Clause 4.カシーゴ・シティ ウェストサイド、クックム倉庫街

Introduction IV.歴史家ウルフビョルン著『ルカリシア全史 テーマ史 ~パワーバランスの変遷~』より

 ……過去を紐解くまでもなく、ルカリシアにおいての『戦力』とは、強力なユニーカを行使する英雄たちを指し示す。これまでに記した通り、古代において、英雄たちは一騎当千の力をもって黒狼から人類を守護する剣であった。

 しかし、皮肉なことだが(人の歴史とは得てしてそうだが)、〈黒狼大戦〉終結後、英雄たちの力は各国の威信と牽制の目的に使用されることと相成る。共に戦場を駆け抜けた同胞たちと、今度は敵として刃を交えざるを得なかった英雄たちの苦悩は、多くの手記に見ることができる。例を挙げるならば、〈黒狼大戦〉において“光の楯”と称され、その後、グリカン王国のため戦場に駆りだされたバッダス・コルインの手記では……


 ……英雄たちが歴史の彼方へと忘れ去られる一方、近代国家は異なる手法を見出すことで相互のパワーバランスを推し量るようになっていく。いわゆる、『諜報』を主軸とした国家間の争いにおいては、明確な敵・味方の区別がつかないまま、犠牲を出すことも少なくない。為政者は、知らぬ存ぜぬを貫き通す一方、日々、その指命を受けた暗躍する者たちが影のように蠢いている。……


※註釈……本文中には現代において差別用語となる語句が含まれるが、原文のまま記載した。

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