Episode 23 - チームリーダー

「――だいじょうぶかな~、ルーキーくん」

「任せられると案外、思ってもみない実力を発揮するものですよ、サマンサ」

「ボスって、ときどきチリペッパーよりも鬼だよね」

 併走するチームメイトにそう評価され、アシュリーは「そうですか?」と本心から首をかしげた。

 自分はチームリーダーとして、チームを守るのが仕事だし、それを誇りにも感じている。

 このチームスターダスト・ピザは、最初から順風満帆だったというには波瀾万丈の船出だった。

 それをここまで結束できるようになったのは、メンバーの努力のおかげだ。リーダーとしての自分はただ、背中を叩いたり、崖から突き落としたりしたに過ぎない。

 研修生のデレクに対しても同じだ。できると判断したからこそ、あの場を託した。――ただ。

「マイクには苦労をかけたかもしれませんね」

「だいじょうぶだいじょうぶ。マイキーにゃ、あとでネットで見つけたピザカッターわたしとくから」

「助かります」

「だっだらぁ、ボスぅ? こんどのホリデー、いっしょに遊び行こ?」

「それなら、カシーゴ・ガーデンはどうです。珍しいハーブの展示が始まるそうですよ」

「ま、またぁ?! ボスってホント、ハーブに目がないよね――」

「――サマンサ」

 呼びかけるまでもなく、ほぼ同時に足が止まった。指を二本立て、ハンドサインでの会話に切り替える。

『壁の裏にいるね。やっぱりバイタルは低い』

『典型的な〈敬愛アドレイショナ〉の兆候ですね。ボクが先に出ます。フォオーを』

 威療士のハンドサインとは異なる手振り――“無茶しない”、の意図が伝わってきてアシュリーはサムズアップで応えた。

 無茶するつもりなど、さらさらない。

 自分にはチームがあって、それに大切な人もいるのだから。

「タイラーさん、ですね。勝手にお邪魔して、申し訳ない」

〈ユニフォーム〉の出力値を最大に待機させたまま、〈ギア〉を跳ね上げてゆっくりとガレージのドアをノックする。

(頼みますから、返事してください。意思疎通できれば、穏やかに事が進みますから)

「――だレだ。いヤ、聞クまでモないナ。レンジャー、だロう?」

「ええ、威療士チーム〈スターダスト・ピザ〉リーダー、アシュリー・キムです。パトロール中に気になる反応を検知しました。……入っても?」

「ナんだソのチーム名ハ。……見テ気持チのヨいもんジャないゾ」

「あいにく、自分の目で見ないことには信じない性分でして」

 サマンサに待機を命じ、アシュリーは短く息を吐いてから、ドアを一気に押し開けた。

「サ、わタしを連行しテくレ」

 コンクリート張りのガレージの、その中央で浮かんでいる、一台の飛行車ビークル

 その全方位から、緑色の枝が突き出していた。

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