第6話 パンデミック世界

「少し気になることがあるんですが」

 と、配達員がおもむろに話始めた。

 その様子を見て、刑事たちは、一様にその時、各々やっていた作業を、少し止めたのだった。きっとそれは、

「第一発見者として、何かを思い出したからではないか?」

 と思ったからであろう。

 しかし、配達員本人は、

「もし、そうだったのだとすれば、気になるなんて表現はしない。ちゃんと思い出したと表現するさ」

 と感じたのだが、さすがに、この時の緊迫した状況で、そのことを口にできるわけもなかったのだ。

 それを考えると、まわりに対して考えてしまう落胆した態度は、

「こちらを見下すような表情や態度になるに違いない」

 と思ったのだ。

 少し話しにくい中で、時計の話をしたのだった。

 案の定、まわりの連中は、

「なんじゃ、そりゃ」

 という愛想が尽きたとでも言いたげな顔に、今度は却って、

「こいつらの方が程度は低いのかも知れないな」

 と感じた。

 本当は違うのだと思いたいが、ほとんどの犯罪者というと、

「自分の理屈で勝手な犯行を犯した」

 であったり。

「何かをしないとどうにもならない精神的に追い込まれた状態になり、犯罪を犯した時には、情緒が不安定だった」

 というような連中ばかりを相手にしていることで、自分たちもそんな連中に、知らず知らずに気持ちを合わせることで、自分たちまで程度の低い世界にいざなわれてしまっていることに気づいていないのだろう。

 それも、毎日のようにである。

 最初こそ、意地になって、

「染まってはいけない」

 と思っていたとしても、気が付けば、どうしようもなくなってしまうのではないだろうか。

 それを思うと、今のこの状況は、自分がら飛び込んだとはいえ。あまりいいことではないと思えてならないのだ。

「だけど、俺たちにはそんな音は聞こえないけどな」

 と、最初は何があったのか? とばかりに顔を見合わせていたが、まるでアイコンタクトができたかのように、一人がいった。

 いくらアイコンタクトであったとはいえ、実際に他の人に聞いたわけでもないのに、

「俺たちには」

 という言葉はあまりにも強引だといえるのではないだろうか。

 そして、しかも、まわりもそのことに一言も反論がないということは、分かっていたことではあったが、

「まさか、たった一人の意見を、全員の意見とまでするようなことになるなど、思ってもみなかった」

 というのと同じではないだろうか?

