ただの不登校

2010年に両陣営のいざこざによって起きた、多国籍軍と中東諸国の全面戦争が始まった。

その後、両者どちらも正義とは言えない戦争を繰り広げ多くの国を巻き込んでいき、日本も戦争による世界的なオイルショックで大変だったのは覚えている。

その後、2014年ぐらいに戦争はどちらの勝利か曖昧なまま終わった。

しかし、戦争による中東諸国の人々の恨みは終わること無く残り続け、いつしかその恨みは、多国籍軍の参加国や支援をした国へ報復することを目標としたテロ組織へと変わっていった。

───────。


2021年7月中旬。


カチカチカチカチ


「フフーフフフーン…………」


皆が、学業に勤しんでいる時間に、鼻歌交じりにパソコンゲームをしている彼、松田裕也15歳はつい最近引きこもりになった。

受験勉強が間に合わず第一、第二と高校を落ちた裕也は、適当に選んだ偏差値の低い高校に入学。


この高校には知り合いも居ないし、まぁなんとかなるだろうと思ったが、弄ったら必ず反応してくる毎回ヘラヘラしててなんかウザいという理由で虐めの対象になった。


毎日、コンプレックスを笑われファイルで頭を叩かれ、机には落書きされなかったが、筆箱や授業で使うファイルが消える。

そして新しいシャーペンを買った事がバレると、必ず一本は壊されるか、借りパクされるという陰湿な虐めは徐々にヒートアップしていき同じ部員からも馬鹿にされるようになった。

次第に裕也は吹っ切れて6月から学校に行かなくなった。


 毎日のように家でゴロゴロとゲームをし

稀に罪悪感や不安感からか胸を綿でゆっくりと締め上げられる苦しみを体感しては、気分転換に学生達が学校に行き勉学に取り組んでいる時間帯に、外出し引きこもりじゃない言い訳を作り日々楽しんでいた。

そんな彼は現在、家に龍城している。

──────。


一ヶ月前、6月中旬。


 引きこもってから、いつものように日課であるネットサーフィンをして好きな漫画を読み、スマホゲームをしてるが早速、暇を持て余すようになった。


「なんか…何もしてないのに疲れたな…」


しばらくゴロゴロしてると、ピロンッと音がなりスマホに通知が表示される。


 Gohoo!

[緊急速報:東京都内地下鉄で有害物質の拡散を確認。テロの危険性は───。]


「ん?え、まじ?」


 裕也は内心少し盛り上がり、急いでGohoo!を開き検索するが続報はまだ出てなかった。

そこで、裕也はSNSを開き周りの意見ついでに情報を調べようとするが、そのどれもが急な出来事に対応することが出来ていないコメント、東京在住の人を心配するコメント、デマっぽいコメントなど情報の無いものばかりだった。

中には対応の遅さによる批判、勝手な解釈による政治的な批判も含まれているコメントもあったが、特に気にならなかった。


(なんだよ……ろくな情報ねぇな。もういいやはぁぁ飽きた〜まぁどうせ俺、関係無いし寝るか。)


 そう言いながら裕也はスマホの電源を切りベッドに向かって投げる。


「おいっしょ!」


 ボフッ。柔らかなベッドに飛び乗った裕也、フワフワ暖かい毛布に包まれ自然と眠りについた。


その頃ニュース番組内では

「えーここで緊急速報です。政府は東京都地下鉄での有害物資の拡散を非道極まりないテロ行為とし、専門部隊の派遣と被害者の救出を第一とし……」

「現在テロ行為があった地下鉄構内では有害物質が拡散している可能性があり、今からお伝えする場所はしばらく閉鎖されます……」 「テロ関連の事件が、一週間前に、中国でも確認されていて──政府は同一性を──」

─────。



 ガチャ………ドンドン。


「ん……?あ?………(あぁ夕飯か……)」


 引きこもるようになってから、母親とも会話をしなくなった、というより無視され始めた。申し訳なさは前は少しあったが、最近はそんな気持ちも薄れてきた。


 ガチャァ……。


 飯はさっきのように母親がドアの前に置いた後、ノックで知らせてくれる。

 今日はただの千切りキャベツのドレッシング無しサラダと冷凍食品の肉だ。別におかしいとは思わないただ学校に行かなくなってから僕は雑にあつかわれてるように感じる。

まぁ当たり前か。


 ザク──ザク──バミュ──。


「学校行こうかな……でも今更、学校行けねぇよ…(絶対また虐められる)」


 飯を食べながら今後を考える、頭が痛くなり胸の締め付けがより強くなるだけだった。 自然と飯も不味く感じた。食べ終わった後、ドアの前に食器を戻し、後は一刻も早く忘れようとベッドに入る。


「……忘れろ…忘れろ…もうちょっとだけ忘れさせてくれよ──頼む──……zzz」


 今日の終わり毎日この繰り返し。こんな生活辞めよう、明日は勉強しよう、と思っても気づいたら何も出来ないまま一日が終わる。


小学生の笑い声、中学生の楽しそうな会話で目が覚める時計は7時30分を指していた。

結局、嫌な気持ちは忘れられずにモヤモヤ感が増しただけだった。

なんでこうなったのか振り返れば中学生の頃も、進学校に入ると一丁前な目標を持ってる癖に勉強せず明日こそはやる!今日こそは!学校から帰ったら!と言い聞かせ、結局気づいたら深夜1時になり勉強なんて一切しないかったというのが毎日だった。


「ハハ……今考えたら全部自分のせいじゃん」


しばらく落ち込んでいると、またスマホから通知音がなる。


Gohoo!

[速報:ニューヨーク、フランスで同時多発的なバイオテロ事件発生。危険物質が検出され、専門チームが現場に到着。政府は市民への緊急避難勧告。日本のバイオテロとの同一性は?。]


「アメリカにも!?マジかよ凄い事件というよりも、なんか恐怖の方が勝ってるんだけど」


裕也は滅多にない出来事を目の当たりにし恐怖するが、逆に事件が気になってしまい情報収集をする為にネットに張り付く。

小腹がすいても大丈夫なように大量のお菓子やインスタント系の飯を持ってこようと部屋を出て一階に降りていく。


裕也が階段を降りた頃、ベットにポツンと置いてあるスマホが静かになる。


ピロリン♪

Gohoo!

[東京都内病院で、患者が医者を襲う事件が発生。犯人は病院から逃亡後、未だに逃走中。]

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