第21話:白髪の少年
真理は昼食代わりの昔ながらの素朴なホットケーキを食べ終わると、光星と共に梅田の地下街を訪れたが、リニューアルされたその場所は近代的で小綺麗な空間へと変貌していた。
問題の泉の広場の噴水は姿を消し、変わりにLED照明が輝く、木をモチーフにした綺麗なオブジェが設置されている。
「泉がないのに泉の広場ってのも変な話ね?」
「親しまれた場所やから、名前を変えるわけにもいかんかったのかも知れません。それよりどうです? 何か感じますか?」
「正直、何も感じないかな? 私は霊感が強いのか、いわくつきの場所だと、微妙な空気の変化やラップ音なんかを感じることがあるけれど、今は何も感じないですね。噴水や地下には浮遊霊が集まり易いなんて聞くけれど、この綺麗な場所はそんなものとは無縁に感じますね」
真理はリニューアルされた広場や地下は綺麗で利用もしやすいと思う反面、その土地ならではの場の特徴などが薄れてしまっているように感じた。同時に、このような場所では都市伝説のようなものも生まれにくいだろうなとも感じていた。
「やっぱり、涼香はおかしなってしまったんやろか?」
「医者は、精神の不安定などと診断するかも知れないけれど、私達は彼女を全面的に信じることから調査を始めましょう。いずれ、それぞれのアプローチから接点が見つかり、彼女が元気になってくれる解決法にたどり着けるでしょう」
真理はツリーの全体像を見るために、少しずつ後ろに下がる。
「彼女がたどった道筋を再現したいんだけど、それこそ迷った結果だから無理だよね。あれ? あの子、こっちを見ている?」
真理はツリーの対角線上の遠方にいる白髪の少年が目に入った。その少年は透き通るほど肌が白く、整った顔立ちと青みがかった瞳にツヤのある白髪が目を引いた。そして、彼の視線は確かに真理を捉えているように見えた。
「どないしました?」
「あ、いや、あの子……あれ?」
真理は一瞬、視界を外しただけだったが、すでにその少年の姿は消え、あたりを見渡しても、どこにも姿を確認することはできなかった。
「いや、気のせいかも? それじゃあ、涼香さんの家に案内してもらえますか?」
真理と光星は手がかりの掴めなかった泉の広場を後にした。
そして、その二人の後ろ姿を、人影の中から見つめる青い瞳があった。
「ふふふ、まさか彼女が来ているとはね。情報通り、やはりここには何かがあると言うことになるのかな? でも彼女、僕に気がついていたよね? 気配を殺していたつもりだったんだけどなぁ。勘が鋭いのか、あるいは僕のような力があるのか? あはは、面白くなってきたなぁ。先ずは彼女のお手並み拝見といこうかな?」
白髪の少年は再び、人混みの中へと消えていった。
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