第五章 6 沼地
街を抜けたところで、私たちはすでに街道は封鎖されており、兵士が待ち構えていることを知った。森の中で夜になるのを待ち、沼地を抜けることにしたけれど、その道は悪路で、馬車を諦めるしかない。といっても、荷物なんてイブロアに侵入するために用意していたものばかりだ。そのために買ったドレスも靴も帽子も、ちょっとは惜しくあったけれど、置いていくしかない。
全員が馬に乗り換えたけれど、その行動は敵側にすでに予想されていたみたいだった。沼地を囲む林の中にいくつもの松明の明かりが揺らめいている。私たちがフロランティアス側の人間だということはすっかりバレているから、向かうなら国境の砦だとわかっているのだろう。
「アルセーヌ、アリシアさんを連れて、先に行って。他のみんなは二人の護衛を」
私は馬の手綱を引きながら、小声で伝える。
「ジャンヌ……どうするつもりだ?」
「敵を攪乱して、引き離してみる。サーラ、ごめん。あなたも行ってと言いたいけれど……」
私は申し訳なく思いながら肩を竦める。一人で囮になって逃げ切るのは難しそうだ。サーラはニコッと笑うと、「言わなくて正解だ」と私と馬を並べる。アリシアさんを自分の馬の後ろに乗せているアルセーヌさんは真剣な顔で頷き、「頼みます。後で必ず合流を」と言い、馬を走らせる。兵士たちもそれを追うように続いていた。
私とサーラは目配せしあって、剣を抜く。
そして松明の揺れている林の中へと駆け出した。
あと少しでフロランティアス領に入る。そこまで逃げ切れれば、私たちの勝ちだ。
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