秋の章 空虚

愛しき血。

空間を彩る生命の花。


花弁はえて朽ち果てて、饒舌じょうぜつな赤色は大地に眠る。


ツンとした鼻腔への静なる攻撃。

終焉しゅうえんあらがう最期の一輪。


彼女は枝ごとを根本から離れた。

命を終えたから痛くはないのかな。


音もなく現れる瑞々しい片鱗へんりんはやがては新たなつぼみをしたためるように過去の喜びが渇いた心中に去来する。


透明なビニール袋に、まされまいと噛み付く枝。

その繊維を今にも突き破ろうと、生きる証は必死にもがく、何も知らない赤子のように。


褐色へと辿るがくは 強かに有り続ける その生命力の強さと、見るに儚い弱さとを内包し、今日もその空虚な存在として 空を仰ぐ。


紫陽花あじさいの青に似ていつまでもきえない想いを残して。

目をあけて描く夢だから。


決して醒めない夢じゃないから。



蘇ることのない緑だけの姿は、周りの草木に溶け合っていた。

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