第4話 16回参議院議員通常選挙

 1992年(平成4年)7月26日


『有り難うございます、有り難うございます、風間泰子、風間泰子でございます、政権与党のど真ん中から派閥政治のあり方を考えるを一点に戦って参ります、風間泰子、風間泰子です』


 ついに参議院議員通常選挙が始まった、泰子さんは信康さんの地盤をそのまま引き継ぐ形での選挙活動となる、なお今回の選挙地元の人の受けは抜群である、何故かと言うと選挙公約の際におこなったTVでの発言が大受けし大人気となったのだ


「私は元々政治に関してはズブの素人ですが、主人の仇討ちのつもりで望むつもりです、主人を守らなかった今の派閥政治に対し喝を入れるつもりで挑みます」


 この発言がTVで取り上げられ大ヒット、世の奥様方からの声援を一身に受けての選挙と相なった訳だ。


「いや〜、想像の倍以上の人気になってるな〜」


「そんな呑気に構えて貰っては困るよ、選挙はまず勝ってこそだ」


 選挙期間中、本家の書斎にて信康さんと2人でお茶を飲みながら今回の選挙について語り合う、あの時驚いてた泰子さんの狼狽振りを思い出す。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「わ、私が選挙に出るですって!?」


 狼狽し混乱する泰子さんに対し、俺は頷きを返す事で同意する


「はい、信康さんが引退する以上誰かが地盤を引き継ぎ選挙で戦わないといけません、消去法でいけば泰子さん貴方しかいません」


「そんな、私は政治に関してはズブの素人ですよ、そ、それに家の本家のやり取りもあります」


「役割の交代ですよ、今後本家の事は信康さんに、政治の事は泰子さんにという形に」


 俺の回答に混乱しながらも尚否定的な意見を述べる泰子さん


「そ、それなら史泰こそ後を継ぐべきでしょう?」


「史泰さんには大変失礼な言い方になりますが、史泰さんで選挙に勝てますか?」


 苦笑しつつ史泰さん自身が答える


「無理だよ、碌に世間で揉まれてもいない僕が、ただでさえ父が汚職で職を辞した後っていう状況で2世議員として臨むなんて」


 おや意外と状況を理解してるんだな


「しかし……」


 尚も言い募る泰子さんに対し


「泰子聞きなさい、私は私が思うように政治に対して真摯に臨んできたつもりだ、それでも日本の政治を変える事は出来なかった、そんな私の後追いをする必要はない、君は私の変わりではなく君自身で思うようにやってみるといい、何、私も本家の仕事については素人だ、お互いに意見交換しながらやっていけばいいさ!」


 信康さんの説得でようやく折れたのか


「わかりました、私なりに思う事はあります、私のやり方でいいのなら私なりに政治に挑んで行こうと思います、ただし一つ条件が、史泰を私の秘書としてつけさせてください、今までサボってた分こき使ってやりますので」


「うえ〜〜」


「ククク、それで良かろう、史泰母さんのサポートしっかりな!」


 どうやら本家の方向性は決まったようだ


「しかし何を持って挑むか? ですか、私は主人を見捨てた派閥に物申したいだけなのですが」


「いいじゃないですかそれで、主人を見捨てた仇討ちに与党の立場から派閥政治をぶっ壊す、これでいきましょう!」


 例のライオン首相のやり方を前借りさせて貰おう


「「「えーー!!」」」



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 幾分マイルドにはなったが、派閥政治に物申すと言う形で望んだ泰子さんの今回の参院選は、予想以上の効果をあげ現在ダントツの1番人気として選挙に挑んでいる


「まあこのままトップ当選すれば泰子さんも動きやすくなりますよ」


「だと良いのだがね〜」


 結局想像以上の人気振りで泰子さんは地元の参院選においてダントツのトップ当選を果たす、しかし魑魅魍魎蠢く政治の世界、その後もあれこれ騒動を巻き起こしながら泰子さんは政治の世界に挑む事になるのであるが……


「大輔、従兄弟の俺の願いを聞いてくれよ、母さんが大変なんだって!」


「大輔君、今度の政治倫理審査会でこういうやり方で進めたいのだけど、」


「大輔!」 「大輔君!」


 え〜い! お前ら親子はアレか? 信康さんを含めて俺に何か恨みでもあるのか?


 毎度かかって来る相談電話に嫌気がさし始める俺であった。

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