第6話

 黄河を渡る。

 渡河途中で攻められると困るけど、秦国は攻めて来なかった。

 函谷関に戦力を集中してるんだな。


 その後、戦争開始だ。

 食料を現地調達して行く。

 小さい城も攻め落として行く。

 捕虜は面倒なので、土地を追われた平民は、咸陽に向かわせた。


「下僕にしないんですか? 他国に売れば、燕国も潤うのに」


「今は咸陽を落とすのが先決ね。それに、秦国を滅亡させれば、お金は入って来るのよ」


 目先の利益に踊らされるのは、失敗の元だ。

 今儂は、本当に背水の陣にいる。補給がないんだし。


「こっから先は、登山ね~。準備できたら出発するよ~」


「「「はっ!」」」


 練兵の効果が、あったみたいだ。

 無茶な作戦だけど、今だ士気は高い。





「ハンニバルの冬のアルプス越えじゃないけど、手の入ってない山道の行軍は、面倒だね」


 未開の土地が、まだまだある時代なんだ。

 でも、想定内でもある。

 燕の土地も山岳地帯が多いんだ。


「行けっかな~。ここで不意打ちを食らうと危ないんだよな~」


 警戒して進む。幸いにも、秦軍はいなかった。

 そして数日後……、咸陽が見えた。無傷で辿りつけちゃったよ。

 儂の進軍経路は、この時代だと誰も思いつかなかったのかね?


「あれが、渭水か……。もう戻れないな~。勝利か全滅かだね」


 儂の言葉に、兵士が引き締まった。



 まず、陣を築く。

 兵士の半分は、略奪を続行させる。

 儂は、函谷関の方向を見た。


「史実だと、函谷関裏のさいって都市を、龐煖さんが攻めるんだけど、落とせないんだよね~」


 でも、今回は三方向から攻めている。

 渭水の向こう側を見る。武関は落とせているんかね……。


 次の日から、咸陽攻略戦だ。

 物資をかき集めて梯子はしごを作る。攻城兵器は、持ってこれなかったのが痛い。

 この時代って、火薬がないから物量作戦しかないんだよな~。


 咸陽も抵抗して来た。

 一進一退の攻防が続く……。


 それと、背後から攻められるかもしれない。

 陣の守りのために、全兵力を向けられないのが痛い。


「後一手欲しいな~」


 春信君も、寝返りを打つ人材とか忍ばせてくれていれば、楽だったんだけどな~。

 あの人、儂より若いけど老いぼれているから、正面から敵軍を蹴散らして華々しく咸陽を落とすとか考えていそうだ。

 だから、失敗する。

 最後は、暗殺されているし。


「でも今回は、キン○ダムみたいに李牧が来ているから、大丈夫かな?」


 函谷関を落としてくれるのであれば、文句はないんだけど。

 そんなことを考えて、数日が過ぎた。



「う~ん。頑強だね~。5万の兵力で攻める大きさじゃないよね……」


「劇辛大将軍! 弱気にならないでください! 秦国側も兵士が順調に減っています!」


 う~ん。潰し合いになっているね。

 こんなのは、転生者としては、下も下だ。下策と言うしかない。

 商人に化けさせて、密偵でも放っておくんだった。

 まあ、今更だ。


「食料は、まだある?」


「一ヶ月は、持ちます」


 手詰まりだけど、攻めるしかないか。

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