第48話 第三の関門 菊花賞
「-10kgはちょっとな〜」
「馬体重減りすぎだわ」
「こりゃあテイオー切るか?」
パドックは大きな騒めきに包まれています、恐らく全国のお茶の間も似たような騒ぎになってるだろうな〜
『解説の大河原さん、テイオーのこの−10kgをご覧になられまして如何ですか?』
『確かに腹回りは若干細く映りますが、この馬の良い所は走る気があれば何処までも伸びる所だからね、毛艶は悪くないし気合いも乗っているので状態は悪いとは思えませんね〜、勝負になると思いますよ』
ラジオから解説者の声が聞こえる、流石競馬の神様大河原氏だ良い目をしているぜ
「とま〜れ〜」
騎乗の合図だ、うん日原騎手が乗った事でより気合いが入ったみたいだ、これならあの作戦がハマれば勝てる!
「さあ本馬場入場の時間だ、戻るぞ小次郎!」
「わかった行こう兄貴」
「戻りましょう!」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
返し馬を終えたカザマテイオーは、ゲート前で周回を重ねている
18頭全ての馬が落ち着いている、目下のライバルはダービーでも争ったレオターバンか、騎手は言わずと知れた名ジョッキー、ルドルフの騎手だった岡場ジョッキーだ、ダービーの時に現時点での完成度はルドルフより上かも知れないと褒めて貰ったよ
さあスターターが準備を終える、いよいよ菊花賞の発送だ!
『18頭全て枠内に収まりました、体制完了スタートしました、おっと一頭出足が付かず遅れました、ああカザマテイオーです、スタート遅れました最後方からの競馬となってしまった、場内からは悲鳴があがります』
「何やってるんだ日原〜!」
「よし、コレでテイオーは消えたわ」
場内から怒号の嵐が聞こえるが、俺は平然としていた
「?! あ、兄貴〜!」
「キャ〜、テイオーちゃんが〜!」
「狼狽えるな2人共、これは作戦通りだ」
「どういう事だよ、兄貴?」
テイオーに3000mの距離を持たせる為には経済コースを走らさなければならない、その為には1番前か後ろかを選ぶ必要があった、俺と日原騎手はテイオーの瞬発力に賭け後ろからの競馬をあえて選んだのだ、その事を小次郎達に説明する
「でも内側が開かなきゃ前に出れないよ?」
「菊花賞、京都の芝3000mだからこそ使えるマジックがあるんだ、よく見てろよ小次郎」
『さあ中盤残り1200mを超えた所、現在先頭はフジマケンザン、その外を回っていい位置につけてるのがレオターバンです、カザマテイオーはまだ最後方ここから届くのか?』
未だ最後方に居るカザマテイオーに場内からは悲鳴が上がる展開
『さあ第3コーナーを迎え先頭はフジマケンザン、外からレオターバンが徐々に進出していきます、後方からナリスネイチャとイブキマイカクラが捲っていく、テイオーはまだ最後方のまま、ここから届くのか?』
場内から「日原金返せ」の阿鼻叫喚が聞こえる中
「兄貴〜」
「ここだ小次郎よく見ておけよ」
『第4コーナーを回り直線、レオターバンが先頭に立った、外からイブキマイカクラとナリスネイチャが突っ込んでくる、カザマテイオーは馬群の中か、レオターバン先頭、残り300mを切った、カザマテイオーは来ないのか、ああ〜ここで際内から青い帽子カザマテイオーが伸びて来た、凄い足だ直線一気にレオターバンに並びかける』
「見たぞ兄貴、あそこが空いてるから狙ってたんだな?」
そう菊花賞の京都芝外回り3000mというコースの特徴として最後の直線の前に内回りコースの合流地点が存在していてそこがポケットのように空いているのだ
しかも第4コーナーが下り坂でスピードで振られて内側が開きやすいという状況でもあった為、第四コーナーでスピードを落とし限界まで内側に位置を取っていたテイオーは直線前のポケットを利用し最内を強襲、そこから異次元の末脚で伸びてきたのだ
『残り200mここでレオターバンを交わしカザマテイオーが先頭に立った、カザマテイオーが先頭、レオターバン必死に喰らいつく、外からイブキマイカクラがやってくるがコレは届かない、カザマテイオーが先頭、カザマテイオーが先頭、ルドルフ以来の3冠馬へ、カザマテイオーが今1着でゴールイン』
「うぉっしゃ〜〜!」
「うわーーーー!」
「やりました〜〜!」
競馬組全員が絶叫します、周囲の馬主達も苦笑しつつ俺達と握手を交わしていきます
『さあゴール前ストレッチにカザマテイオーが戻ってきました、そして日原騎手が今3本の指を天に掲げます、ああ、あの日原が泣いている!』
場内から「ヒバラ! ヒバラ! ヒバラ!」の大合唱、歓声が鳴り止みません
俺達は急いでウィーナーズサークルへと向かいます
「オーナーおめでとうございます!」
「ありがとう大谷さん!」
感極まった俺達は互いに歩み寄り抱きしめあいます、巨人に捕まったコロボックルの気分です
「日原さんもありがとうございました」
「いやこちらこそ、テイオーを任せて頂いて感無量です、お礼を言いたいのはこっちですよ」
俺はテイオーの鼻面を撫でながら
「本当によくやってくれたな、この後は腹一杯喰って良いからな?」
【本当? 頼むよ〜】ってテイオーの顔を見ながら撫でていると
「テイオー、よく頑張ったね〜」
小次郎達がやって来たのでその場を譲る、さあ口取り式だ、無敗での三冠を達成した時に口取り式に出る為今まで我慢して来たからな
そして俺は史実を乗り越える夢を叶え、無敗の3冠馬カザマテイオーのオーナーとして口取り式を迎えたのであった、最高の気分だ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます