第7話 ニラと水仙は間違うな⑦
『俺の子だからできる。俺の子じゃないからできない。それだけだ』
父の言葉は、小学1年生のわたしにはひどく素直に受け入れられた。
それこそ、サンタクロースが存在すると疑わないぐらいに。
わたしはパパに借金して逃げられるような頭の悪いママから生まれたのだから、わたしだって頭が悪いのだ。仕方ない。これはママのせいだ。
梨花はわたしの同い年の姉だ。
連れ子同士で、同い年、それにどんな悪戯か、名前まで似ているからよく双子に間違われた。
理解するのと、納得することは違う。
梨花の部屋の方が、両親の部屋に近い場所にあるだけで悲しくなった。
学校から帰ってきたとき、梨花の方が先に1日の報告をするのが嫌だった。
服の試着をするときも、梨花が先。
食べ物の感想を求められるのも梨花が先。
全部、全部、全部。
梨花がいるから、梨花のせいで母も私にとって嫌な母になった。
馬鹿だけど、好きだったのに。
梨花のせいで嫌いになった。
梨花は中高一貫の優秀な学校に進学した。
わたしは落ちた。そして普通の公立中学に通った。
そのときから、血の繋がらない父のわたしに対する風当たりはなお強くなった。
お小遣いは、朝・夜のご飯代。
服も与えられず、梨花に頼んでおさがりを貰った。
でも、梨花はわたしより背が低かったから、いつも七分丈みたいになってしまう。
そんな私服が恥ずかしくて、土日は家に籠った。
部活も、本当は吹奏楽部に入りたかったけど、もろもろの費用を出してくれるはずもなかった。
友人だけは辛うじて作れたが、スマホを持っていないから、いつも少しだけ輪の外だった。
そのうち学校にもあまり行かなくなった。
動かなければ、お腹もすかない。
そしてご飯代の小遣いをためて、美容室やネイルサロンに行った。
唯一、梨花に勝てるとしたら、見た目だと思ったから。
だけど、ごはんを食べていないからか、生理も来なくなって、肌も荒れた。
ニキビが顔に広まったとき、全てに絶望した。
顔でも、負けたのだ。
ニキビはなんとかセルフケアで治った。
だけど、一度潰えた希望は戻ってこなかった。
いつかは、この顔も梨花に抜かされる。それは確信に近かった。
勉強ばかりしていて眼鏡だった梨花が、コンタクトに変えた。
それに少し太っていた体型も、学校の部活で細くなった。
わたしの方が派手な顔の造りだ。でも、梨花はもっと洗練された、透き通るような美人になっていった。
もう何もかも終わりだ。
わたしに愛されるところなんてない。
でもそんなこと思いたくない。
だから、わたしを愛さない、この世のみんなが悪いことにした。
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