第3話 二人での仕事

翌日、早坂と望月は古谷課長に呼び出された。


早坂は、二人の顔がまともに見れなかった。

まさか自分があそこに居たことはバレていないだろうが、やはり気まずい。



用件は、ある経営者への営業を二人でやってほしいとのことだった。

大口客になりそうだったので、実績のある望月をメインにしつつ、早坂の今後の勉強のためということだ。


課長との面談が終わると、望月が話しかけてきた。



「他の会社もアプローチしてると思うんで、急ぎたいですね。今日、打ち合わせできます?」


「すみません、これから出かけるので、終業後になってしまうんですが……」


「俺はいいですよ。用意はしとくので、30分くらいで済むかと思います」


「ありがとうございます。よろしくお願いします」


早坂はそう言って、オフィスを後にした。



♢♢♢



帰社すると、他の社員はみんな退勤していた。


「すみません、残らせてしまって」


「いえ、大丈夫ですよ。じゃあ早速始めましょうか」



望月の資料はやはり一味違った。

データの提示だけでなく、相手の気持ちを動かす見せ方が上手かった。

顧客が関わる業界の情報や成功事例も、具体的で豊富だ。



「俺は提案は好きなんですけど、最初のアイスブレイクが苦手なんです。そこは早坂さんにお願いしますね」


「は、はい。そうですね。がんばります」



準備はおんぶに抱っこで、本当に自分の出番はアイスブレイクだけになりそうだ。



「早坂さん、腹減ってないですか?」


「ああ、そうですね、いい時間ですし」


「良かったら、今からメシか飲み、どうですか?」


一瞬戸惑ったが、普段なかなかそういう機会も無かったので行くことにした。



「じゃあ適当に通りに出ましょう。契約の前祝いとして」


前祝い……

まだ最初の打ち合わせしかしていないのに。

やっぱりデキる人間の発想は違うなと思った。

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