空漠少女
あたしは犯罪者だ。
万引きを繰り返し、今ではいくら盗ったのかも数えていない。
頭ではきちんと理解をしている。
反省はしたはずなのに、やめていない。
精神的な病気だ、障害だ・・・・・・。
色々なことを母は言い、そのたびに泣いた。
あたしは言った。
病気だと言うなら、診断書を貰いに行こう。
障害だと言うなら、障害者手帳を作りに行こう。
どうしてあなたがそんなことを言うの、と。
私を苦しめているのは、あなたなのに、と。
母が泣く。私も泣く。
あなたを殺したい、と、お母さんが言う。
娘が犯罪者だなんて、他の人に顔向けできない。あなたを殺して、私も死んでしまいたい。
ねぇ、
死んで?
一度だけ、夜中に父と母が話しているのを聞いたことがある。
すすり泣く母の声と、諦めきった父の声が、あたしという犯罪者を描いていく。
どうしようもない。どうしてあんな子に育ってしまったのか。恐ろしい。
――人としての心が、欠けている。
辛いのは2人だけじゃないのに。あたしだって、辛いのに。
なんで自分だけが辛いって思うの。なんであたしをそんな目で見るの。
あたしは?あたしはどうすればいいの?どうすればこれ以上人を不幸にさせないようにできるの?
あたしがまだ生きてる意味って、何?
辛い。しんどい。悲しい。悔しい。怖い。
毎日毎日ぐちゃぐちゃしてる。
もう疲れたんだよ。
こんなに頑張って生きている意味なんて、どこにあるの?
あたしがいなくなれば、お母さんは楽になれるでしょう?
あたしがいなくなれば、あたしは人を不幸にさせずに済むでしょう?
あたしがいなくなれば、いいんでしょう?
お母さんにはたくさん迷惑をかけて、そのくせに学校では一丁前に学級委員なんかやって、みんなに頼られて。
あたしなんか、頼られるような人じゃないのに。
みんなのほうが、頼れる、まともな人なのに。
なんで、あたしを頼るの?
なんで、あたしがいいっていうの?
なんで?ねぇなんでなの?
だから、あたしは死にたくなるんだよ。
彼だってそうだ。
初めてできた彼氏は他校で、会えない時間も長いけれどたくさん話していた。
可愛いって、大好きって、いっぱい言ってくれる、自慢の彼氏。
彼は、あたしが万引き犯ということを知らない。
言ったらどんな反応をするのだろう。
きっと、この関係も終わってしまうのだろうな。
万引きをして、親を困らせて、学校では猫かぶって、彼氏には黙ってて。
あたしは、最低だ。
最低の人間だ。
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