第6話 誘うモノ 誘われるモノ
「………あっ、終わったみたいだね…」
大きなモニターを観ながら、知らない誰かが言う。
「彼女…えぇっと、木森 桜?…う〜ん…世良場 桜?…それとも…セリヴィア 桜?…どれが正しい名前なのかな…。ねぇ君はどう思う?」
そんな事を聞いてきたと思えば
「まぁ名前なんて、本人がどう呼ばれたいか、どう呼んで欲しいかだよね。僕達が気にする事なんて、全く無いよね」
と、勝手に話を終わらせるのだ…。
「それにしても彼女の日常ってさ、不思議な感じだったよね…。最初は、あっ!撥ねられた!って思っていたら、あれ?モニターが真っ暗になったぞ?って、始めはモニターが、壊れたのかと思ったよ。でも彼女の居た世界だったみたいで、壊れてなかったと安心しちゃった〜」
アハハと笑う、見知らぬモノ。
「そうそう、あの彼女が居た世界、とても面白い世界だったよね!最初は、彼女が撥ねられて終わりだと思っていたら、画面は暗くなるし、暗くなったかと思えば、綺麗な世界が映し出されるから、ついつい最後迄、どうなるのかって観ちゃったよね。本当はお勧めしないって言ってたけれど、彼女の日常が、余りにも不思議な感じだったから、軽く過去の出来事も観ちゃったけれど、観て正解だったと思ったよ。君も、そう思っただろ?」
ちょっと得意気に、同意を求める見知らぬモノ。
「過去を観てから、あの犯罪者とのやり取りはさ、なかなかスリリングだったよね!僕はそう思って観てたよ。…えっ?そうでも無かった?嘘ウソ〜、またまたぁ〜。本当は、ドキドキハラハラしてたんじゃない?そんなに恥ずかしがらなくてもさぁ〜」
ニコニコしながら、言ってきた…。
「ほらほら、もっと自分に素直になりなよ〜」
面倒くさいが、ここは相手に合わせて、そうだと言う方が吉だろう…。
「やっぱり〜?フフッ…素直で宜しい!アハハッ」
とても満足そうな様子だ…。
「あ〜でもさ、最後はどうなったんだろうね…。彼女…、死んじゃったのかな…?それとも、夢の世界?ん?虚無の世界?…あれ?どっち何だろう…。まっいっか!別にそれはどっちでも良いよね?…で、君はどう思った?僕は正直、どっちでも良いんだけれどさ、最後、突然また真っ暗になっちゃったから、彼女の観察も此処迄だものね…。モニターも壊れては無さそうだし、ずっと真っ暗なままだから、彼女の観察は終了何だろうね…」
ちょっと寂しそうに、物足りなさそうに言う、見知らぬモノ。
「終わったモノの事なんて、もぅこれ以上観察しててもしょうがないよね〜。別にこれ以上、したいとも、知りたいとも思わないもんね。でもさ、観察第1号がさ、彼女で良かったよ♪エンターテイメント性が有ったからさ、なかなか楽しめたからね〜」
何て事を言う、見知らぬモノ。
「さぁ〜て、次の第2号さんを観ようか?ってその前に、折角のお茶が冷めてるね。ちょっと待ってて、直ぐ淹れ直してくるから」
と、バタバタと創られたキッチンへと向かう、見知らぬモノ。
「あっその間に、勝手に先観ないでよ?絶対だよ?次の彼の日常もさ、なかなか面白そうだから、一緒に観ようね!だからちょっとだけ待っててよ…」
待つも何も、どうやって観ていいのか、どうすれば観られるのかも、全く分からないのに、わざわざ釘を刺す意味があるのかを聞きたい気分になる。
「お待たせ!約束通り、観ずに待っててくれたんだね、凄く嬉しいよ〜♪それじゃ、次の彼の日常…スタート…」
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