第44話 学園祭にて
「プログラムNo.5番 バンド演奏 ブラックバード 曲名はGet mild」
本日は我が校の学園祭、現在舞台上では有志のバンドによる演奏が繰り広げられておりますが、これまでの流れはよろしくない模様、格好は凄い気合い入ってるんだけどね!
周りは聞いてるんだかいないんだかって感じ
わかる、わかるよ、文化祭での演奏なんて普通こんなもんだ、彼等が努力して練習してたのを見ていた俺は一生懸命応援するも残念な結果に、落ち込んで戻ってくる彼等に
「練習よりは上手くいったじゃね〜の、まあトリは俺に任せとけ」
「けっ、その格好で失敗して恥晒すなよ大輔!」
苦笑する彼等だったが、少しは元気を取り戻したようだ
そう今俺は何故か髪型のセットを完璧にして燕尾服に身を包んでいる、最初はフォーマルかタキシードにしようとしたのだが悪ノリした美和子さんが特注で発注してしまったので断るにも断れずって感じでこうなったのだ
「大輔、ちゃんと撮影してるから頑張れよ! それはそれとして何でピアノ演奏なんて考えたの?」
誠司もか、花蓮にも言われたな、理由か……
俺が歴史を遡って来た際にやろうと思ってた事が幾つかあった、一つは知識を生かし投資で成り上がる事、一つは家族の不幸な未来を変える事、一つは競馬界の歴史を自分の手で塗り替える事、これ等は叶った。
残りのうちの一つに小さい事ではあるのだが学園祭という舞台で演奏してヒーローになりたいってのがあったのだ。
小さいと笑わば笑え、でも皆何処かで学祭の舞台でヒーローになった学友を羨ましいと思った事はないだろうか?
今回俺はその夢を叶える為に頑張ってみたのだ
最初はバンド組んでギターでジョニー・ビー・ゴットを弾こうかと思ったが健太達が忙しい為バンドを組めず断念、なら坂の上のアポロンのようにジャズピアノを演ろうかとも思ったが、これもドラマーを確保出来ず難度も高過ぎて諦めた
それでもピアノソロという方向性は決めたので未来の中からこれだ! と思った曲を2ヶ月の猛練習の末何とか間に合わせたのだ
「次がラストになります、プログラムNo.6番 風間大輔君によるオリジナル ピアノソロ 曲名はザナルガンドにて」
俺は舞台に上がったのだが、周囲は対して聞く気もないのか騒がしい、俺はマイクを握り地面にゴン、ゴンと周囲が静まり返るまで軽く叩きつける
何回か叩いてるとようやく周囲が静まり返る、そこで俺は一礼をしてようやくピアノへと向かう
静まり返った体育館内で俺は一言
「最後かもしれないだろ? だから全部話しておきたいんだ」
その言葉と共に俺は演奏を始める
♫〜♫〜♫〜♪〜 ♫〜♫〜♫〜♩〜
静まり返った体育館内に落ち着いた物悲しい旋律が流れる
『私、神を倒します!』
『そうだ神はジェイドだ!』
♫〜♫〜♪〜 ♫〜♫〜♩〜
俺は脳内で彼等の旅を思い出しながら更に演奏を続ける
『俺……俺ユウカに言っちゃったぞ、はやくザナルガンドに行こうって『神』を倒そうって、あいつの気持ち何も知らないでさ! なのに、なのに……あいつ……ユウカ笑ってた』
『一緒に行こうよ!』
『できないよ……できないんだよ……行けないよ』
『ユウカ……』
「!?」
♫〜♫〜♪〜 ♫〜♫〜♩〜
演奏は終盤に差し掛かる
『泣くぞ、すぐ泣くぞ、絶対泣くぞ、ほら泣くぞ』
『…大っ嫌いだ!』
『これでいいさ……もう お前達の時代だ!』
♫〜♫〜♪〜 ♫〜♫〜♩〜
『ザナルガンドに案内できなくてごめんな! じゃあ』
『愛しています』
♫〜♫〜♪〜 ♫〜♫〜♩〜
そして演奏は終わりを迎える
『いなくなった人達の事、時々でいいから……思い出して下さい』
〜♪〜
約2分半の演奏で俺は汗だくになりながらも終える事が出来た、俺は舞台で一礼して下がっていく
「パチパチパチ!」
1人の拍手が体育館に響き渡る、よく見ると花蓮だった、それをキッカケに体育館全体が拍手の渦に巻き込まれる
どうやら俺は学園祭のヒーローになる事が出来たようだ、満足気に舞台を降りるとそこには先程演奏したブラックバードや、舞台に立った他の連中が待っていた
「バチン!」
ブラックバードのリーダーが手を挙げて俺を迎えたので、俺達はハイタッチをして喜びをわかち合う
こうして俺の高校生活最後の学園祭は終わりを告げたのだった。
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