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レースのカーテンがゆらりと揺れ、畳に影を落とす。
西日に染め抜かれた部屋に横たわる女性の姿を見て、即座に死因を理解した。身体のあちこちがひどい方向に曲がっており、あまりにもひどい方法で絶命している。こんなのは、常人の仕業ではありえない。
禁書の暴走、あるいは挑文師の禁術、だ。
数年前、禁書が盗まれたときに殺された管理者がいたと報告があったのを覚えている。
たしか名前は寧月灯(ねいげつ あかり)だ。既に息を引き取っている女性の顔立ちは今目の前にいる男性に似ていた。
寧月と視線が離れて現実の光景が戻って来る。ああ、とため息が漏れる。
恐らく、寧月は禁書の管理者の息子なのだ。
「挑文師同士ならば言葉は必要ない。口説き落とすための愛の言葉も不要ですね。橘川さんの、恋人との昨夜のあれこれもしっかりと見えました」
記憶の部屋を見るとき、挑文師同士では互いの記憶を交換する形になる。寧月が見たものには、心当たりがあった。
「そ、それは不要な覗き見です!規約違反だと思うけど」
「たしかに、あんなに熱いのなら。別れるのはもったいないですね」
寧月が悪戯な表情になり視線を向けてくるので、間が悪くなる。
ただ、寧月はそういうやり方で、彼の記憶を見た私の衝撃を緩和させてくれようとしているようだ。
「協力し合いませんか?橘川さんは禁術に関心があるようです。俺はご覧の通り禁書に関心がある」
「関心なんて言って誤魔化さないでください。あの出来事は適当に流しちゃだめ。取り繕う必要もない。本局の応援が手厚かったら、あなたのお母さんは亡くなっていなかったかもしれない。本局のミスであり過失でもある。だからこそ、禁書はしっかりと見つけ出さないといけません」
私の言葉に寧月は目を丸くする。そして、柔らかな笑みを浮かべた。
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