第6章:ダンジョン開放(鎖国組限定)

第109話:βテストに向けて






 ダンジョン開放記念コンサートも無事終了し、鎖国組はダンジョン開放のための制度なども本格稼働を始めている。

 最終日の土方ダンジョン公演の様子は休憩時間をカットしたものを神様配信動画サイトに公開済みだ。

 公開した途端、とんでもない再生回数をたたき出した。


 また、1日目から6日目までの公演も見たいという声が多く、売ってくれという要望がグッズの通販サイトに押し寄せてきたので、どうしようという相談がグッズ作成部門から担当神経由で飛んできたので、それぞれの日に担当したオーケストラや会場の了承をとり、グッズの1つとして売りに出すことが決定した。


 7日目に関しては神様配信動画サイトで公開しているのでグッズ化はしないが、1日目から6日目までの公演はセット売りと1日単位で買えるばら売りで販売するそうだ。

 セット売りの方はボックスタイプとそうでないタイプがあり、ボックスタイプの方は一颯の友人イラストレーターが描いたイラストが印刷されている豪華版である。

 後、ブルーレイと、需要があるのか定かではないがDVDの両方を取り扱うそうである。

 こちらは現在量産中なので、ある程度数が揃った段階で販売の発表をするという。

 なお、サンプルと称して複数セットを一颯は手に入れたので問答無用で近藤、斎藤、沖田に送り付けている。






 さて、コンサートの余韻も消えかけている現在、一颯はというと、新エリアの神様チェックが通り、βテストを頼む段階へと到達した。


「今回は物凄くエリア広いんで沢山テスター来てもらう必要あるんですけど……」

“ええ、分かってますよ。自衛隊だけで大丈夫です?リリース時のβテスターの数じゃ足りないでしょ?あの時と比べても今回作り込まれてますし”

「それな。あー……ちょっと、今回はβテスターの人たちにPV作成で協力して欲しいことがありまして。自衛隊の人どれだけ来てくれるんか分からんのですけど多分……もっと人必要かも?」

“ん?PVの作成に協力、ですか?”

「おん。こちら、PVの暫定絵コンテです」

“どれどれ”


 縮こまり、忙しなく目を動かす一颯に差し出された絵コンテを端末を通して担当神は確認していく。


“あっはっはっは!!一颯さんってばまーた上位神や神話級の方々が目を輝かせそうなことをやりますねぇ!PV撮影用だって釘を刺してないと乱入しそうなのでこの絵コンテ見せて説明しときます”

「あ、ありがとうございます」


 一通り絵コンテを確認し終わった担当神が笑いながら上の神々を抑える役目を担ってくれてほっとする。

 一颯も絵コンテを作りながら、これもしかしたら神々乱入するな?と思っていたのでこの申し出は有難い限りだ。


”これ、あれですよね?言ってしまえば予行練習的なあれですよね?”

「お、おん。本番はリリース後に予定しとるので、予行練習で神さま来られるんはちょっと困るといいますかなんといいますか……」

”ですよね!分かりました!本番まで楽しみにしてもらう方向で行きましょう!で、どうしますか?βテスト自体は人数増幅させるんでいつも通りの1週間でいいですかね?そのあと、PV撮影に協力してもらう感じで?PV撮影はどれくらい時間使います?”

「βテストはいつも通りで良きです。PV撮影は1日半くらい……?保険をかけて2日もらえたら嬉しいなあと」


“了解です。ふむふむ、一颯さん”

「なんすか?」

“今回のβテスト、人数が必要なら自衛隊以外にも声をかけても良いですかね?”

「ん?自衛隊以外にも声かけてええのであれば、どうぞ?」

“了解でーす。じゃあ依頼してきますねー。ついでに、予行練習をかねたPV撮影に協力可能な人を条件にしますね!”


 通信が切れて沈黙した端末をじっと見つめて一颯はぽつりとつぶやいた。




「自衛隊以外にもβテストって頼めるんか」






















「今回のβテストの後にPV撮影が入るます。その時におまいらにやってもらいたいことがあるんよ」


 βテストが1か月後に決まり、テスターはダンジョン省が依頼をかけたりなどして数を揃えてくれている最中である。

 そんな中、一颯はコックゴーストとシルキー、猫人他、好奇心から集まってきた仲間を前に話し始めた。


「何をすればいいんだ?」


 腕を組んだ大介が聞けば、この場に集められた面々が頷く。


「屋台」

「屋台?」


 簡潔に答えられたそれに何人かが首を傾げている。


「今回のPV……尺の関係で別動画になるかもやけども、まつりの風景を撮りたいんよ。リリース後、落ち着いた頃合いを見計らって神社エリアと城エリア、城下町エリア、門前町エリアを主に使って祭りやりたくてな」

