第二話 配信の準備とダンジョン選び
今までは完全に観る専だったものの、配信用のサイトのアカウントは持っていた。
なのでそれを使っていこうと思う。
スマホ一つあればできるから簡単だ。
寝そべったままで俺はスマホ画面を操作し、チャンネルを開設した。
「ええと、チャンネル名は……そうだな、適当に『カズのダンジョン配信室』でいいか。
俺の本名は
幼い頃はよくカズというあだ名で呼ばれていたからという安直な考えで動画内で使用するハンドルネームに決定し、チャンネル名も決めた。
あとは配信ボタンを押せば、すぐにでも配信できる。だが、それはあくまで可能不可能の話であり、諸問題を解決してからでなければならない。
例えば配信器具をどうするか。他にもいつの時間帯が再生数が多いかや、どのような口調で配信をすれば好まれるかなどということなどを調査する必要がある。
とりあえず熟練の配信者が発信している動画配信者になるための解説動画でも観ながら学んでいくしかないだろう。
面倒臭いなと思いスマホを放り出したくなったが、一度やると決めたらやらなければと己を律した。
――そして結局、機材集めやら動画の勉強やらでかかった期間は一週間。
ようやく準備を整えた俺は、とあるダンジョンへ向かっていた。
「超初心者向けのEランク。ここならさすがに死ぬことはないだろ」
ダンジョンにはランクがある。
超上級者でも危険とされるSSSランク。
超上級者向け、頑張れば上級者でもクリア可能なSSランク。
上級者向けで中級者が足を踏み入れば生還不能のSランク。
上澄の中級者ならクリア可能なAランク。
中級者向けのBランク。
初心者向けと中級者向けのちょうど中間、Cランク。
初心者向けのDランク。
超初心者向けのEランク。
上のランクになればなるほど視聴者の注目度は高いが、無茶な場所を選んでうっかり死にたくはないので安全策を取っておく。
初心者の配信であれば、Eランクでも充分だ。
家から歩いて二十分のとある路地の一角で俺を出迎えたのは、ゲームの中にでも出てきそうな洞穴だった。
ここはEランクでありながら、なんと未踏破のダンジョン。あまりに妙な場所にあるからと踏破する価値もないと見過ごされてきたのだろうか。
坂を下りればダンジョン入りできるらしい。
スマホを握りしめた俺の右手の指先が緊張に震えた。
今日は初配信。絶対に失敗したくない。
「……よし」
ごくりと唾を飲み込んで、入り口へと足を踏み出す。
――それと同時に、左手に持っていた懐中電灯を点灯。同時に配信を開始させた。
「初めまして! 今日からダンジョン配信始めます、カズです。ワクワクするような冒険を求めて初ダンジョンに臨もうと思いまーす。
ここは某所にあるEランクのダンジョン。俺みたいな初心者にはうってつけってわけです。しかも未踏破ですよ未踏破!! 真っ暗ですねー。どんなモンスターが待っているのか、ドキドキが止まりません」
人が良さそうに見えるよう鏡の前で数日間練習した笑みを浮かべ、元気よく喋りながら、俺はザクザクと足音を立ててダンジョンを進んでいく。
少し歩くと三股に分かれた道に出た。なんとなくの感覚で右に行ってみることにした。
そしてその先に見えたのは――土からひょっこり人間大の頭をのぞかせる蛇。
Eランクダンジョンによく住み着いているらしい雑魚モンスターである。
大きさを除けば、普通の蛇となんら変わりない。
特徴は噛まれると丸一日動けなくなるということくらいだ。
「早速モンスターを発見! 倒せますかねー?」
ちらりとスマホに視線をやる。
ぽつり、ぽつり。徐々にではあるが観覧者は増え、十五人ほどになっていた。
「じゃ、戦いますか!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます