第4話 衣について


 霊流循環はこの世界を生きる鍵の一つになりそうであるが、もう一つ気になってるのが夢で願った力『クラフトボックス』だ。

 

 直感的にその力があることはわかっている。

 それは自分の手足とか5感のようなものとして存在してるからだ。

 具体的にいうとクラフトボックスの力は『収納』『分解』『加工』の3つからなっており、ただし使用する際にそれなりの霊力を必要とする。


 が、現状では小石1個すら収納できない。霊力が足りないのである。

 当分は霊流循環の鍛錬をするしかないってのが現状であった。


 という事で、能力について話すことは今のところない。

 ここでオレの暮らしぶりについて説明したいと思う。




 ほとんどにおいて手作業なこの時代において、ちゃんとした衣服というのは高価なものである。植物から繊維をとり、糸を縒り、生地を編み、そしてようやく服を作る。

 比較するのもアレだけど、掘っ立て小屋を建てるより手間がかかるものなのだ。

 なので下着なんてつけてる訳がない。


 夏場の貫頭衣はわらや多年草を干したもの使って各家庭で自作する。

 冬場は革の服を着る。鞣し職人が処理した革をやはり各家庭で裁縫する。鞣しが不十分なのか臭いがキツい。


 オレの場合、幼児用のスゲボウシ(スゲという多年草で編んだ簡易ローブマント)を着てるが、単にむしろを巻いてる子もちらほら。


 各家庭の衣服事情は懷具合というより、冬の農閑期に作ったものをどう扱っているかだ。自分で使わずに売ったり、何かと交換したり。

 藁細工や服作りがわからない者に対しては、対価を含めてお願いしてきたら教えるが、積極的に教えることはしない。


「新しく来た人らはちゃんとやってんの?」と母。


「まだ馴染んでないね。うちみたいな辺境に流れてきてるんだから、訳ありなんだろうけどよ。」と父。


「そんな事をいえばうちらは皆そうだからね!

 下手に親切心だすんじゃないよ? 下手にかまって依頼心で寄りかかられたら共倒れ! 下手すりゃ逆恨みだからね! わかってるよね?」と顔色は変えないで詰問する母。


「わかってるさ。

 少なくとも自分でどうにかできないなら頭下げてこないとな。

 親切心でやっても身にならなければ教え方が悪いだの言ってくる。

 しまいには「教えてくれなんて言ってない!教われてやったんだ!」だからな。」と顔色を変えて返答する父。


「そうよ。頭さげられない奴はここじゃ生きていく資格はない。面子がどうのとか糞くらえって話だからね。」と声色が冷たい母。


 コミュ力も労働性も低い者は自然と村八分になっていくようだ。

 意地悪というより、小作人は基本的に余裕がない生活をしてる為、共倒れを一番に厭う。最悪、身売りどころか一家離散らしい。



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