「なるほど、それでおれたちなわけか」

「おん。コックゴーストは料理系の屋台、シルキーと猫人はその補佐や店員、もし自分も屋台を出したい子がおったら申し出てくれれば良き。一応屋台はこの場におる面々が主だった主力にしようと思てるけど、一応、この場におらん子らにも伝えはするます」

「ふむ、屋台と言えば食べ歩きが主か。さて、どうするかな」

「わぁ、ワクワクしますー!」


 大介が考え込む横で妙がはしゃぎ、他のコックゴーストたちもわいわいと楽しそうに話し始めた。

 シルキーと猫人は集まってコックゴーストの補佐、店員、屋台を出す子に分かれて行ってグループ分けが進んでいる。

 野次馬で来ていた子たちも楽しそうに話しているのを聞いてとりあえずほっと息を吐き出す。


「あ、ごめんやけど、渚沙他、裁縫得意なシルキーは別でやってほしい仕事あるんで、こっち優先してもらうます」

「え?はい、それは大丈夫ですが、何を作ればよいのでしょうか?」


 コックゴーストの補佐のグループにいた渚沙や他のグループにいた数人が一颯の前まで進み出てくる。


「おまいらにはPVで使う衣装を作って欲しいんよ。対象は弓弦と矢馳を筆頭に狐人、衣墨と白夜の妖狐組、水龍の霧雨、龍王ズ、榊と白木の獅子と狛犬のを頼みたいんよ。雑に描いた衣装の原案がこれ。悪いんやけど、ファッションはわたしかなり疎いんでおまいらでこれを基にデザインからやってほしいんよ」


 一颯が差し出した紙を受け取り、集まっている渚沙たちがのぞき込む。


「ああ、なるほど。主さまのやりたいことが分かりました。了解です。これを基にわたしたちで作りますね」


 渚沙が頷き、他のシルキーを連れてさっそく仕事部屋へと向かっていくのを見おくる。


「我らも何かをするのか」

「おん。むしろメイン」

「……ふむ、無茶ぶりだけはやめよ」

「無茶ぶりかなー?おまいらだったら出来そうやけども」

「まあ、聞いてから判断するとしよう。その説明はいつだ?」

「全員揃ってから。ダンジョン内スタッフの子らが帰ってきてからやな」

「分かった。思ったのだが、祭りなどいくらPVのためとは言え、神々が押し掛けてくるのでは?」

「あ、それは担当さんが待ったかけてくれたんで、PV撮影の時は来ないはず、多分。祭り本番は来ると思うし、お招きしたい神々がおるんよな」


 朧の質問に答えれば、彼が首を傾げる。


「招きたい神々だと?」

「おん。モチーフにさせてもろた金毘羅さん……金刀比羅宮の御祭神の方々と、天空の鳥居として取り入れさせてもろた高屋神社の御祭神の方々を。えと、勝手にモチーフにしてしもてすまんやでの気持ちとありがとうございますの気持ちを込めて」

「ふむ、ありであるな。他は言い方はあれだが勝手にくるだろうし良いだろう」

「あ、神様と言えばお酒。酒呑さんに依頼かけんと。近藤さんと依頼料のすり合わせもせんとな。あと神様に出す料理。あー……大介や妙他コックゴーストに頼んでも問題なかろか?」

「ないですー!」

「神々に出す料理ならばおれたちコックゴーストが担当する。屋台と並行して出来る。問題などない」

「さ、さよか。ならおねしゃす」

「ああ」


 独り言に近い疑問を拾われてあっさりと請け負ってくれた大介や妙たちコックゴーストたちに頷きを返す。


「PVでは神々は来ないから、それらは本番用か」

「おん。PV撮影の時は屋台だけやな」

「なるほど」

「あと、次のエリアやけど」

「おい。もう考え始めておるのか」

「いやー……今回作った新エリアの奥、南側がすっからかんでなんもないやん?田園と茶畑で埋めはしたけども」

「まあ、確かにそうだが」

「南にもなんか作りたいなと思ってるんよ。まあまだなんも決まってないけど」

「とりあえずそれは置いておけ。今は目の前の新エリアであろう」

「おん」


 がしりと朧に頭を鷲掴みされた一颯は大人しく頷いた。


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