間話 誠司の修行の日々
「誠司、舌触りが悪いやり直し」
「はい、すいません」
今自分は料理長の元で大学の学食で働いている、実際こうして現場で働いていると、聞くとやるでは大違いと言うのを身を持って体感しているところだ
「誠司、この辺のグラス曇りが取れてない、掃除を疎かにするな、全部やり直せ!」
「はい、わかりました」
シェフ見習いとして自分に足りない部分を容赦なく指摘され凹まされる事もある
「シェフって誠司君の事目の敵にし過ぎじゃないの?」
「でも言われてる事については至極当然だよ、まだ努力が足りないって事だよね」
元部長と共に日々修行の毎日である、それにシェフはただ怒ってるだけの人ではない
「うんま!」
「嘘でしょ! これが肉じゃがだって言うの!」
「美味いだろ、四国にある日の出食堂って所で87歳のおばあちゃんシェフから教えていただいたレシピだ」
「信じられない、これが肉じゃがって言うのなら僕が作ってた肉じゃがは一体?」
「ワハハ、俺も驚いたからな、学食あがったら教えてやる、よければな!」
「是非お願いします!」
シェフが当番の際に出される賄いが絶品なのである、全国を歩き回り彼が食べたなかでこれはって料理を再現、それを惜しげもなく教えて頂ける、俺にとってこの職場は天国でもあるのだ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「どうでしょう?」
今日は俺が賄いの日、俺は最近流行りのモツ鍋を俺なりにアレンジしてお出ししたのだが
「ふ〜、臭みが取れきれてない、客に出せるレベルじゃないな!」
「そんな、こんなに美味しいのにどうして?」
先輩が毎度の如く噛みつくが
「客に料理を出すって事を舐めるな! お金を頂く以上そこにやり残しがあっちゃならん」
「うっ」
いつもの如くダメ出しされ、それに対して先輩が噛み付くのが最近のお昼のスタンダードになりつつある
「若いって良いわね〜」
「あー私もあと10年若ければな〜」
ここに居る諸先輩方が温かい目で見つめている、こう見えて俺なんてまだ足元にも及ばない凄腕だ(決してオバさんと言ってはいけない)
「塩と水洗いで丁寧に下処理したんだな誠司?」
「はい、以前聞いたやり方で下処理しました」
「ふむ、モツはものによってそれでは足りない場合があるんだ、お前の舌なら若干の臭みに気づいた筈だぞ」
うっ、確かにほんの僅かだが臭みが取れてない気がしたのは確かだ
「ふむ、誠司モツの臭みがとりきれない場合は牛乳を使うんだ、これであらかたの臭みは抜ける」
成る程、そんな方法があったのか!
「次の賄いの際に同じ物を出してみろ、また採点してやる」
「はい、有り難うございます!」
俺が怒られても最後はいつも嬉しそうにしてるからか先輩も結局は納得してしまうのである
「もう、誠司君ったら」
「若いって良いわね〜」
「本当ね〜」
これが今の僕の最高の職場である。
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