第2話 ニラと水仙は間違うな②
「おーるゆーにでぃずらぶ、おーるーゆーにでぃずらぶ」
愛がなければ何もできない。
それなら、わたしが怠惰だって許されるでしょ?
この世にはわたしの味方か、敵しかいなくて、味方の数はすっごく少ない。
昨日まで友達だった子も、今日には敵になっている。
だってこんなクリスマスに1人だから。
百合子も、沙耶も、彼氏と過ごすんだって。
中学も最後の夜なのに。
あいつらはもうわたしの敵だ。
わたしに優しくないやつはみんな敵。
クリスマスのために気合を入れて奮発したネイルも、処理が甘くてガタガタ。
あのネイリストも敵。
髪だって、あんなに抜けないって言っていたインナーカラーのピンクもくすんでる。
あのスタイリストも敵。
みーんな敵。
四越を通り過ぎて、国分町に入る。
雪が散り始めて、ついに神様まで敵になったんだと思った。
その時だった。
見知らぬ男に肩を掴まれ、とっさにイヤホンを外した。
「おねーちゃん、1人なの?」
酔っぱらった、キャッチと見分けのつかない若い男たちだった。
女もいるが、へらへら笑ってる。
「なに?泣いてるの?かわいそうに、高校生?」
うるさい。
泣いてなんかない。
言葉は喉で詰まって、かえって涙ばかりが出ているようだった。
「俺たちこれから友達の店で飲むんだけど、一緒にいこーよ」
こっちは未成年だぞ、馬鹿なのか?
自分で鏡を見直して出直してこい。
そう言ってやりたかったが、もう何もかもどうでもよかった。
そういえばあの男はいつも飲むと楽しそうだった。
『梨花は本当に優秀な子だ。もうまわりにも言ってるんだよ、俺の跡継ぎだって』
飲んだときだけ「俺」と言って、にたっと笑う。
ああ、わたしもあれぐらい人の感情に鈍感になれたらどんなにいいだろうか。
お酒を飲めば、少しはこの心にも雪が積もって見えなくなるだろうか。
「イタっ!」
そんなことをぼぉと考えていると、ナンパ男に手をぐっと引っ張られ、その衝撃で足首をひねったらしかった。
それに手に持っていたイヤホンも落としてしまった。
「ちょっとぉー、女の子には優しくしなきゃダメじゃん」
「だってノリわりぃんだもん」
わたしは蹲りながら、ブーツをぎゅっと両手で握る。
敵だ。
敵だ。
みんな敵。
誰もわたしに、愛をくれない。
そんなときだった。
「ノンナが言っていました。女の子にひどいことする男はイオニア海でタコの餌になってしまえと!!」
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