3話

あたしは犯罪者だ。


万引きを繰り返し、今ではいくら盗ったのかも数えていない。


頭ではきちんと理解をしている。


反省はしたはずなのに、やめていない。


精神的な病気だ、障害だ・・・・・・。


色々なことを母は言い、そのたびに泣いた。


あたしは言った。


病気だと言うなら、診断書を貰いに行こう。


障害だと言うなら、障害者手帳を作りに行こう。


どうしてあなたがそんなことを言うの、と。


私を苦しめているのは、あなたなのに、と。


母が泣く。私も泣く。




あなたを殺したい、と、お母さんが言う。


娘が犯罪者だなんて、他の人に顔向けできない。あなたを殺して、私も死んでしまいたい。


ねぇ、


死んで?




一度だけ、夜中に父と母が話しているのを聞いたことがある。


すすり泣く母の声と、諦めきった父の声が、という犯罪者を描いていく。


どうしようもない。どうしてあんな子に育ってしまったのか。恐ろしい。


――人としての心が、欠けている。




辛いのは2人だけじゃないのに。あたしだって、辛いのに。


なんで自分だけが辛いって思うの。なんであたしをそんな目で見るの。


あたしは?あたしはどうすればいいの?どうすればこれ以上人を不幸にさせないようにできるの?


あたしがまだ生きてる意味って、何?


辛い。しんどい。悲しい。悔しい。怖い。


毎日毎日ぐちゃぐちゃしてる。


もう疲れたんだよ。


こんなに頑張って生きている意味なんて、どこにあるの?


あたしがいなくなれば、お母さんは楽になれるでしょう?


あたしがいなくなれば、あたしは人を不幸にさせずに済むでしょう?



あたしがいなくなれば、いいんでしょう?




お母さんにはたくさん迷惑をかけて、そのくせに学校では一丁前に学級委員なんかやって、みんなに頼られて。


あたしなんか、頼られるような人じゃないのに。


みんなのほうが、頼れるまともな人なのに。


なんで、あたしを頼るの?


なんで、あたしがいいっていうの?


なんで?ねぇなんでなの?


だから、あたしは死にたくなるんだよ。




彼だってそうだ。


初めてできた彼氏は他校で、会えない時間も長いけれどたくさん話していた。


可愛いって、大好きって、いっぱい言ってくれる、自慢の彼氏。


彼は、あたしが万引き犯ということを知らない。


言ったらどんな反応をするのだろう。


きっと、この関係も終わってしまうのだろうな。




万引きをして、親を困らせて、学校では猫かぶって、彼氏には黙ってて。


あたしは、最低だ。


最低の人間だ。

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