 そう、

「自分たちには、聞こえなかった」

 ということなのであろうが、せめて、聴いてほしかったという思いが強く、それは逆に、

「聞こえたお前がおかしいんだ」

 ということが決まっているかのように思えてならないのだった。

「警察というところは、どうしても、決めつけてしまうという、そんな人種に違いないんだろうな」

 と思えてならなかった。

「君はいくつ何だい?」

 と聞かれ、

「40歳前半ですけど」

 というと、

「なるほど、腕時計や、柱時計などが、古い家ではまだ普通にあった頃に育ったという感じかな?」

 といってきた。

 それは明らかに、

「年代差別」

 のように思えた。

 本人はそのつもりはなくとも、そう聞こえるのだった。

 ただ、

「警察というところは、しょせん、そういうところで、空気が読めないのは、犯罪者を相手にしなければいけないということで、しょうがないのかも知れない」

 と、完全に、

「警察あるある」

 という感覚になっていると思うのだった。

 その証拠に、取り調べなど、テレビドラマで見た時は、

「あんなのって、どうせテレビの演出でしかないよな」

 と、取り調べシーンで、容疑者、あるいは、重要参考人に対して、恫喝しているシーンは、

「フィクションであったり、演出なんだろうな」

 と思っていたが、どうも、そうでもないようだ。

 あくまでも人から聞いた話なので、信憑性はなかったが、

「いやいや、警察も白状させようとするのか、結構こっちがグサッとくるような言い方をしてきて、下手をすれば、こちらを挑発してきたりするものだよ」

 といっていたのを思い出した。

 だが、今回の、自分はただの第一発見者だというだけなのに、どうもあの高飛車な態度を見ていると、

「あの時の話は、まんざらウソというわけでもないな」

 と思えてくるのだった。

 実際に、そんなことを考えていると、警察が自分に何を聞きたいのかということを探ってみたくなった。

「まさかとは思うが、疑われたりはしていないよな」

 と感じたりもした。

 正直、いくら、

「第一発見者を疑え」

 とは、昔からミステリーなどの鉄則で言われてはいるが、本当にいきなり第一発見者を怪しいなどと思っているとすれば、それこそ、

「推理小説の読みすぎでは?」

 ということになる。

 昔の、学校の先生など、熱血先生などが多かったのも、

「テレビの熱血青春ドラマの見過ぎではないか」

 と言われていた時代があったではないか。

「熱血先生と呼ばれる人が恰好いい」

 という時代は、今は通用しない。

 先生が生徒を怖がる時代になり、生徒も苛めの問題が出てきても、

「先生は信用できない」

 ということだ。

 子供の頃に熱血先生のドラマを見て、その憧れから、先生になろうとしようとしても、

「もう時代はまったく違ってしまっていて、カルチャーショックどころの話ではない」

 ということになる。

 あれだけ、憧れてずっと勉強して、教師免許を取っても、出てきてみると、まったく違う時代が広がっていた。もっというと、

「自分の知らない時代。いわゆる、パラレルワールドに落ち込んでしまったのではないか?」

 という錯覚に陥ったといってもいいのではないだろうか?

 それを考えると、

「世の中というのは、思い込みで突っ走るのは、恐ろしい」

 と感じるのであった。

 刑事の聞き取りも、昔見た刑事ドラマの熱血性など一切なく、

「ただの役所仕事」

 を、こなしているだけではないか?

 と思うのだった。

 もっとも、最近では、世界的なパンデミックのせいで、どうしても、人流を抑制する政策がとられたり、

「ソーシャルディスタンス」

 などという、聞き慣れない言葉のせいで、行動範囲が抑制されることが多くなった。

 特に深夜の時間帯に人がウロウロすることがなくなり、さすがに最初の、

「緊急事態宣言」

 のように、

「必要最低限の店以外は、基本休業」

 というようなことはなくなったが、

「時短営業」

 を余儀なくされることで、夜の商売は、ほとんど成り立たなくなった。

 夜の8時や、9時に閉店ということであれば、8時や9時から本格的に客が入ってくる、いわゆる、

「水商売」

 などと言われるお店は、

「休業するしかない」

 ということになる。

 水商売関係は、

「開店時間を繰り上げる」

 ということで、その分、客が来てくれるわけではない。

 店によっては、

「夕食をどこかで食べた後の飲み事として利用するのだから、当然、利用時間は、いつもの混んでくる時間からになる」

 ということである。

 さらに、本当に蔓延している時期は、

「緊急事態宣言で人流を抑えても、なかなか感染爆発は抑えられない」

 ということで、医療が追いつかない事態に追い込まれるようになっていった。

「医療崩壊」

 などという言葉が叫ばれ、政府や自治体は、自分たち可愛さから、その言葉は口にしんないが、実際には、医療崩壊が起きていた。

「本来なら、入院を余儀なくされるべき人が、入院できず、ホテルなどで監禁生活、あるいは、自宅での自粛隔離などによって、患者の9割以上が、自宅待機などという、とんでもない状態になっていた」

