第6話 ベアトを風呂場でわからせる ♥♥
*暴力描写、性的描写があります。あからさまなものではありませんが、苦手な方は閲覧をご遠慮ください。
「団長! あの女が……王女がっ、風呂場で暴れて大変だ! 手が付けられねえ」
「ふっ、風呂場だとぉ!」
「素っ裸でか!?」
「風呂場で乱闘だ!」
ホールに残っていた団員たちが再び興奮し騒ぎ始める。
「ディルト、ユキ、手を貸してくれ、風呂場に行こう」
「了解っす」
「わかったよ」
俺(=ルーヴェント)はゆっくりと立ち上がり、二人と風呂場にむかう。さらには頼まれてもいない団員達まで一団となりついてくる。
□
「あわあわっ!」
真っ先に風呂場に突入した金庫番ユキが変な声をあげた。
他の団員が、王女の裸をみたいという下心のみで駆けつけたのに対し、ユキだけが善意の行動であった。にもかかわらず、風呂場に先頭で乗り込んだ彼の人間性は実に素晴らしい。
床にはずぶ濡れになった高級娼婦ヴィオラと、助けに入ったであろう二人の団員がうずくまっている。
(ヴィオラ一人にまかせたのがいけなかった、ベアトの野郎は徒手でもそれなりの強さがあるんだ)
俺は自分の甘さを反省する。
「おいっ、誰かポーション(回復薬)を取って来い、すぐにだ」
「はっ!」
早くここへ戻ってきたいのだろう、若い団員が全速力で薬を取りに行く。
「うおっ、美乳だ! ……って場合じゃないっすねぇ」
続いて入った副官ディルトも叫んだあと、様子をうかがうように重心低く身構えた。
風呂場では、体を洗われていたであろうベアトリーチェが、全裸で拳を構え立っていた。
藍色の眼が美しく光り、亜麻色の長い髪は後ろに束ねられていた。足先まで白く美しい肢体であったが、胴のくびれの下には黒い茂みがまだ濡れていた。
毒が完全に抜けてきたのだろうか、足指は風呂場の石の床をしっかりと掴んでおりふらついてはいない。
「傭兵団の者どもかっ」
館中に響くであろう、強く通る美しいベアトリーチェの声だった。
中腰でヴィオラを抱きかかえた俺と目が合う。今はベアトリーチェが見下ろす位置になっている。
(やはり、いい目をしているな)
「貴様が団長であろう。いま一度名乗ろう、エフタル王国王女ベアトリーチェ・ファンド・エフタルだ。私を捕え辱めた非礼は、実に許しがたい。
私は明日ここを
「……マジかよ」
団員の誰かが、絞り出すような声で小さくつぶやいた。
誰もが気圧され、息を呑んでいる。
「あんた未だに状況を理解していねえな。ユキ、俺の後ろに下がってろ。団長、コイツはひとまず仕留めるしかないっす」
怯む団員を尻目にディルトが、立ちすくむユキの腕を強引にひき、俺のほうへ投げてよこす。
俺は娼婦ヴィオラを右手で抱きかかえながら、左手でユキを受け止める。
「ディルト、厳しめに痛めつけてもかまわんぞ。滑るかもしれん、足元には注意しろ」
ディルトに声をかけると、ヴィオラに団員がとってきた回復薬を飲ませる。風呂場にうずくまっていた団員も、他の者に介抱されているようだ。
狭い五メートル四方の石壁のバスルーム。俺の片腕といえるディルトと、全裸の『麗騎ベアトリーチェ』が向かい合っている。
「はあっ!」
ベアトリーチェが気迫のこもった声と共に、ディルトの鳩尾に拳を打ち込んでいた。当然ながらディルトは普段着のシャツであり、防具など身につけていない。
(コイツ、良い打ち込みを見せる……しかし)
並みの男なら悶絶してしまうだろう、それほどに良い打ち込みだ。
しかし、拳を受けたであろうディルトは微塵も動かない。
「あんた……いや、王女さまか、いい打ち込みだよ。でも正確に急所に打ち込まなきゃ、あと三センチ下。筋力も足りないが……仕方ないか。すまねえ!」
ゴリッとも、ズンッとも聞こえる鈍い音がして、ベアトリーチェが両目を縦に大きく見開く。
「ああぁぅ……がっ、があぁ」
ディルトが彼女の下腹の急所を突いていた。
ベアトリーチェは顔を赤くする。表情を大きくゆがめると、何度も口を閉じたり開いたりした。倒れることも出来ずに立ったまま悶絶の声をあげる。
やがて、静まり返った風呂場に、彼女の両脚の間から水の流れる音がきこえてくる。
(素っ裸でこれとは、在り得ない屈辱だろうな……)
皆が口を開けて状況を見守るなかで、俺はひとりニヤニヤと笑う。
「き、貴様らぁ、許さんぞ……あああぁ」
ベアトリーチェが屈辱をこらえて必死に声を絞り出す。両脚の内側を流れる暖かいものを感じているのだろう。
彼女は体の芯から湧き上がる、憎悪と恥辱の中にいる。
普段の団員なら大はしゃぎする状況だが、皆がベアトリーチェの放つオーラに押し包まれて身動きできずにいる。
「なあ王女様、そろそろ
俺はその場の団員全員に聞こえるよう声で、ベアトリーチェを見下すように言い放った。
ベアトリーチェは、ガクガクと膝を震えさせた。
「ディルト!」
叫んだ。
ディルトがホールにいた時と同じように素早く背後に回り、今度はより優しく両脇に腕を回し裸の王女をささえ取り押さえる。
すぐにユキが、大きめのバスタオルを持ってきて王女の体の前面にかけ、王女の恥ずかしい部分を隠すと体を拭いた。
「俺の部屋に、連れて行け」
そう言って、その場を後にした。
―――
第7話も暴力的行為、性的表現高めの回になります。苦手な方は閲覧をご遠慮ください。
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