第42話 高校生活最後の夏休み 決着編

 翌日、昨日の暴力団系の連中が永浜牧場にやって来た


「やあやあ、本日は答えを聞きに参りましたわ……所でそちらの坊主は? お子様ですかな?」


「まあその様な物です」


「まあええですわ、それで答えを聞かせて貰いましょうか?」


「そうですね、ハッキリと断らせて頂きます!」


 榊さんがハッキリと断ると、色めき立った3人の連中が立ち上がるも


「やめぇ〜、座っとらんか!」


 上役の一言でそいつ等は座り直す


「頭の悪い方だ、タダでは済みませんよ?」


「それは脅迫と受け取ってよろしいですかな?」


 そいつは少しの間沈黙する、昨日今日で榊さんの態度が様変わりした事を不審に思ったらしい


「……昨日も申し上げたが、そこにいるお子さんもタダでは済みませんよ?」


 そいつの合図で手下の1人が俺の胸ぐらを掴み持ち上げる、よしこれで条件が整ったな


「勘違いしてる様ですが、私は榊さんの息子じゃありませんよ? それに」


 俺がパチン! とフィンガースナップをすると気配を消していた武道組が、瞬く間に3人の強面を制圧し拘束する


「正当防衛ですので悪しからず」


 唖然とした上役が口をぱくぱくしている


「申し遅れました、私が現在のカザマテイオーの実質的なオーナーになります、風間大輔と申します」


 俺が懐から名刺を取り出すとそいつは受け取った名刺を見て更に混乱する


「さてお話をしますか、カザマテイオーを誰かに譲るつもりは毛頭ありませんのでどうぞお引き取りを」


 俺が断った事でようやく正気を取り戻したのか、今更ながら威圧してくる


「ヤクザを舐めるなよ小僧、例え今は引くとしてもお前をずっと付け狙う事も出来るんだぞ!」


「ふう、まだ現状を認識していない様だ、健太〜録れてるよな?」


「あ〜、ばっちし!」


 そうここでも今度はビデオカメラで映像を録画していたのだ


「昨日の榊さんとの会話も録音してありますので証拠として提出します、今年成立した暴対法の案件としては十分でしょう貴方には十数年は臭い飯を食って頂きますよ」


 そいつは真っ青になり、下半身から力が抜けた様でヘナヘナと崩れ落ちる、それでも諦めずに減らず口を叩く


「た、例え俺が逮捕されても、組がお前を狙い続けるからな、お前に平穏な生活は戻らないぞ」


 そう言って狂った様に哄笑を続ける、やれやれやはりこの手を使う事になったか、俺は懐からとある物を抜き出す


「あっ、これですか? 今年でたムーブって言う携帯電話ですよ、凄い小さくなりましたよね〜」


 俺はある番号に電話して一言二言会話してそいつに電話を渡す、不審に思いながらもそいつが電話に出ると


「誰だお前、えっ! 若頭! なんですって破門! ちょっとカシラ待って下さい、カシラ、カシラ」


 既に電話は切られた様だ、呆然とするソイツに対し


「貴方の様な輩は力でしか納得出来ないのでしょうからそうさせて頂きました、オイこっちを見ろ! 真面目に生きている一般人を舐めるんじゃね〜ぞ、わかったかオイ!」


 そいつは絶望した様子でぴくりとも動かなかった


「大輔が一般人はね〜よな〜」


「ホント、ホント」


「ワシでも搦手で対処されたら辛いの〜」


「五月蝿いよ」


 榊さんも苦笑いをしている


 俺はまた携帯電話を取り出してある番号にかける


「すいませんでした、お手数をおかけしました」


『何今回はこちら側のやり過ぎだったからな、だが坊主ヤクザを舐めない事だ、やり過ぎれば庇い立てするつもりは無いぞ、覚えておけ』


「わかってますよ、あなた方の様な連中が居なくなる事は無いって事は、ただ自分に火の粉が降り掛かる様な事があった場合、貴方方を舐めてる訳では無いですが何度でも抵抗させて貰います」


『ブワッハッハ、オイ坊主こちら側に来ないか? いつでも言え、好待遇で迎えてやる!』


「冗談じゃありません! これで二度目ですよ、そちら側からの勧誘、お断りさせて頂きます!」


『ワッハッハ何だ他からも誘われてるのか? そっちよりも好条件つけちゃるからいつでも言え、じゃあの!』


 ふう、だから使いたく無い手だったんだがな〜、爺さんから神真会の会長にアポを取り、ここの若頭に話を通して貰ったのだ、まあこれで今回の件はなんとかなった、それでヨシとするさ


 その後牧場を脅してた連中は警察に連れて行かれようやく永浜牧場にも平穏が訪れた


「大輔君ありがとう、お陰で牧場もテイオーも無事に解決する事が出来た、感謝しているこの通り」


 榊さんが頭を下げる


「ちょ、ちょっと頭を下げるのはやめて下さいよ、テイオーを救うのは当然ですし、無事解決したのですからそれでいいじゃ無いですか、それよりも今日のバーベキュー楽しみにしてますからお願いしますよ」


「任せてくれ、腕によりをかけ最高の持て成しを約束するよ!」


 こうして永浜牧場に訪れた最大の危機を無事乗り越える事が出来たのだ



 翌日


「大輔助けてくれ、北海道の山奥でサバイバルなんて死んじまう!」


「さ、流石に人跡未踏の地でやるのは嘘ですわよね?」


「なんじゃだらしない、ワシ等の若い頃にはよくやったもんじゃ、なあ玉利君」


「懐かしいですな、毎日熊に遭遇して死にそうになりながら食べた熊鍋の美味しかった事と言ったら」


「大輔!」「大輔君!」


 俺は健太と早苗の悲鳴を聞きながらも合掌するしかなかった、2人共強く生きてくれ!

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