第二十七話 咬ませ犬達の宴
最初バンド名に『underdog』って付けたのは言葉の響きが何となく気に入ったからだ
和訳なんて全然知らなかった、その後の私達はこの名前に随分苦しめられる事になる
クラブに立っても大抵は前座のコミックバンドの様な扱い、咬ませ犬風情には丁度良いって言われた事も1度や2度じゃなかった
最初の頃は本当に実力もなかったから仕方ない、いつか見返してやると思いがむしゃらにやってきた
でも、ある程度腕が上がってきても結果何も変わる事はなかった、1番苦しんだのはミーコだろう
自分が作る曲が何も響かない所為だ、と落ち込むのを見るのが辛かった
1年経ち、2年が過ぎ、そろそろバンドをたたむ時期かも知れないと皆が考えだした頃に転機が訪れる
姉貴の子供の大輔が、実は未来の記憶持ちだと聞いたんだ、どうもそれが事実っぽいので色々と話を聞いてたんだが
その時、自分の中で突然天啓のようなものが閃いたんだ、未来の曲を演ってみたい!って
説得するのには苦労したが、その場は姉貴の助けもあり、無事大輔から教えて貰えることに成功したんだけど
直後、私が口を挟む間も無くあれよあれよと言う間に大輔が曲をプロデュースする流れに
姉貴の会社でスポンサーもやってくれるらしい、ここまで決まるのに1分も掛からなかった
その後2人と分かれた私は、件の内容を説明する為メンバーと話し合いに、昴の奴がミーコを気遣ったのか1番反発が強かった
逆にミーコの方は不思議なほど機嫌が良く、一度どうして私や大輔に反発しないんだ? と聞いたんだが自分に足りない物を大輔が補ってくれるのが嬉しいらしい
ケイと環の2人は、最初から大輔に不満がなかったようだった、私の甥だから問題ないだろうと思ったそうだ
その後も色々紆余曲折有ったが、曲のほうが完成し、皆も腕を上げ自信がついたようだ、ここからだ私達の反撃が始まる。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
数日後、自分達はいつもの場末のクラブの前座に呼び出され演奏する事になった、今はミーティングの最中
「ようやく本当の意味で自分達の舞台に立てるな」
「長かったな〜」
「苦しかった」
「もう2度と思い出したくもない」
コクコク
「私達はここから始めるんだ、ならば教わったアレをやるぞ、全員傾聴!」
全員がこちらを向き姿勢を正す
「私達アンダードッグはようやく自分達の牙を手に入れた」
「「「「Yes ma’amーーーー!!」」」」
「まだあんな奴らに咬まれたままでいいのか?」
「「「「No ma’amーーーー!!」」」」
「また舞台の上で俯いたたままか?」
「「「「No ma’amーーーー!!」」」」
「ならば咬み返せ、ここは自分達のナワバリとなる、雌犬共我らが宴の時間だ」
「「「「YAーーHAーーーー!!」」」」
こうして私達は本当の意味で自分達のステージへと上がった。
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