第2話 双子の好奇心


 ミラーはいつになく生き生きとしていた。


 アイラはそういう兄を見るのは久しぶりだと思ったが、彼女自身もワクワクし始めている。


「そうね。探してみましょう」


 二人は意欲に満ちていた。この十五個もあるカギがぴったり合う鍵穴を、探そう。


「母さんには秘密にしよう」とミラーが提案する。


「たぶん言ったら没収されると思うんだ」


「そうかもね。隠されていたってことはママもカギの存在は知らないのかも」


 アイラは同意しながら、鍵束を書斎の机の上にそっと置いた。

 手はゴム手袋をしたままである。

 まずはカギを観察しようと考えた。


 十五個のカギはみんな同じサイズと同じ形状をしていた。異なるのは、それぞれの先端の一部だけ。


 しかし最近作られたものではなさそうだというのは、素人の二人にもわかった。なぜなら、彼らがいつも使うカギとは様子が違っているからだ。


「新しくはないけど、すごく昔に作られた感じでもなさそうだよね」


 兄のミラーがカギを触りながら言う。

 アイラはそれを真横で見ていた。


「……パパが若い時に作ったとか?」


「僕もそう思うけど。同じ種類のものが十五個あるということは、『同じ種類の扉も十五』あるのかなあ……」


「なにそれ。ちょっと怖いね」


 妹はつい呟く。


 でも、確かに――これだけの数のカギが皆そろえたように作られているということは、使うべき扉も似通ったものがそろっている可能性が高い気がする。


「だとしても、家にそんな場所なんてどこにも無いよ」と、アイラ。


 ミラーは眉をひそめる。

 彼は、たとえば亡くなった父親が仕事関係で使っていた物なのだろうかと思い当たる。


 だが願わくばこの鍵が秘密の場所のものであればいいのに、と。


 双子の住むこの家は大きく、敷地も広かった。


 普段の生活をする母屋の他に、同じく広い別棟が離れとして一つ、古い納屋が二つ、ガレージもそれぞれにあった。


 全てを合わせると部屋数はだいぶ多いが、それでもさすがにこの謎のカギに見合った場所はないように感じる。


「ここの敷地内で、僕らが知らない場所ってあると思う?」


 言われてアイラは考え込んだ。


「無い……と思う。いつもカギがかけられている場所ってママの部屋と、まったく使わない部屋や倉庫とかだし。だとしても中がどうなってるかわかっている所ばかりよ。他にもそれっぽいドアなんて――」


 その答えに、ミラーも同意だった。


「だよね。把握してない場所って無いはず」


 とりあえず現状、開閉にカギを使う部屋を確認しに行ってみることにした。

 二人はさっそく書斎から廊下に出る。


 まずは一階の奥から見ていくことにした。


 




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