第4話 長尾景虎の舞台裏
「藤資、よくぞやったな。
これで関東に出る軍費が手に入ったぞ。」
長尾景虎は上機嫌に酒をあおる。
「はっ、越後屋の富は無視出来ぬ物がありましたからな。
景虎様の見事な策にございます。」
共にいる中条藤資は景虎の空になった盃に酒を注ぐ。
「まったくだ、商人如きが我らの戦に協力せぬからこうなるのだ。」
これまで景虎は戦の度に消耗する軍事物資の補充を越後屋に頼んでいたのだが、価格は下げない、納期を早める事も渋る利平に怒りを覚えていた、その為に一芝居うち利平を嵌めて、越後屋の財産を奪いとる事にしたのだった。
「して権蔵と申したな、お主の店で越後屋が用意していた物資は揃うのだな。」
「はい、お任せください、越後屋が抱え込んでいた職人達は確保致しました。」
「して、価格を3割減らせると言っていたが誠であろうな?」
「勿論にございます、利平の奴は職人に報酬を払いすぎていたのです、その上使い物にならない貧しい子供を集めて施しなどをしておりましたから景虎様に高く商品を売り付けていたのでございます。」
「誠に許せぬ奴だな、いっそ首を斬ればよかったか。」
「景虎様、あのような者でも景虎様が理由なく斬れば騒ぎ立てる者がおります。
現に直江殿が明日景虎様に忠言すると言っておるとか。」
長尾家重臣、直江景綱はことの顛末を聞きつけ、即座に景虎に忠告する為に領地から向かってきているとの連絡があったのだ。
「あやつは堅いからな、まあ既に店は無い、文句は言うだろうが国庫が潤ったのだ、それ程厳しく言う事はあるまい。
それより、関東進出について考えたいな、この夏に出兵しょうと思うが叶うか?」
「はっ、各地の将も武功を欲しておりますからな、出兵は叶うかと、権蔵武具兵糧は集まるか?」
「お任せください、すぐにご用意致しましょう。」
「うむ、上杉憲政殿をお救いする為にも必要であるからな、くれぐれも早く用意することだ。」
「はっ!お任せあれ。」
権蔵は深く頭を下げる。
長尾景虎は上杉憲政から関東管領職の後継者として内々に約束されている、既に気分は関東管領についた物となっているぐらいであった。
その為にも関東に勢力を伸ばしている北条氏康を倒す事は必然であり、その軍費の為なら商人の一人や二人犠牲になった所で何とも思わない傲慢さがあったのだった・・・
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