第43話 夏休み最後の過ごし方

「てな訳で永浜牧場は救う事が出来たって訳」


 北海道から帰って来て夏休みの最終日、俺はとあるレストランで語っていた、お相手は


「もう相変わらず大輔は無茶苦茶するわね」


 私の彼女であらせられます花蓮さんです


「でも出来れば私も一緒に行きたかったわ」


「仕方ないさ、アメリカ勉強になったろ?」


 そう彼女は俺の薦めで休みを利用してアメリカという本場で投資の実体験を受けて来たのだ。


「ええ流石本場ね、あらゆる意味で市場の規模が桁違いだったわ、それに向こうの投資家達の決断の速さと欲望の大きさも想像を超えていたわね、いい経験をさせて貰えたわ」


 そうだろうな、アメリカの投資規模は正に桁違い、今後日本との差は広がるばかりだしね


「なら送り出した甲斐があったってもんさ」


「だからって1億円の勉強代はやり過ぎよ、彼女だからと言ってポイポイ渡す普通?」


 そうアメリカに勉強に出す際にプレゼントとして資金を提供したのだが額が額なので驚いたみたい


「ははは、でもいい実戦になったでしょ? でどれくらい増やす事が出来た?」


「1月程度じゃ1000万増やすのが精々よ、大輔がおかしいの、ねえそろそろ秘密を話す気になった?」


 おっと藪蛇だった、花蓮が経済を本格的に勉強するうちに、俺の投資実績の異常性に気付き始めたのだ、それ以来事あるごとに俺に何か秘密があるのではと聞いてくるようになったのだ。


「隠すも何も、俺の天才的経済センスで立ち回っただけさ、いつも言ってるだろ? それよりも1月で10%増やしたのかい? ネクストの次期参報としても実践は十分だね!」


「もうとぼけないで、確かに大輔は投資のセンスはあると思うけど幾ら何でも出来過ぎよ、いつか聴き出してやるんだから!」


 プンプンする花蓮に対し苦笑しつつコーヒーを飲む、ここのコーヒーがまた旨いんだ


「所で話は変わるんだけど、向こうで古書の類に幾ら使った?」


「!? ななな、何の事かしら大輔氏?」


 挙動不審過ぎだろ、これは相当無駄遣いしたとみえる


「吐け、どうせ領収書でバレるんだから、ちゃんと記載しないと経費として落とさないからな!」


「そんな利益が全部吹っ飛んじゃうわ!」


「ブフっ! ゴホゴホ、1000万全部本に注ぎ込んじゃったのかよ!」


 幾ら何でも本だけで1000万は使い過ぎだ!


「ち、違うのよ、キャクストンの初稿をオークションにかけたサザビーが悪いの!」


 しかもたった1冊分の代金かよ! 頭が痛い


「はあ〜、君にあげた資金だから何に使おうと構わないけど、それでも無駄遣いには気をつけるように!」


 そう言うと正に花が咲き乱れるような笑顔で


「ありがとう大輔大好きよ! でも大輔がお金を稼ぐ理由が心底わかったわ、欲しい物を手に入れる為には資金がどうしたって必要なのよね、『石壁精舍音註唐書詳節』なんて後二桁必要と聞いて驚いたわ、もっと頑張らないと!」


 止めてください、10億超える古書なんて買おうとすんな! 俺この子の浪費に耐えられる気がしないんですけど……


 その後も彼女とあれこれやり取りをしていたら既に夕方近くになっていた


「そろそろお開きかしらね、楽しかったわ大輔」


「俺も楽しかったよ、そうそう今年の学祭よければ来てくれよ、良いものを見せるから」


「あら珍しい、学祭はメンドイから何もしたくないって人が」


「まあ高校生活最後の学祭だからね、偶には頑張るのも良いさ」


「ふ〜んで一体何をする気?」


「ピアノソロでも演奏しようかと」


「!?」

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