虐め

わたしは、わるくないです。


わるいのはあのこ。


わたしをいじめる、あのこがわるい。




なんどもやめてっていいました。


でも、やめてくれませんでした。


にやにやわらって、むししたり、みずをかけられたり、つくえのなかにむしがはいってることもありました。


たたかれて、けられて、ののしられて。


ないても、おどしても、いじめはつづきました。


せんせいのまえではいいこぶって、みていないところでわたしをいじめます。


じぶんたちはわるくないと、いじめられるわたしがわるいといってくるのです。




わたしが、なにをしたの?


あなたたちにいやなことした?


ねぇ、なんで?


なんで、わたしにいじわるするの?


なんで、なかよくしてくれないの?


ねぇ、なんで?




わたしの前で、小さな背中が揺れている。


高い笑い声と、いとけなく首を傾げる仕草。


その子がゆっくり振り返り、こちらに手を伸ばした。


――わたしに、触れないで。


伸ばされた手を払い除け、肩を押す。


大きく見開かれた目が、私の視線と交差する。


その瞬間、たしかにわたしは、笑みを浮かべた。




落ちてゆく。


階段を転がり落ちていく。


手が、足が、首が、あり得ない方向に曲がっている。


肌には赤い打撲の跡、聞き苦しい呼吸音。


吐き出された血液だけが、その場で色を持っていた。




わたし、わるいことしましたか?


してませんよね?


いじめるこなんて、ああなってあたりまえですよね?


わたしは、わるくないのに。


なんでみんな、はなしをきいてくれないの?


ねぇ、まま。


いかないでよ。


みんな、みんなみんな、いなくなっていくの。


なんで?


ねぇ、独りにしないでよ。

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