 と言われるような異常事態であった。

 しかも、

「今回の伝染病は、それまで、軽症でも、いきなり急変することがある」

 と言われるような状態になったりしていた。

 それにより、

「急変したので、救急車を呼ぶ」

 ということで、救急車が来てくれたとしても、今度は、

「受け入れ病院がない」

 ということになる。

 そのため、救急車で応急手当は受けられるが、救急隊員は必死に病院を探すが、どこもない。その結果、

「患者は救急車の中で応急手当をうけながら、亡くなってしまう」

 という悲劇が繰り返されるのであった。

 確かに可哀そうであるが、元々は、

「こんな伝伝染病など怖くない」

 あるいは、

「風邪と一緒だ」

 などといって、伝染病を舐めて、マスクもしなかったり、距離も取らずに大声で叫んだりしているやつらが、病気を広めるのだ。

 しかも、そんな連中というのは、若年者に多く、やつらは、政府の、

「若年層は重症化しにくい」

 という、都合のいいところだけを切り取って、

「じゃあ、別にいいじゃあいか」

 と勝手に考えるのだ。

 しかし、家には、親や、祖母祖父などと言った、高齢者もいる人もいるだろう。それを考えずに、表で観戦してきたものを、家庭内感染させるという、

「これ以上の親不孝はない」

 という行動にでることになるのだ。

 つまりは、

「自分たちさえよければいい」

 ということになる。

 これはワクチンに対しても同じことがいえる。

 政府は、

「ワクチン接種は、共生で会ない」

 と言いながら、

「自分と大切な人を守るために、接種をお願いします」

 といっているのに、一部のワクチン反対論者の、

「副反応があり、後遺症が残る」

 と言われてるが、それにまんまと載せられたというのか、

「自分たちに都合のいい解釈をして、切り取りで解釈をした」

 と言えばいいのか、自分勝手な判断で、

「ワクチン接種をしない」

 という若者が増えているということである。

 これも、マスゴミにおいての、

「若者は重症化しない」

 という報道への切り取りがそういう問題を引き起こしてしまう。

 マスゴミも、別にそこだけを問題にしているわけではなく、実は。

「一度感染した人は、軽症であっても、その後遺症に、長い間苦しめられる」

 という報道もしているのに、そこは気にしないのだ。

 だからと言って、

「マスゴミが悪くない」

 などということはない。

 切り取りされるような報道をしているのも悪いのだ。

「若者は重症化しない」

 という言葉だけが、独り歩きをするということは、皆が皆そこだけを強調しているということで、そう思わせるような報道を、どこのマスゴミもやっているということだ。

 これでは、信じてもらえないのも、当たり前のことである。

 しょせん、マスゴミも商売でやっているのであって、報道という企業理念も、利益がなければ、貫けるわけもなく、

「利益重視」

 という観点から、どうしても、印象に残る報道を前面に出すのは仕方のないことなのかも知れないが、国民の生命を危機にさらすのであれば、

「その罪は、果てしなく重い」

 と言われても仕方のないことであろう。

 そんな利益と、理念の狭間で、結果国民を間違った方にミスリードするのであれば、今回のパンデミックが、

「人災の要素がある」

 というのであれば、その責任の大部分は、マスゴミにあるであろう。

 それだけ、人心を煽るということが、大きな罪になるのかということを、大東亜戦争前からの歴史を真摯にとらえて、いい加減学習してもいいのではないだろうか?

 もっとも、一番悪いのは、そんなマスゴミに感化されたか、マスゴミのように、

「切り取って、自分勝手に判断する」

 ということである。

 マスゴミの場合は、ある程度取材などを重ねて、

「分かったうえでの行動」

 ということなので、本当は、確信犯という意味でもその罪は深いのだが、国民の中の一部の不心得者は、

「ちゃんと勉強もせず、ない知識で勝手に切り取るのであるから、その罪の重さのひどさは、一目瞭然だ」

 といってもいいだろう。

 そんな世の中になってしまい、蔓延は、何度も、

「感染爆発という波」

 を繰り返しながら、日本という国は、落としどころがうまくいかず。いまだに感染爆発を繰り返すという情けない国になっていたのだ。

 他の国などでは、政府が主導し、大統領や首相の権力で、何らかの形で、国民を導き、患者が減り、経済復興に向かっているというのに、この国は、そこまでのリーダーシップを発揮できるリーダーがいないのだ。

 いるとすれば、

「国民をないがしろにして、自分の支持率のことだけを考え、国税を、他国に垂れ流しているような無能なソーリだけである」

 と言えるだろう。

 本来であれば、

「今は、パンデミックや異常気象、さらには、物価上昇によって苦しんでいる人が国内にはたくさんいる」

 というものだ。

 その人たちを無視して、自分の海外での人気取りというだけのために、血税をばら撒くということは、

「国民を完全に無視して、舐めている」

 と思われても仕方がないだろう。

 そのことにやっと最近は国民も気づいたのか、最近になって、やっと支持率が下降線を描き、最近になって、

「不支持が支持を上回った」

 というところまで来ていたのだ。

 それでも、この期に及んで、そんなソーリの不人気の理由を、いろいろな情勢と結びつけて、

「気の毒な面もある」

 などといって、擁護の姿勢を見せている、バカなコメンテイターもいたりする。

 そもそも、最近の、

「昼のワイドショー」

 というのは、どうなっているというのか、出てくるのは、

「芸人ばかり」

 という状況ではないか?

