終末日本
急いで家に戻ると、大吾は家に着くやいなや一階リビングの家具をどんどんと窓に置いて窓を塞いでいく。
裕也「おいおい何やってんだよ」
大吾「急げ松田!あのソファー押して窓を塞げ!」
裕也「は、はぁ…まぁわかった」
大吾の圧に押され、しぶしぶと松田も窓を塞いでいく。
しばらくして、窓は一階の家具をかき集めて作られた簡易バリケードによって塞がった。
大吾「よし…ひとまず2階の行っていいか?」
裕也「いいよ」
2階に上がり、2階リビングで一息つくと大吾が説明を始める。
大吾「とりあえずベランダ出ようか」
ガララ……。
ベランダに出て外を見ると、遠くで火災が起こっているのだろう大きなオレンジ色の明かりが、夜の夜空をギラギラと照らしている。
どこからかは、爆発音や車が何処かにぶつかったような鈍い音が鳴り響き人の姿はもう見えず逃げ惑う声が微かに聞こえるだけで、かなり遠くまで逃げていったことが感じ取れた。
裕也「マジで…どうなってんだよ…」
大吾「お前が考えてる通りだよ」
裕也「やっぱり?地震や何かしらの災害だろ?」
大吾「いや全然ちが……隠れろ」
裕也「は?いやな… 大吾「ちょっ早く!」
突然焦りだす大吾を見て疑問に思うが、直ぐにその疑問は無くなった。
大吾「よし…ゆっくりと部屋に戻るぞ……」
裕也「なんだよ…外に何がいるのか……」
少しだけ、ベランダの縁から顔を出し外を見た。
そこには足を引きずった男性が、ゆっくりと歩いて行く身体からは出血しており右腕が無かった。
裕也 (う…グッロ…一時期グロサイトにハマって見てたのが幸をなしたか…。)
俺は、声をかけようと縁から完全に顔を出そうとすると、大吾に「バカ!辞めろ!」と、背中を引っ張られる。
怖いもの見たさからだろうか、どうしても気になり抵抗しながら見てると
「ヴぁ…ア゙ァアアァ」
何処から出してるのだろうか、凄まじい雄叫びみたいな声を出すと、置いてかれた犬がいる小屋へと走っていく。
「ワン!ワン!ワン!ギャン!ギャギャン」
ブチッ!ブチャッ!
なんと犬に噛み付き犬を生きたまま噛み殺し始めのだった。
俺は、見るに耐えられなくなり見るのを辞めるが、
「キャャャャン!キャン!キャ……キ…」
ブチィ!グチャ…グチャ…グチャ…。
咀嚼音や肉のリアルなちぎれる音を聞き脳内で何が起こっているのか再生してしまった。
大吾「おい…だから行っただろ大丈夫か?」
2階リビングに併設してあるトイレ──。
裕也「う…う…ゥ…オゲェ…ハァ…オギェエグッェエ…ゲチェ……ハァハァ…」
びちゃッ……びちちゃ…。
ガシャァァァ…ドゴゴンッ!。
気持ち悪い…かなり吐いた一階の洗面所に行きうがいをする。
2階リビング───。
裕也「はぁ…もう何も聞きたくない……」
大吾「いやダメだね話しまーす!」
大吾はそう言うと、何故こんな事になったのか当時の状況を振り返りながら話し出す。
大吾「それじゃあ、まず…岩手県に初の感染者が出たのは知ってるよね」
裕也「あぁ知ってる『7月13日』遂に現れたかという気分だった。」
大吾「ただ正式に感染が認められたのが7月13日ってだけで、実はその前から広まってたんだと思う」
裕也「え?でも広まってたのは、盛岡とかの都会の方だったじゃねぇかな」
大吾「だからそれは、正式に感染者と認められた数でしょ。精神病と勘違いされたり被害者だってただの怪我人として扱われたり、本人だって気づいてないかも知れない」
裕也「うわ…マジか……なんかさー当時メディアもバンバンと感染症の恐ろしさを煽りに煽ったからさ、絶対感染を隠す奴も居ただろうなー」
大吾「そうだな〜まぁ居ただろうなぁ……」
しばらくの沈黙が走り、俺は口を開く。
裕也「なぁ…ここ一関だぜ、こんなパンデミックがいきなり起こるかよ」
大吾「それが起こってんだよねぇ。一関にもさっきの話の奴らがいて、まぁそんな奴らが連続して発症、更に病院からは感染者が脱走…してこんな事が起こったってわけじゃない?」
裕也「はぁ…マジか…それはそれとして俺達、これからどうしよう」
ガララ……。
再び、ベランダに出る深呼吸をすると、血の生臭い匂いがツンと鼻をつつく。
もう人の声は聞こえなくなり、辺りには呻き声のような声がうっすらと聞こえてくる。
岩手県一関市午前3時。
俺達は、取り残された。
大吾「もう、国も機能してない世界もどうなったのか分からないまるで、終末…こんなに簡単に終末世界みたいになっていいのかよ」
裕也「終末になった世界ねぇ……じゃあここは、終末になった日本……終末日本かな…」
裕也「俺達、これからどうなるんだ…」
大吾「さぁ…知らね、とりあえず長生きしたいなぁ……」
裕也達は、少しの希望を言いながら部屋へと戻っていった。
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