第7話 深夜の踏切
深夜の踏切
その日、私は中々寝付くことができず布団の中で寝返りを繰り返していた。時刻は午前三時が迫ってきていた。
カン、カン、カン、カン
外から甲高い音が聞こえてきた。家の目の前にある踏切が鳴っているようだった。カーテンの隙間から赤い光がチカチカと見えていた。しかし、終電はとっくに終わっているはずだ。
点検があるというような話も聞いた覚えがない。どうせ寝付けないのだからと、私は起き上がりカーテンをめくった。
窓の外ではやはり踏み切りが甲高い警告音を鳴らしながら赤く点滅していた。遮断機も下りているようだった。こんな時間に電車が動いているのだろうか? 私はしばらく踏切の様子を見てみることにした。
カン、カン、カン、カン
鳴り続ける踏切の音に、かすかにゴゴゴォと電車が近づいてくるような音が聞こえてきた。こんな時間に踏み切りが鳴りだした理由がわかると思うと、窓の外の踏切から目を離すことができなかった。
やがて見えてきたのは異様な電車だった。
真っ赤な前照灯が踏切を照らしたかと思うと、車内の照明真っ赤な電車がゴゴゴォと大きな音をたててやって来た。車内には誰も乗っていなかった。運転手や車掌がいたかどうかはわからなかった。
通過するとばかり思っていた赤い電車は踏切を少し過ぎた辺りで停止した。踏切の遮断機はすでに停止していたが、電車の車内照明が付近を赤く染め上げていた。
何が起きているのかよくわからないまま目の前の光景に釘付けになっていると、パッと赤い電車は消えてしまった。
結局その夜私は眠ることができなかった。
この出来事から数週間後のことだった。その日仕事が休みだった私は家でくつろいでいたのだが、突然外から凄まじい轟音が聞こえた。かすかに家が振動するほどの轟音にただ事ではないと思い慌てて外に出ると、目の前の線路で電車がひっくり返っていた。
脱線事故だった。幸い死者はでなかったというが大けがをした人は多く辺りは瞬く間に大騒ぎになった。
後になって脱線事故が起きたのはあの夜、赤い電車が停止した場所と同じだったような気がしてならなかった。
今、私はこの文章を自室で書いている。時刻は午前三時になろうかという頃だった。また、家の前の踏切が鳴り出した。
娯楽としての恐怖 安達ヶ原凌 @adachigahara
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