第29話 いわしは小骨が多い⑦

「おはよーっす」


早朝8時である。

こんな時間に起きて活動するのは久々である。

それだけで真っ当な人間になった感じがするから、朝活はいい。

ニートが立ち直るためには、まず朝早く起きることから始めるべきだ。


「おはようございます、、、」

「よろしくお願いします、、、」


葉月と廉太郎はもう来ており、すでに鍋から湯気が立ったり、うまそうな匂いがしている。


「なにこいつら。優秀すぎない?自主性の塊なんだけど。俺の指導のおかげ?」


感動して声に出てしまっていた。


「自画自賛しているところ申し訳ないんですけど、、、」


葉月がバツの悪い顔をして、スマホの画面を見せてくる。


グループ名:チーム青藍(青葉学園イタリア料理研究部1期生)


hazuki(赤ちゃんの写真アイコン):ルカルカー、ヘアアイロン持ってく?

丹波廉太郎(自身の変顔の写真):そういうのはグループで言わない方がいいのでは?

hazuki:えーなんでー。

丹波廉太郎:女子のプライベートを覗いた気がしてな

hazuki:初心すぎない?むしろヘアアイロンで何を想像しておいでで?

丹波廉太郎:すまん。そうだな、悪かった。自由闊達に話してくれ

hazuki:ブラジャー新しいの買ったから、ルカルカ、評価おなしゃす

丹波廉太郎:からかっているのが分かるぞ、葉月

hazuki:廉太郎君の反応つまんなーい

丹波廉太郎:つまんない、、、、だと、、、

hazuki:ここで写真アップしろ、とか言わないとー。見せないですけど

丹波廉太郎:意味が分からん。寝る。

hazuki:はいはーい、明日ね!


そこから時間が経って、24時をまわったころ、


LUCA(ネイルの写真):ごめん、わたし合宿にはいかない。頑張って


「まずだが、このグループ名はなんだ」


青藍ってなに?中二病?


「グループはね、廉太郎君が作ってくれたの」


廉太郎が?意外だな。


「女性陣は2人とも自分の世界があるタイプに見受けられた。ゆえに連帯感があまりない。そのため作ってみたのだ」


ほう。こいつを入れたのはやはり正解だったかもしれん。ただの堅物とは違うな。


「で、青藍って何?」

青藍氷水せいらんひょうすい、弟子が師を超えることです。藍より出でて、藍より青し、です。トンビが鷹を産むみたいなことです」

「誰がトンビだ」

「ムカつくので、必ず先生を超えていくという気概を込めた次第です」


え、ムカつくって何?偉そうだから?

そんなこと思ってたの廉太郎君。


「お前らが俺を超える時なぞ一生こないがな。俺が鷹だとしたら、お前らはよくて雀だな。鷹が雀を産むんだよ」


あれ、俺何言ってんだろ?


「それ、逆に恥ずかしくないです?指導力皆無って言ってるもんでは?」

「葉月、正論は?」

「ダメ、ゼッタイ」


まぁ、雑談はその辺にして、


「瑠花のことだが、やつはこない」

「あー、先生またいじめたんでしょー」


いじめたとは心外な。あれは一種の父性、パターナリズムで言ってやったのだ。知ってる?パターナリズム。俺昨日知ったから使いたかったの。


「いいか!お前らにそんなことを気にしてる余裕は微塵もない!今この時も!勝利の天秤はどちらかに傾き始めてるんだぞ!強豪野球部も真っ青になるほど水飲む暇も惜しんで包丁を握れ!フライパンを振れ!走り込め!」

「先生!走り込みは何キロでしょうか?」

「廉太郎君、走るわけないでしょ?冗談と馬鹿は先生だけにしてよ」

「馬鹿、、、、だと、、、、」


あれー?俺舐められてない?空高く舞う鷹なのに、すごい下に見られてない?


結局、葉月と廉太郎は、瑠花のことについて納得いってないようだった。

特に廉太郎は気にしているようで、キッチンに立ってからもほとんど上の空であった。








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