第21話 夏の余韻


「ちょっと待ってよ由佳さん、解散ってどういう事だよ」


 俺達はライブの後、楽屋で由佳さん達に話しを聞く事にした、早速問い詰めるだって早過ぎるだろ、成功して今からってとこじゃないか?


「なあ大輔、私達の最初の目標はなんだったか覚えてるよな?」


「一度でいいから華やかな舞台に立ちたいだよね、でも今からもっと大きな舞台に立てるかもしれないじゃないか、勿体無いし、早すぎるよ!」


 俺の言葉を聞きメンバーは嬉しそうに微笑む。


「ステージでも言った通り願いは叶ったさ、日本で最高の舞台でな、それに芸能界ってとこは思ってたよりか肌が合わなくてな」


 メンバーがうんうん頷く、そういえば昴さんが喰われかけたとか言ってたっけ、嫌な事も沢山あったんだろうな


「という訳でメンバー全員が新たなステージに立つ事に決めたのさ、なあ大輔、歓迎してくれないか?」


「ずるいよ、由佳さん、そんな事言われたら歓迎するしかないじゃないか」


 メンバー全員に揉みくちゃにされながら俺は納得するしかなかった。


 その後、打ち上げに皆で参加する予定だったのだが、流石にそのまま解散でとはいかず、アンダードッグは記者会見だの色々あってその日は合流する事は出来なかった


 武道館の外に出るとファン達皆が落ち込んで体育座りしていて1人が泣きながら


「これはいい事! これはいい事!」


 と叫んでいたが、よく見るとそれはマサさんだった、何やってるんだよマサさん!



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 最初の1週間は本当に大騒ぎだった、人気絶頂のバンドのまさかの解散騒動でTVでも記者会見中継を流したし、ワイドショーでも取り扱かうしで日本中の話題の的だった、一時週刊誌等でメンバー不仲説とかも流れてたりしてたが、理由を知ってる俺からしたらなんだかな〜って感じだったよ


 そうしてあれから2ヶ月経ち周囲もようやく落ち着いて、今日はメンバーの新たな門出の為、皆で集まったのだ


「昴さん達はマジで行くんだね」


「おおよ、あの時出来なかった北回りを完遂しないと納得できないからな!」


「ケイさん、昴さんと師匠を頼みます」


「そうねケイがいるなら安心だわ」


「うっせ〜ぞ環、来年大学受験落ちたら笑ってやるからな」


 昴さん、ケイさん、師匠の3人は、あの時南回りしかできなかった日本一周バンド巡りの旅を完遂する為、旅立つ事にしたのだ


 まあ今回はバンドではなくストリートで変装して演るみたいだ、流石に有名になりすぎたしな


 環さんは来年大学受験する為に今から猛勉強との事、最後に集まったメンバーに由佳さんから


「みんな、解散したけど私達がアンダードッグだった事に変わりはねえ、日本中どこにいたって一声掛けりゃあ駆けつける、それを忘れんなよ!」


「「「「はい!」」」」


「じゃあ最後にアレをやるか、全員傾聴!!」


「「「「Yes ma’amーーーー!!」」」」


「全員成長したな、ここに負け犬なんてもういね〜」


「「「「Yes ma’amーーーー!!」」」」


「夢は叶えた、ではここで私達は終わりか?」


「「「「No ma’amーーーー!!」」」」


「そうだよな、今度は新たな夢に向かって立ち上がる時だ、ならば噛み返せ、アンダードッグ新たな宴の時間だ!」


「「「「YAーーHAーーーー!!」」」」


 こうしてアンダードッグは新たな門出を迎えたのだった




「ところで由佳さんはどうすんの?」


「ああ、前の事務所でメークアップの仕事を手伝わないかと言われてる」


 なるほど前世の様にその道を進むのかな?


「へ〜良かったじゃん」


「だが断った、別にやりたい事を見つけたからな」


 え? どういう事? すると由佳さんは左手の薬指を掲げた


「あ〜やっぱり!」


 早苗や他の女性陣がきゃーきゃー喜び由佳さんの周囲で盛り上がる


「1番なりたかったお嫁さんになる事にしたよ!」


「!?」

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