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私達が教わる技術の中で、最も重要視されているのは、「魂送り(たまおくり)」だ。魂の尾に、その人が生きてきた間で一番大切な記憶を結びつけて、送りだす。
魂は旅路の過程で様々な記憶や穢れを払っていく。魂の尾に結びつけた記憶だけは、旅路の中でも失われずに残るといわれているのだ。
ただ、大切な人を失ったときには、玉器(たまもひ)の中にその人の記憶を閉じ込めてとっておきたがる者も少なくない。
本来ならば、しっかりと魂の尾に結び付けて送り出してあげなければいけない。それが挑文師の仕事だからだ。
私も千景も、母親の魂送りは出来なかった。
恐らく融とその理由は違うと思うけれど。
「湿っぽいのはやめましょう。本来結婚は新しい門出のはずです」
融が言うので、私はそれ以上口にしない。
私達は恋愛関係にあるわけでもなければ、友人ですらない。これまで顔見知りですらなかった。
けれど、同じ挑文師である以上はその痛みに関して、分かり合える。
「これで、業務結婚開始ですね。お母様には見守っていだたきましょう」と私は言った。
その日、婚姻届けを提出する。そして指輪を交換した。
これにて業務結婚が開始となる。
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