第3話 2人での仕事

翌日、俺と望月は古谷課長に呼び出された。


2人の顔がまともに見れない。

まさか自分があそこに居たことはバレていないだろうが、やはり気まずい。



用件は、ある経営者への営業を俺たち二人でやってほしいとのことだった。

大口客になりそうだったので、実績のある望月をメインにしつつ、俺の勉強のためということだ。


課長との面談が終わると、望月が話しかけてきた。



「他の会社もアプローチしてると思うんで、急ぎたいですね。今日、打ち合わせできます?」


「すみません、これから出かけるので、終業後になってしまうんですが…。」


「俺はいいですよ。用意はしとくので、30分くらいで済むかと思います。」


「ありがとうございます。よろしくお願いします。」


そう言って、俺はオフィスを後にした。



―― ―― ―― ―― ――


帰社すると、他の社員はみんな退勤していた。


「すみません、残らせてしまって。」


「いえ、大丈夫ですよ。じゃあ早速始めましょうか。」



望月の資料はやはり一味違った。

データの提示だけでなく、相手の気持ちを動かす見せ方が上手かった。

顧客が関わる業界の情報や成功事例も、具体的で豊富だ。



「俺は提案は好きなんですけど、最初のアイスブレイクが苦手なんです。そこは早坂さんにお願いしますね。」


「は、はい。そうですね。がんばります。」



準備はおんぶに抱っこで、本当に自分の出番はアイスブレイクだけになりそうだ。



「早坂さん、腹減ってないですか?」


「ああ、そうですね、いい時間ですし。」


「良かったら、今からメシか飲み、どうですか?」


一瞬戸惑ったが、普段なかなかそういう機会も無かったので行くことにした。



「じゃあ適当に通りに出ましょう。契約の前祝いとして。」


前祝い…

まだ最初の打ち合わせしかしていないのに。

やっぱりデキる人間の発想は違うなと思った。

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