第5話

 函谷関に着いた。

 儂が、一番最後っぽい。


「遅れてしまい、申しわけない」


「いやいや、遠いところを良く来てくれました」

「こんな爺が、大将軍かよ? 燕国は終わっているな」

「御高名は、かねがねお聞きしていました。お会いできて光栄です」

「……早く始めようぜ」


 反応が、バラバラだな~。

 これ、軍として纏まるんかね?


「私は、総指令の春信君だ。まず、集まってくれたことに感謝する。斉国は、斉王が病気で離脱と連絡が来た。この五ヵ国連合軍で秦国を討つ!」


 斉国は、やっぱ参加しないんだな~。

 春信君は、戦国四君の最後の一人だね。

 でも、この時点で老いぼれているんだよね。

 作戦が、良くなかった……。


「作戦は、まず目の前の函谷関を陥落させる! 初日から総攻撃だ!」


 儂は知っている。それで落とせなくて、裏側に回ってさいを攻撃するんだ。

 そして、落とせなかったんだよね。

 歴史では、函谷関攻めの後に、斉国に攻め入って解散すんだし、この作戦じゃダメなんだよね。


「あ~。分散して攻めましょうよ。秦国は、戦力を集中させてるのに、そこを攻める意味はないですよ。弱い所を落として行きましょうよ」


「「「えええ!?」」」


 即座に作戦を否定すると、驚きの声が上がった。


「ごほん。燕国は、独自に動くと?」


「それもいいかもしれませんね~。黄河を渡り、一山越えれば、咸陽は近いですし~。北回りで行きますか」


「むむむ。それでは、燕国だけ他を攻める……。それでよろしいかな?」


 それだけじゃ、ダメなんだよね。


「誰か、武関とその奥の嶢関ぎょうかんを攻めてくれませんか? 三方向から攻めましょうよ」


「えええ? なんで、来たばかりなのに、そんなに戦略練ってんの!?」


 儂は、ただの爺じゃないのよ。

 キン○ダム知識も動員して、移動中に考えていただけだけどね。

 その後、軍議を重ねる。

 戦力差は、分からないけど、合従軍の方が多いらしい。

 それと、地理的に楚軍が、武関攻めを請け負ってくれた。一軍出してくれるのだとか。


「春信君殿。作戦を受け入れてくれてありがとうございます。これで勝てそうです」


「ふん! 喜ぶのは、咸陽を落としてからだ!」


 行けっかな~。

 李牧と龐煖さんは、苦笑いだ。



 軍議が終わった。自軍に戻る時だった。


「劇辛殿。挨拶が遅れました」


 声の方向を見る。


「ああ、龐煖さん。こちらこそ遅れて申しわけない」


 爺同士で握手を交わす。


「60年ぶりですね~」


 儂は、本当であればこの人に殺される。でも、戦友でもあったと思う。

 互いに笑った。





 軍議後に、燕軍に戻った。そして、作戦を指示する。


「移動します。少し北上して、筏を作り黄河を渡ります。準備をよろしくね~」


「あの~、劇辛大将軍。補給は、どうするおつもりですか?」


 黄河が邪魔で、補給が続かないと言っているのか。


「現地調達で……。村々を襲いながら進みます。途中の小さい城も落として行きましょう」


「えええ!? 補給なしですか? なんでそんな、古代の戦術をとるんですか!?」


 そうかな~。

 ハンニバルやナポレオンは、成功してんだけどな~。北畠顕家の通った後は、草一本残らなかったらしいよ?

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