第2話 貸した金も

牢から出た俺は急ぎ店に帰るのだが、そこに合ったのは店だった物であった。

店内は荒され、住居部分も含め全てが破壊されひっくり返された後が残っている・・・


「なんで・・・

ここまでする必要なんてないだろ・・・」

俺は絶望に膝をつく、金庫は持ち去られ床下のヘソクリまで奪われていた、これからいったいどうやって生きていけばいいんだ・・・


俺は一先ず友人であり、同業者でもあった海屋の権蔵の所に向かう。

「権蔵、すまない貸している金を返してくれないか!」

俺は権蔵に貸している金を返して貰い、店を再度立て直そうと考えたのだが・・・

「これは落ち目の利平じゃないか、借りた金?そんな物は無いだろ?」

「えっ?何を言っているんだ!お前が店を傾けた時に多額の金を貸したじゃないか、全部を直ぐにとは言わない、返せるだけでいいんだ。」

「知らねえよ!文句があるならお役所に訴えてみな!」

権蔵はクククッと笑いながら言う。


「おい、何だよその態度はいくら俺でも怒るぞ!」

「お前が景虎様に目をつけられた事なんてとっくにみんな知ってるんだよ!今のお前がどんだけ訴えた所で誰も聞いちゃくれないさ!」

「なっ!そ、そんなはずは・・・」

国主である長尾景虎はこの越後において絶対的な権力者である、その不興を買っている今の俺の訴えを果たしてお役所は聞いてくれるのか・・・・

聞いてくれた所でまた全額奪われるのでは無いか・・・


考えれば考える程自分が破滅している事がわかる。


「まあお前の味方なんてこの越後には誰もいないさ、この文無しが!」

権蔵の言葉が俺の耳に残るのであった・・・


俺は海屋を出たあと、越後屋と契約していた職人達を回るのだが・・・

「利平さん、あんたには世話になったがこうなった以上はねぇ・・・」

「うんだ、悪いんだが俺たちゃ海屋さんと契約させてもらっただ。」

「そうですか・・・」

多くの人が越後屋との契約を止めて海屋に乗り換えた後であった。


「くそっ!俺が何をしたと言うんだ!」

俺は悔しさのあまり近くにあった木を殴る、手から血が出たがそれすら気にせず殴り続けていた。

「賄賂が罪なのか!渡さないと商売にならないんだ!仕方無いだろ!」

俺は激情をぶつける。


「利平さま、止めましょう。

手から血が出てますよ。」

どれだけ殴ったのだろう、気がつけば手が血塗れになっていた。

そして、殴り続ける俺の手を必死にかきついて止めてくれた少女がいた。


「雪か・・・」

彼女は捨てられていた所を俺の親父が拾ってきて、現在鎧職人の下で勉強させていたのだが・・・

「雪、護作の所に帰らなくていいのか?」

「護作さんは海屋と契約しました、越後屋の私が留まる事は出来ません。」

「雪、越後屋はもう・・・無いんだ、護作の所にいれば暮らしに困ることは無いだろう。」

「たとえ暮らしに困っても私がいる場所は利平さんの側です。

それに越後屋は無くなっていません!

利平さんがいればそこが越後屋なんです!」

「雪・・・」

「まずはみんなの所に行きましょう、そこでご飯にしましょうね。」

「みんな?」

「はい、越後屋のみんなです、あんな事が合ったので一時身を隠しているんです。さあ行きましょう。」

俺は雪に手を引かれ、みんながいるという場所へと向かうのであった。

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