第26話 風間家本邸にて③

「なっ!!」


 さて開戦のゴングは鳴らした、ここからは伸るか反るかの大博打だ、美和子さんも言葉をなくして唖然としている


「泰子さん、貴女が風間家の歴史としきたりを大事にしてるのは知っています、だからと言って康二兄をレッテル張りして蔑むのは許せない、きっと由佳さんも同じ気持ちですよ」


 絶句して止まっていた泰子さんだったが、再起動を果たし反撃に転じる。


「大輔君、明治から続く風間家の歴史を馬鹿にしないで! この家を守る為に連綿と受け継がれて来た風間の先人達の努力を無為にする行為は見過ごせないわ」


「風間家が初代の成した成功を守り続けた努力は認めます、だからと言ってその地位に胡座をかき人様を下に見てこき下ろすのは違うと言っているんです」


 その後も喧々轟々、大体1時間は話続けただろうか、美和子さんは完全に俺と泰子さんを見守る体勢のようだ


「はぁ、はぁ、大輔君、世の中貴方が思ってる程甘くはないの、勘当された後困った時に家を頼れないとなった時に由佳がどうなると思うの?」


 来た、この流れになるのを待っていたのだ、俺は足を組み替え体勢を整える


「それこそ余計な心配ですよ、彼女の現在の資産はゆうに億を超えます、管理してるネクストの担当者の発言です、申し遅れました、わたくしネクストで投資アドバイザー(仮)を担当してる風間大輔と申します」


 俺から名刺を受け取った泰子さんは訳が分からず混乱している、美和子さんが説明がいると思ったのだろう会話に交じる。


「姉さん、私がそれまで勤めていた会社を辞め新たに起業したのは伝えたでしょう? 立ち上げたのは私だけど発案者は大輔君なの、それが(株)ネクスト、投資コンサルタント会社なの来年から一部上場の予定よ」


 驚愕して絶句する泰子さん


「という訳でして、今後由佳さんがお金に関して苦労する事はないと思いますよ?」


「で、でも好景気の世の中なら安心かもしれないけど、いつまでも景気が良いとは限らないわ、いざ不景気になったらどうすると言うの?」


 はいそのセリフを待っていたんですよ、俺はニコッと笑って


「まさにその通りだと思います、我がネクストでは日本の好景気は今年が頂点と見て来年以降緩やかながら日本の景気は崩壊すると読んでます、その為現在資産運用のポートフォリオを見直し、やがて来る未曾有の不景気に向けて対応してる訳でして」


 俺は鞄からネクストのパンフレットを持ち出し営業を始める、唖然としながらもそれに目を通してる泰子さんに説明をしてる俺を見かねたのか美和子さんが俺の頭をどつき話を戻す


「そういう事じゃないでしょ大輔君!」


 泰子さんもパンフレットに集中してたのだが、ハッと思い出したかのように元に戻る


「そ、そうです、実家に頼れないのは大変という話よ」


「え〜、でも実際由佳さんが資金的に実家を頼る事はもうないと言う説明は出来たと思うし、だから由佳さんは勘当されても平然としている訳だし」


 混乱する泰子さんにトドメを刺すか


「以上の事から、康二兄に対する侮辱を訂正しないと由佳さんは引き下がりませんよ、俺も先の発言を訂正するつもりは無いです、風間家を守ってきた泰子さんに言うのも酷でしょうが……」


 俺はしっかりと泰子さんを見つめて


「初代の山師の、風間の血を舐めない事です!」

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