夏の章 別れ

もう、お別れなのね。


枯れ果てるイベリス。


変わりやすい空は初夏を迎える。


自然と涙は出なかった。

また、どこかで会える気がしたから。



夏の燃えるような愛で あなたを抱きしめたかった。


夜の静かな蛍のような瞳で あなたを見つめていたかった。


健やかなときも、病めるときも、 ずっとそばにいてくれた。




目の覚めるような純白のタキシードに 流線美あふれる真紅のドレス。


花婿としての飾らない薄彩うすだみ

花嫁としての至高たる極彩ごくだみ


空が告げる。

では誓いのキスを。



やわらかな風が私たちを包むと光のブーケをふわりとあげて優しく芳しい音が離れるとあなたは少し赤くなっていたね。


私の花蜜に甘美に触れて染め上がってしまったのね。


あなたの白は私の心に どこまでも生き続ける純粋な想い これからも共に在り続ける。



そう、あの空のように。

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