第3話

梯子はしごを落とせ~! 登らせるな~! 矢を撃て~!」


 中華の城って、塀で囲まれているんだよね。

 とりあえず、弓矢をバンバン撃って、牽制しているんだけど、それでも梯子をかけられる。

 だけど、撃退はできているな。

 登って来た敵兵は、槍の餌食だ。

 漫画みたいには、いかない。矛を一振りで、10人は吹き飛ばない。


 そのまま、数日が過ぎた。


「うん? 北方に軍が見えるね?」


「劇辛大将軍! 援軍ですぞ!」


 思ったよりも、早かったね。

 ここで、斉軍に動揺が見られた。

 引き始めたんだ。


「方城の状況は、分かる?」


「先ほど、伝令が来ました。防衛に成功しております」


 もう史実と大分違うし、行けるか?



 その後、撤退する斉軍を散々に叩いた。

 城攻めしようとか言い出す将兵もいたけど、今回は防衛戦なんだ。

 しっぺ返しを食らう前に、撤退を言い渡す。


「劇辛大将軍! いくらなんでも慎重すぎやしませんか?」


「だから~。趙国が、この武遂を狙ってるんだって。空の武遂を取られると、大分後退すんだよ? 孤立したいの? 負けたら、殲滅されるか、良くて奴隷だよ? 兵法って言葉知ってる?」


 ――シーン


 ダメだな。燕軍の将兵は、視野が狭い。

 国の末期症状だよね。

 【まず隗より始めよ】をもう一回やらないと、ダメだね。

 人材育成は……、儂の時間がないな。現場実習で覚えて貰おう。





 将兵を残して、儂だけ首都のけいに凱旋することになった。

 まあ、王様に報告だよね。

 馬車の中で考える。


「もう始皇帝って秦王になってる頃だよな……。楚・韓・魏・趙との戦争が、激化している頃だよね。白起がいないのが、幸いかな~」


 歴史を変えるのであれば、秦王を暗殺に行くのが正しい。

 もしくは、秦国を真っ先に叩くのが上策だ。

 だけど、地理的に離れ過ぎている。

 現状だと、儂に動ける選択肢がない。


「このままだと、秦国の統一は変わらないかな~。李信とか王賁が怖いな~。つうか、儂が生きている間に会えるのかね?」



 考えていると、王宮に着いた。

 歩いて、王様の元へ向かう。


「劇辛大将軍! 防衛お見事。だけど、戦っても良かったんじゃない?」


「趙国は、兵士が多いですから……。ここで、燕国の兵士を減らすと、斉国が攻めて来ます。兵士の温存が、最善かと。趙国と斉国を争うように誘導しましょうよ」


 とりあえず、納得して貰った。つうか、儂に兵権あずけてるんだからさ、口出ししないでよ。李牧りぼくは、王様に釘を打ってから出陣したんだよ?

 とんぼ返りで、武遂に向かう。まだ、終わっているとは言い切れない。再度の侵攻の可能異性を考慮した。


「こんなことしている場合じゃないんだけどな~。地方の弱小国だと、大将軍でもできることが少ないな~」





 一年が経過した。

 趙国も斉国も攻めて来ない。

 その間に、儂は練兵を行った。その数、5万人だ。

 燕国全体だと、多分10万人かな?

 食料がそこまでないので、全ての人員を動員するのは無理だけどね。でも、治安維持には使えるだろう。


「そういえば、この後、龐煖ほうけんが出て来て、儂は殺されるんだよな。その時に、2万人が捕虜になるんだっけ?」


 その未来は、避けたいな。

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