭冴えてるしぃ……首元と二の腕、太ももに端子(コードを挿す穴)付いてるし………ほんまに怖い」




「あっ  帰ってきたね」  ガシッ!  ミトンがシリカにつかみかかる




「ちょっと、 マジになんなんですかあの人   なんか流れで手術までされて!  頭変にされて体に端子埋められたんですけどおおお!!!!」




そう言いながらシリカを揺りたおす




「ちょっ、  悪かった、 悪かったから!  でもね、これは必要な事なんだ  それに、そのくらいの手術ならすぐに跡を消すぐらいできるから!(簡単に埋めたものが除去できるとは言っていない)」





「あっ、 ならいっか」 と、ひとまず納得することにした  





後ろから大量の資料やカルテ、タブレットを持って博士も走ってくる




バサバサバサ  ガシャッ!  「あっ!  うぐっ…」




荷物を落とし転んでしまうが、すぐさま眼鏡を拾いいくつかの資料とタブレットを拾い立ち上がり こちらに飛び掛かるようにそれらを突き出してくる




「ミトンちゃあんっ!  君、最っ高だよ!!   代謝、神経の伝達速度、体組成、情報処理能力  ちょっと魔法適性は微妙だけど、 何より!  Y_ROIとの親和性がとんでもなく高い!!  ここまで高ければ通信機なしでY_ROIと交信とかできるんじゃない!?  端子もそれだけでよかったしね」





「………これって少ない方なんです?」




「そうだな  私は14個だな」 『俺は3個』




「それに成長予測値も素晴らしいね  身体機能は少なくともアウター騎士までは確実に成長するね  今もすでにk.4《カフスフォー》ぐらいには行けそうだね」




「k.4?  私にはコートもぜんぜんイケると思うのだが……  まぁ、検査はあくまでメアスなのはそうなんだが、」




「私の検査がだよ?」 「!…… とにかく私の意見だよ」




「ふぅん………?」  




ミトンはただ首を傾げるだけであった




その後、 装備の選定、チューニングやその他あれこれ


最後に、剣を選ぶ




「私はやはりスパイド(実体剣)が良いと思うのだ」 とシリカ




『俺はスパッドだ  携帯性が全てだ!』 とシュガー




「アタシはガンロッド(伸縮性のスパイド レーザーも出る)だよ  多機能!  これだよっ!!」 


とエル(エルルバトーロ)




ミトンにはやはりサッパリな内容、 のはずだがだんだんわかってくる



「ふぅん、 これが同化かぁ  ……気味が悪い」





「我はあれじゃのぉ   モノはないんだが、今取って来させている」




横から急にレブル王が登場する



「へ、陛下!」 「王様ぁ  何です?」  



「まぁ 待たれよ」




ガシャアアアン!!!!  離れたところでガラスの割れた音がし、


ドダドダドダドダドダ!!  高速で走ってきている




ガチャッ 「失礼致します  国家歴史自然館宝物殿国宝房より お持ちしましたでござる」




極めて真面目らしい見た目の騎士が長細い箱を手渡し 王も「ん、」と受け取る




「あの〜、  ボロボロのようですけど、大丈夫ですか?  えぇっと、あの頭巾の人? ですよね?」




「!?   陛下!」 「よいわ  そのぐらい」



「?」



「んっ、  あぁ ミトン、彼らのような三角頭巾とマスクをしていたのはドライエック騎士と言って

陛下専属の近衛兵達だ  素性は絶対に明かすことが許されないからなぁ  基本は素顔を見ただけで死罪か記憶力処理だな  知っているのも私達アウター騎士やメイカー、Dメイカーぐらいなものさ  なら、君ならいいだろう」





「だが、くれぐれも極秘だと忘れずに」




「き、気おつけます…… 結局、怪我は大丈夫ですか?」





「問題ないにござる」




「……本人がそう言うなら?」(いやぁ この語尾の人初めて見たぁ……)




