第7話

 更に数日が過ぎた。

 咸陽は、今だ落とせない。攻撃は続けているけど、流石に簡単には落ちなかった。民間人も武装して抵抗していそうだ。首都なんて、こんなもんかな?

 そんな時だった。


「うん? 渭水の向こう側に軍が見えるね?」


「劇辛大将軍! 楚軍の旗ですぞ!」


 おお! 武関からの道を攻略してくれたか。南道だね。

 楚軍は船を奪って、川を渡って来てくれた。

 合流できたよ。キン○ダム以上に深く進軍できてんじゃん。(げふん、げふん)


「楚将殿、良く来てくれました」


「……燕将殿は、お速いですな。ここから遅れを挽回させて頂きます」


 律儀な人だな~。

 その日のうちに、楚軍も咸陽に攻めかかった。休んでも文句は言わないんだけどね。


 陽が落ちると、撤退する。

 そんで陽が昇ると、また攻める。

 この時代は、灯りが少ないからね。夜戦は、ほとんどない。

 補給路は、武関から繋がった。

 食料だけでもない。特に矢だ。攻城戦って言ったら矢だよね。まだ、投石機とかは、少ない時代だ。

 もうね、矢の消費を考えずに雨のように撃たせた。


「あの矢の雨には、咸陽側も苦戦していますな」


 楚将さんを見る。この人、歴史に名前がないんだよね。かなり惜しい。ちなみに、汗○さんじゃないよ? あの人は、史実だと遊説家なんだよね。

 楚将さんは、矛を振るって、全軍を指揮しているよ。儂ももうちょっと若ければ、剣を握りたかったな~。諸葛亮みたいに、羽扇うせんで指揮を執っているので、見た目は大丈夫だと思う。爺という点を除けばだけど。


「もうそろそろ、城壁を登れそうですね~。秦軍も被害甚大でしょうし」


「先方は、楚軍に任せて貰いたい!」


 プライドの高い国だな~。

 儂は、咸陽を落とせればなんでもいいんで、危険な役回りは任せよう。兵士を死なせたくない。

 楚軍が、城壁を登り始めた。

 燕軍は、矢で援護だ。

 いいね、いいね。戦争って感じだ。

 ここで、連絡が来た。


「背後から、秦軍が迫っているの?」


 儂は慌てて陣に戻った。



 背の高い指揮車に乗って、遠くを見る。老人に階段は、キッツいな~。


「数万の軍勢が、迫ってんのね……」


 でも、ボロボロなんだけど? あれ、敗残兵?

 もしかして、龐煖さんがやってくれたか?





 咸陽への攻撃は中止して、また防衛戦になった。

 食料を焼かれると、撤退になる。

 武関への道は、渭水を渡る必要があるので、撤退には向いていない。

 ここで、防衛するしかなかった。


「咸陽から撃って出てくれると、楽なんですけどね~。平地戦なら、短期決戦も可能なのにな~」


 咸陽は、援軍が来ても沈黙している。

 挟み撃ちは、しないみたいだ。

 それはそれで、燕・楚軍にとってはありがたい。時間はかかっても被害が抑えられる。

 兵法的にどうかとも思うけど。


 儂たちは、函谷関側の敵に集中する。

 陣を守りつつ、矢で応戦した。

 その日は、秦軍が撤退して終わった。


「函谷関は、どうなっているんですかね? 負けちゃったのかな? そうなると、我々は孤立っすな~」


「……劇辛大将軍殿。早計です。春信君が、函谷関を落としたので、その敗残兵かもしれません。今は、報告を待ちましょう」


 う~ん。電話がないので不便だな~。

 函谷関が落ちていなかったら、儂らは孤立してるので、包囲されて終わりなんだよな~。

 だけど、函谷関が落ちていれば、秦国を滅亡させられるチャンスでもある。


「どっちかな~」

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