 しかも、真摯に振る舞っているMCだって、よく見れば、芸人に他ならない。

 いくら、真摯にコメントしていたとしても、ちゃんと自分たちで取材をして持ってきた情報に基づいているわけではない。

 マスゴミや、大学の先生などであえば、取材もできるだろうが、いくら、情報番組に出ているからといって、放送局が企画したわけでもない取材を、芸人個人でできるはずもないというわけだ。

 視聴率アップを見込んでの芸人を扱っているということなのか、それとも、他に理由があるのか分からないが、少なくとも、自分が取材してきたわけでもない資料を基に、コメントされても、何らその信憑性について賛同する人がどれだけいるのだろう。

 それこそ、

「ただの風邪だ」

 という、極論と言ってもいい少数派でしかも、根拠のないコメントを信じてしまう、

「今回の一番の戦犯の一つといえる、一部の若年層と変わらないではないか」

 ということになるのではないだろうか。

 今の時代は、どうしても、少しは落ち着いてきたとはいえ、まだまだ市民生活を営んでいくうえで、パンデミックを無視することのできない世の中なので、大多数の人たちは、まだ、マスクを着用し、手洗いうがいを励行するという時代であった。

 そもそも、本来の姿が、それなのかも知れない。

「今までがあまりにも不衛生で、この姿が、これからの人類の本当の姿ではないだろうか?」

 というコメンテイターがいるが、それは間違いではないと思えるのだ。

 もし、今回のパンデミックが終息に近づいたとしても、その裏で、

「次期、パンデミック予備軍」

 と呼ばれる、伝染病が待機しているかも知れない。

 今の蔓延が収まったと同時に、今度はそっちが、台頭してくる。

 つまりは、

「今の世の中において、取りつく島のないほどに、さらには、想像以上に慌ただしく、世の中が動いて行っているということになるのだろう」

 ということである。

 そんな世の中になったことで、どうしても、

「おうち時間」

 というものが増えてきて、人込みを避けるためということで、どんどん変わってくるものもあった。

 まずは、

「道路が込み始めた」

 ということである。

 今までは、都心部の会社に通うのに、

「自家用車よりも、公共交通機関」

 ということであった。

 元々、自家用車で通勤しないのは、

「道がラッシュで混んでしまい、いつ着くか分からないということと、さらには、やっと着いても、駐車場の問題である。ガソリン代と、駐車場の値段とでは、会社から支給される交通費では賄えない」

 などという理由で、

「車を利用するよりも、定時に着く、公共交通機関がいい」

 ということで、少々の満員電車でも、何とか頑張って通勤していた。

 しかし、パンデミックが発生してからは、状況が一変した。

 まずは、

「ソーシャルディスタンス」

 つまりは、まず、

「満員電車など、もってのほか」

 ということになる。

 さらに、通勤するとしても、

「時差出勤」

 ということを国も求めているので、ある意味普段であれば、

「遅刻」

 という事態になったとしても、

「ソーシャルディスタンスのために、自家用車で通勤してきた」

 と言えば、遅刻も許されるということになるのであった。

 そう思えば、今までの満員電車などが、車通勤する人が増えたことで解消されるのはいいことなのかも知れない。

 ただ、一つ大きな問題として、

「地球温暖化」

 という観点からは、大いに後退しているということであり、そのあたりの問題を、政府は、

「分かっていない」

 のか、それとも、

「分かっているは、無視しているのか?」

 のどちらかであろう。

 ただ、どっちであっても、政治家としては致命的であり、そんな政治家の無能を、はたして有権者が分かっているのかどうかが大きな問題となるのではないだろうか?

 もう一つ言えることとして、

「だからと言って、今の政府を交代させたとしても、一体誰がこの窮地を救ってくれるというのか?」

 ということになる、

 下手をすれば、もっとひどいやつが、ソーリになるかも知れない。

 何といっても、

「今のソーリは最悪で、誰に変わっても、これ以上ひどくはならないだろう」

 と思っていたことで、考えてみれば、その期待がどれほど裏切られてきたのだろうか?

 期待というのは、実は願望であり、最初から、

「政治がよくなる」

 などというのは、夢幻に過ぎないということだったのではないだろうか?

「そんな妄想を抱いてしまうから、ちゃんとしたリーダーを選ぶことができず、ああ、またかという落胆を繰り返すことになるのかも知れないな」

 と感じることになるのだろう。

 ここ、数代のソーリというと、

「ただ、長いだけで、疑惑塗れだった」

「自分のわがままを押し通し、国民の命を何とも思っていない、史上最低のオリンピックを演出した」

「自分の人気取りのために、海外に血税をばら撒いて、総裁選の時の公約を一切果たそうともせずに、ただ、自分の保身だけのためにソーリにしがみつく」

 と言った、そんなロクでもない人間がソーリをやっていたのだ。

 そんな政治家が、このパンデミックで、権力も強制力もないのだから、統率力が生まれるわけもない、そんな連中に愛想を尽かしている国民がどれほどいるのか、本当にこの国は終わってしまうといっても過言ではないだろう。


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