しかしどう見てもボロボロ 切り傷や銃傷が見て取れる




「ですがマントは無事です これは汚すわけにはいかないでござる」




「ま、まさか… 外して行ったのですか?」  とシリカ




「は? 何か問題が?」 とござるさん




レブル王が若干苦笑いしながらも続ける




「い、今はよい……  とにかく、ミトン 貴公にこれをやろう」




と言って1mと少しの箱を渡される




ズシィィ  「重いっ!」   26キロである




「抜いてみよ」   パカッ  レブル王が蓋を開け中から引き出してミトンに手渡す

刀である




気づけばシリカとござるさんは一歩引いて膝をついて少し俯いている




ズズズゥ……  シュゥゥゥ〜〜 「こ、これは!?」




――――――――――――――――――――――――

結局その後、装備一式、ピーチコメットの状態の説明を受け戸籍、クレっジットカードの代わりになる身分証(騎士用)を貰い今日はシリカ宅ことになった





移動中 フローターにて  ビィィィィィ フィフィフィフィ




「色々やらせてしまって、 大変だろう?」




「まぁ、 ハハッ それなりに……」




「あと、 まぁまたわからなければ聞いてくれれば良いが  薬の補充の仕方はわかったかい?」



「はいっ  ええっと、エントランスでコレ(身分証)見せて 検査とかしたところで、 でしたね?」




「そうそう  まぁもっと細かいことはあとで、ね」





「あっ!  そういえば、シリカさん  お土産買って行くとか言っでせんでした!?」




「………一つ今から暮らして行く中でアドバイスをあげよう  メイドは決して敵に回してはいけない   彼女達が生活を握っているのだから   さあ! 行くよ!!」




ギャギャッ!!  ブイィィィィ!!!  Uターンして急加速!!




「何買いに行くんです!?」 「確か絵が好きだったから画材かな……あっ、そういえば君、服とか色々……時間ないかな、  最低限は用意するから学校の友達とでも買いに行くといい」




「はい  それは、フフッ  楽しみです!」




その後、シリカ宅に到着しそのデカさに圧倒されつつ案内され、その日は就寝

次の日は事情を知る何人かのメイドの方達に一日中勉強(常識的な知識 テーブルマナーや礼儀作法などなど)を叩き込まれ、P.Kの所有や入学、寮の入会その他諸々の手続きを行い ヘトヘトになりながら就寝





――――――――――――――――――――――――


次の日   入学式当日




ミトンの人当たりの良さにコロッといってしまい、可愛がるを通り越してもはやお母さんムーブを始めたメイド達に見送られながら荷物をフローターに積む

内線でメイド達がミトンに話しかける




「財布、カバン、お洋服…… 教科書も持ちましたね?」



「はい!」



「ポイズンリムーバーに、儀礼用の装飾も?  書類は私たちが見たけどもったわね?」




「大丈夫です」




「フローターの操縦は大丈夫ね?  入学式、作法とか覚えてる?」




「ハハハッ、 恥をかかない程度には、………そろそろですね 」




「そ、そうね!」 「さてっと、 そうだ! イジメられたらすぐに言ってくること  いつでも帰ってきて良いからね」

「薬も飲み忘れ注意ですよ〜」




「大丈夫ですってぇ   まっ、とにかく行ってきます  短い間、本当に1日と少しとは思えないほどよくしていただいて 本当にお世話になりました!   学校、頑張ってきます!!」




カチッ ビュルンッ!  フィフィフィフィ フィーーーーーーー



フローターのエンジンをつけ、機体が少し浮き上がる




『シリカのやつ、 遅いな』 「……うぅん、  どうしたんだろう?  すぐって言ってたのに」




そう思いつつも出発しようした時、




「おぉーい!  すまない 遅くなった!  はっ!」




フローターからミトンのフローターへ飛び移る




ガシッ!  窓枠に掴まって話す 




「遅くなったね   これが、言っていた"複製品"だ  と言っても他に比べて破格な品だ  大事にね?」




王から貰った例の剣は、あまりに凄すぎるためせめて学校にいる間はと、かわりをミトンが必要としたため大急ぎで用意されたのだ

ミトン自身、てっきり同型の普通のものがくると思っていたらまさかのレプリカだったため少々面食らったがせっかくなので受け取る




「それに、わかっているね? 君は…」




「はい!  まず身分はむやみに明かさない  異世界について話さない  薬は飲み忘れない  P.Kの事も内緒  鍛錬を欠かさない  変な人にはついて行かないし必要と判断したら切ってヨシ  何かあればシリカさんに報告!  ですか?」




「大丈夫そうだね」 「はい  メイドさん達に教わりまさした  一日中」


「ハハハ… 彼女達なりの可愛がり方なんだ  勘弁してやってくれよ?   だが、一つ忘れているね」



「ん……?」  




「全力で学校生活を楽しむ  だよ   何はともあれ、君はまだ学生だ  人並みに楽しむのが、今の仕事さ」





「あっ……   はいっ!!!」





「さあ!  もう時間だね  まぁ私も学園で非常勤講師をやっているから、また会うことはあるさ   シュガーもミトンのこと、頼んだよ! 」




「はい!  シリカさんも、とてもお世話になりましたし、 きっとまたお世話になるかもしれませんが、  ええっとぉ……とにかく  行ってきます!!!」





と言って、ミトンはエンジンを蒸し学校へ向け出発するのであった




第5話 前編  完  後編へ続く

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