第2話

 とりあえず、王様に報告だ。

 四輪車を用意して貰ったけど拒否して、杖をついて歩く。

 まだ、衰えたくはない。自分の足で歩くのだ。


 王様の前で座った。両手を会わせて敬礼する。


「お騒がせしました」


「うむ。それでは、出陣を頼む。軍は整えたから、よろしくね」


 おいおい。老人を労われよ。

 燕国って本当に人材がいないんだな。


 逃げる隙もなく、馬車に乗せられて出発だ。

 どうなってんのかね、この国。





 国境の武遂と方城に向かう。趙国の狙いは、分かっているのかな?


『李牧かな~。史実だと負けんだよな~。どうすっかな~』


 武遂に着くと、2万の兵士が並んでいるよ……。

 その中を、歩いて進んで行く。


「「「劇辛げ・き・しん! 劇辛げ・き・しん! 劇辛げ・き・しん!」」」


 声援が、五月蠅いんだけど……。鼓舞って言うのかな?

 太鼓叩かないでよ……。


「あ~、挨拶は抜きで。防衛態勢に戻ってね~」


「「「はっ!」」」


 うん、いい兵士たちだ。できれば、生きて帰してあげたいね。

 その後、軍議になった。


「……防衛戦にしようか。趙国って兵士が多いのよね」


「えええ? 地の利があるのに打って出ないのですか?」


 相手は、李牧だよ?

 戦国四大名将だよ?

 勝てるわけないじゃん。史実だと、燕国は、ここで失敗したんだな~。



 趙軍が来た。

 遠目に見える場所に陣を構えたけど、攻めては来ないな?

 そのまま、数日が経過する。


 そうすると、趙国から手紙が届いた。木簡かな。


「明日、決戦をしよう? 冗談じゃない」


「燕国は、腰抜けの集まりか! 大陸中にその腑抜けさが伝わるぞ!」


 使者が、罵倒して来るよ。度胸だけは、認めるけどね~。

 死ぬ覚悟で来たのは認めるけど、それは勇気じゃないね。


「劇辛大将軍! 舐められています! 戦いましょう!」


「ダメ。相手にする必要はない。この使者追い返して」


「「「えええ!?」」」


 挑発には、乗らないよ。

 使者には、帰って貰った。でも次も同じ人物だったら、処そうかな~。



 趙軍は、冬になったら撤退した。

 結局は、一戦も交えなかったんだ。

 将兵は、不満なようだ。


「劇辛大将軍……。これでは、天下の笑いモノですぞ!」


 防衛できたことを喜ぼうよ。


「笑われるのは、儂だけだから。それよりもまた来るから、今の内に兵士を故郷に帰してあげてね」


 こうして兵士の半分が、一時帰宅した。

 儂は、武遂に留まる。

 そうすると、斉国が攻めて来た!?


「歴史にないじゃん? どうなってんの?」


「はえ?」


 とりあえず、防衛態勢は整っている。

 兵士が減っているだけだ。


 斉軍は、城攻めを開始して来た。

 多大な被害を出しながら、攻めて来ている。軍の指揮官の差が、ハッキリ分かるな。準備万端な武遂を力攻めするのは、下策だ。


「う~ん。後は、燕王さま次第かな~」


 史実通り、武遂と方城が陥落するのであれば、儂はここまでかな……。

 でも、違う可能性も出て来た。だって、攻めてんの斉国じゃん。


 そう……。歴史を変えられるのであれば、まだ間に合うか?

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