第五章　蠢く闇の胎動

　大輔です、8月に入り夏本番って感じですね

　学校は夏休み真っ只中ですが、今日はネクストの事務所にお邪魔しています、ここで少しネクストの事について触れてみますか

　現在ネクストでは販路の拡大が続き、今年中に年商3億超えも見えてきたとの事で、社員全員がフル回転状態です

　売り上げの急拡大の影響も問題なく、資金繰りの改善も進み事業は安定

今は再度人員の増加も含めた対応を検討中との事

「人員の確保は必須事項よ、今はまだ上手く回っている物の今後更なる顧客の拡大に対処仕切れないわ」

「現在人員の増員についてはある程度目処が付いてます、今年中に10人の増員を確保予定です」

　事務所は鉄火場の様相を呈しており、迂闊に声をかけづらい状況ですが、美和子さんが気付いて俺を呼んでます

「大輔君、事務所まで来て何かあったの？」

　ネクストの投資アドバイザーである俺だが事務所まで来るのは稀なのである

「忙しいんなら、出直すけど？」

「いいのよ、ピークは過ぎた事だし丁度いいわ皆休憩しましょ」

　皆仕事を一先ず中断してお茶の時間にする事に

「で？　何かあったの？」

「うんちょっと、実はアメリカのFRB議長が交代になったらしくてね」

「それがどうしたっていうんだい？」

悠子さんは興味深げに俺の意見を聞いている

「スタンスが結構真逆の人と交代した様でね、アメリカの今後の対応次第で厄介な事になりそうなんだ」

　これ、実は交代そのものに影響はなかったらしいんだけど10月に向けての説得に利用させてもらう事にしたのだ

「アメリカの双子の赤字について知ってる人はいる？」

「確か財政赤字と貿易赤字のW赤字ですよね？」

真理子さんはよく勉強してる様だ

「そうその影響で今ドル安が進んでいるんだけど、このまま進むと大変な事態に陥るとアメリカの経済学者の先生が言ってるらしくてね、向こうで多少騒ぎになってるみたい」

　そうドル安によるインフレ懸念と10/15に中東でとある事件が勃発する事で誘発され引き金が引かれるのだ

「まだ確かな事はわからないけど、今年中に何かが起きても不思議じゃないんだ、顧客には早めに、出来れば10月までには一度手仕舞いするか実物資産に切り替える事を提案して欲しい」

「大輔君はそこまで逼迫してると見てるのね？」

美和子さんが後押ししてくれる正直ありがたい

「うんアメリカだけじゃない世界規模で影響が出ると思う」

「わかったわ、大輔君を信じる、皆至急顧客への連絡を急いで9月が終わるまでに対応を済ませるわよ」

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