第12話 店長がバカすぎて
『いやいやいやいや、やっぱり、読書紹介系のインスタグラマーやらユーチューバーは増えてきましたけど、やっぱ
コロナ禍以降、今は大学ではどのような授業が行われているのかよくは知らないが、環にとって、文章を書くうえで大学の授業はおおいに役立った。文芸学科の創作コースを選んだものの、環には文章の書き方がまるで身についておらず、むしろ周りにいるゼミの皆の熱意に圧倒されっぱなしであった。四百字詰めの原稿用紙を前にして、何も思いつかず、何も書けない毎日に、自分の創造力の無さを恨んだ。小説を書く時はプロットが必要であると授業で教わったが、そもそもそのプロットすらも書けない環は、ゼミの課題も投げ出していた。『なにも小説ばしゃっちが書かんでも、エッセイや本ん批評とか書きゃあよかやんか』叔父の源太郎は、課題に苦しむ環にそう言った。そもそも環が読書にハマりだしたのは『本を読むのは頭の良い子』という概念を打ち砕き、本の持つ魔力に自らが陶酔したからだ。初めての長編小説は中島らも氏の『ガダラの豚』で、著書を読んだ瞬間に環は雷に打たれたような衝撃を得た。中島らも氏の描く超常的な世界観に、終始魅了され、圧倒された。幼少の頃、コンビニ経営で忙しく両親の夫婦仲も微妙な実家に帰りたくない環は、図書館でギリギリの時間まで読書に勤しんだ。海外やら宇宙やらエベレストの頂点やら行けない場所へ連れて行ってくれたり地球の裏側にいる人や他の惑星に住む未確認生物の話が聞けたり、過去や未来の人たちにも会える。映画さながらの大冒険にも巡り合える魅力にすっかり取り憑かれていた。高校時代も暇さえあれば
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