Clause 1.ルカリシア歴2024年9月10日 北米合州国インリシオ州カシーゴ・シティ ウェストサイド
Introduction I.歴史家ウルフビョルン著『ルカリシア全史 古代編』より
……黒狼の起源については、あまりに情報が少ない。同胞たる歴史家諸君の間でも、その意見は系統樹さながら枝分かれしている。我らが素晴らしき好敵手、生物学者の諸君に至っては、ことさら言及するまでもない。
但し、一点においては共通の認識を得ることができる。
それは黒狼の出現が、
人類最古の壁画であるとされるヴェトゥカ洞窟には、既に黒狼と思しき“黒い巨躯”に襲われる人間の姿が描かれていることは周知の事実であり、同洞窟の年代測定結果はこの壁画が最初期の人類文明のものであると裏付けている。
その起源には未だ多くの未解明事項が残されているが、彼らが有史以前より人類の脅威であったことは、ほぼ疑いのない事実といえるだろう。
同時に、「火」という技術以外の対抗手段を持たなかった当時の人類が如何にして黒狼の脅威に抗っていたのかについて、専門家諸君の意見はかなりの類似が認められる。
※註釈……本文中には現代において差別用語となる語句が含まれるが、原文のまま記載した。
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