第21話 閑話(グラニテ)④
「ねぇねぇ、瑠花って本当に最近好きな人いないの?」
12月30日、晦日である。
そして女子会である。
「だからいるって、マウさん」
わたしはスマホを見せる。
そこにはいつもの朗らかな顔をしたマウさんが写っている。
急に撮ったから、少し抜けた顔をしているのがぐっとくる。
「それ最近始めたバイトの店長でしょ?」
「貴様、年の差否定派か?」
「いやいや、年の差は否定しないよ、否定しないけどさぁ、、」
「何よ」
友人Aと友人Bが顔を見合わせる。
こいつらはクリスマスにわたしを1人にした罰として、名前をはく奪されたのだ。
「瑠花の好きってさ、いっつも軽いじゃん。告られたら付き合ってそっこー分かれるし、すぐにお熱になって、すぐに冷めるし。クラスクラッシャーと影で呼んでる。主に私が」
「人をアルミニウムみたいに言うなよ、それにお前が発信源だったのか、友人A」
「え、何その賢いツッコミ、こんなの瑠花じゃない」
「マウさんがぁ、教えてくれたの、フライパンの素材の特性だって♡」
友人Aがため息をつく。
「もう先が読めるよ、少し冷たくされたら、また落ちてあれだろ、授業中とかに泣き出すんだろ?」
友人Bも追随して、
「あれ凄いよねぇ、ドラマみたいに、綺麗に音もなく涙流すもんねぇ、痛すぎ」
「おい、友人B、Aの陰に隠れてるが、お前辛辣が過ぎるな」
「それにあれよ、誰だっけ、サッカー部の先輩。あの人に振られたときなんか、まじで凹んで声でなくなったんだろ?」
「そうです。精神的なストレスによる
「いやいや心配してんのよぉ。ただでさえ意味わからん家庭環境なんだからさーあ、恋愛ぐらいこう、まともなやつをだねぇ」
分かってる。分かって直せるなら、こんなメンヘラチックな性格になってない。
「私、宣言します!!」
チョコ菓子のボッキ―を天に掲げ、私は声を張り上げる。
「うぉ、なんだよ」
「びっくりしたぁ」
「人間!!弱っているときに落ちる恋ほど悪いものはありませんつきましてはっ!!!」
「政治家みたいだな」
「ヒステリック政治家だねぇ」
「まずは自分に自信をつけたいという所存でかしこみかしこみ申します!!」
「かしこ?なんだって?」
「いい感じにヘラってるねぇ」
「ゆえに、高校に入りましたら、調理科なんですけれども、一所懸命に努力することを誓います!!」
「おおおおおおお」
「ぱちぱちぱちぱち」
「そして、いずれはマウさんの右手として、いや奥さんとして、店を切り盛りします!」
「ダメだ、動機の順序が逆だ。こいつ何も変わってねぇ」
「すでに落ちてる人間は、落ちてることに気づかない、真理ぃ」
理解されない愛、それもいい。
そんなことでどんちゃんしていると、部屋の扉がノックされた。
「瑠花さん、そろそろお静かに、、、。」
「やば、お父さんたち気づいた?」
「いえ、それは大丈夫かと、、、。」
「あれ、梨花っちぃ、久々ぁ、こっちおいでよ」
友人Bが姉の手を引く。
友人Aも、
「水口のまともな方、お前の話も聞かせろ」
「え、ええぇ、これから勉強しようと、、、」
「女子高校生になろうとするやつが、恋愛よりすべき勉強なんてねぇんだよ」
それから2時間後である。
「だからぁ、、、ふらふらいろんな人のとこに行くのがありえないんですよぉ、私らんてぇ、小学生のころから、ずっと一途なんですよぉ、、、わかりますかぁ、、
、、?」
「こいつチョコで酔っ払ったな」と友人A。
「洋酒チョコで酔っ払う人いるんだぁ」と友人B。
「梨花はさぁ、、ヘンタイチックなんだよぉ、気持ちわりぃ、、うえ、、、見たかんな、、、雑誌にキスしているところぉ、、、うえ」
「こいつも酔っ払ってんのか」
「血繋がってないんだよねぇ、これで」
「雑誌にキスして、なぁにがわるいんですかぁ、、?」
「キスする前にぃ、リップ塗りなおすのが気持ち悪いのぉ、わかんないぃ?」
「わかるぞ、瑠花。めずらしく今日はお前がまともな方の水口だ」
「うん、それはちょっと気持ち悪いねぇ」
「梨花さぁ、その人が例えばさぁ、私とかと歩いてたらさぁーあ、なんかぁ、刺してきそうだもんねぇー」
「そんなことしないですよぉ、もっとぉ、ばれない様にぃ、仕組みますぅーーー」
「ダメだ、こいつ捕まえろ」
「犯罪者予備軍ですね」
夜は更けていく。
朝起きた時、2人の記憶はなかったと言う。
「あれ、なんで梨花がここで寝てんの?」
「なんででしょう。痛っ、なんか、頭がぐらぐらします」
「、、、お前ら、本当は仲良くできんじゃねぇか?」
「、、、そんな未来も、あるかもですねぇ」
友人Aと友人Bは、そのまま二度寝に入った。
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